数時間後。
調査が完了しアリスを迎えに行くブラボール。
医療用ポッドの並ぶ部屋を訪れると、すでに解放されたポッドの前で、部下に解放されているアリスの姿があった。
「はい、これで溶液の排出は終わりました。お疲れ様です」
「あ……うん……ありがと……」
「あ、いや、仕事ですので……」
椅子に座らされ、ぼんやりと要領を得ない様子のアリス。
一見すると、睡眠薬の効果が残っているのかと思われたが……桃色に染まった肌と、とろんとした目つき、そして瞳の奥に揺らめいている欲情の色が、そうではない事を示している。
見れば、彼女に引っ張られたのか、部下の様子もいささかおかしい。頬を染めて多少息を荒げている様子からは、彼女もまた平静ではない様子がうかがえた。
『ごほん』
「! ぶ、ブラボール様、よくぞいらっしゃいました」
ブラボールのわざとらしい咳払いに、はっと佇まいを直す部下。びしっ、と立ち上がって敬礼する彼女。一方、加奈は緩慢な仕草で顔を巡らせてブラボールの姿を捉え、何やら嬉しそうに小さく笑った。
「あ、おじさんだ……」
『ブラボールだ。……どうやら、まだ睡眠ガスの影響が抜けてないようだな。冷たいシャワーでも浴びさせてやれ』
「は、はい、わかりました。しばしお待ちを」
本当は魔族の魔力によるものだが、すっとぼけてそんな事を言いながら、部下にアイコンタクトで指示を出す。
優秀な部下はそれで意図を汲んだのだろう。一度、実験室の隅に下がると、防護服状態で戻ってきた。
それでよい。直接接触をできるだけ避ければ、アリスの魔力に充てられる事もない。
「セイントミラー・アリス、こちらへ」
「うん……」
溶液の後を床に残しながら、シャワー室に連れていかれるアリス。その後ろ姿を見送って、ブラボールはロッカーに向かった。
床を汚す溶液に含まれているのは魔族の魔力のはずだが、今はアリスの魔力が若干量混じっている。下手に放置しておくと、他の魔人族があてられて問題を起こしかねない。
『……掃除しておくか。ほかの魔族には劇物だしな』
汚れた床の掃除をする頭目というのは滑稽だろうが、実際のところシャレにならないので仕方ない。
そして二人が戻ってきたのは、ブラボールが綺麗に床を掃除し、道具を片付けた頃合いの事である。
「おっじさーん、お待たせー」
『お待たせしました、ブラボール様』
戻ってきた二人は、一見すると平然としている。
が、よく見ると不自然なのは言うまでもない。明るくふるまうアリスはなんだか妙にテンションが高く、よく見れば頬が赤くじっとりと汗をかいている。着替えた魔法少女の衣装は、よく乾かしたはずなのに早くも肌に張り付き始めていた
対して、部下のほうは防護服を脱ぐつもりがないようだ。頭部の覗き窓が、内部の湿気で微妙に白く曇っている。
『……ご苦労。下がってよい』
「はっ」
これ以上人前で立たせているのも、それはそれで辛いだろう。ブラボールは彼女を下がらせると、アリスの傍に立った。
『さて、今日の調査はここまでだ。一端部屋に戻るぞ』
「そ、そう? 私はちょっと体を動かしたい気分なんだけど……戦闘訓練とか、その」
『ひたすら寝ていただけのお前と違って、こちらはその間も仕事をしていたんだ。悪いが、お前の要望は聞かない。いいから、戻るぞ』
もちろん、これは建前だ。実際は、魔族の魔力に漬け込まれて発情状態になっているアリスに、さらなる追い打ちをするのが目的だ。
運動なんかして健全に欲情を発散されては目論見が台無しである。
有無を言わせず、ブラボールはアリスの手を引っ張って部屋から連れ出した。
◆◆
そして、その帰り道。
『…………』
「ん……う、ぅ……はあ……」
ブラボールはアリスを自分の横を歩かせながら、そのお尻に手を伸ばし、こねるようにいやらしく撫でまわしていた。
スカートの上から、太い鉄の指で丹念に、餅をもむように、しっかりと質量を捉えて指を動かす。胸と違って、尻肉には痛みを感じるような芯がないので、よほど無理をしなければ問題はない。
彼からすれば、部屋にたどり着くまでの間に彼女の熱が下がってしまわないための余熱的な行為に過ぎなかったが、当のアリスからすればそれどころではないようだ。
顔を伏せて、はあ、はあ、と熱い息をこぼしながら、されるがままのアリス。拒絶する様子はなく、ブラボールの傍から離れる様子はない。
消極的な受け入れの体勢……どうやら、過去二回、刻まれた快楽は、彼女の中で深く大きく刻まれているようだ。
マスクの下でにやりと笑いつつ、ブラボールは無言のまま、しれっとした態度を装いながら、彼女の尻を揉みしだき続ける。
「……の、おじさ……ん。その、お尻……」
『どうした? お尻がどうした』
「どうした……って、その。さっきから……ずっと……」
そろそろ耐えがたくなってきたのか、ついに苦言を呈し始めるアリス。もっともそれが、不愉快で不快で耐えがたい……といった意味合いのものではないのは、伏せた前髪の下から上目遣いに見つめてくる、熱を帯びた視線がありありと示している。
『さっきから、何かな?』
「……っ、だ、だって……ずっと……お、しり……」
『ふむ。お尻が、どうした?』
しらばっくれながら、一度力を緩め、さするように輪郭を確かめるように指を這わせる。
アリスはぴくっと肩を跳ねさせ、再び熱い息を吐いた。
「う、うぅ……いぢわる……」
『当たり前だろう、私はお前の敵だぞ? 恨むなら、敵の手に落ちた自分自身の浅慮を恨むんだな』
「それは……そうだけどぉ……。っていうか、お尻揉むの、そんなに楽しい……?」
うってかわって、じとりとした半目を向けられて、ブラボールは視線を逸らしながら答えた。
『ああ、楽しい』
「あ、やっぱり、認めた! 私のおしりで遊んでるじゃ……んぅ……」
『くくく、そうだな。お前は面白い玩具だ』
声を上げるアリスを、再び指に力を入れる事で黙らせる。再び尻をこねまわした指先に、アリスは面白いほど素直に反応して、舌をもつれさせて黙りこくった。
とはいえ、ブラボールも大分限界だ。
発情した魔法少女の誘惑は、想像をはるかに超えていた。
知らず気崩された襟元から除く、ほんのり桃色に色づいた鎖骨。しっとりと汗に塗れたその肌からは、魔族に対する媚薬成分が揮発してきているようだ。
きっと汗は途方もなく甘く、涙は染みわたるほど美味いのだろう。その肉の味は、きっと、耐え難いほどの美味に違いない。
いかんな、とブラボールは冷静に判断し、小さく息を吐いた。
今からこの有様では、目的を果たせるはずもない。冷静さ、落ち着きこそが肝要だ。
あくまでアリスをこちらに靡かせるのが目的であって、個人的な性欲を満たす事が目的ではない。
『(それにしても人払いしておいて正解だったな……)』
そんなこんなで、やがてブラボールの研究室に戻ってくる。
アリスを招き入れ、扉を閉ざして開かないように施錠するなり、彼は金属触手を彼女の腰に巻き付けるようにして、背後から抱き寄せた。
「あ……おじさん……。する、の……?」
『ああ。言っておくがお前に拒絶する権利はない』
「……そう……だね……」
アリスはこちらに背を向けたまま、大人しく黙り込んだ。そのうなじが、じっとりと汗で濡れているのがこの位置関係からだとよく見える。
ブラボールは見せつけるようにことさらゆっくりと手を伸ばし、背後から抱きかかえるように彼女の胸へと手を伸ばした。
そして、柔らかく蕩けたその乳房を、下から持ち上げるように優しく揉む。
「は……あ……っ! はっ、はっ……あっ、ぁあっ!」
ただそれだけで、アリスは切なげな嬌声を上げる。身を預けるようにして背後のブラボールに寄りかかる一方、抵抗するようにその両手が彼の手を上から押さえるが、その指には力が入っていない。形だけの抵抗を嘲笑いつつ、ブラボールことさらゆっくりと、輪郭をなぞる様に彼女の乳房を撫でまわし、不意にぎゅっと軽く握りしめた。
「……っぁあ、あ……っ! うぅ……あっ、はっ、はぁ……ん」
『随分とよさそうな声を上げるな』
「そんな……の、んぅ……だ、だって……おじさんの指、はじめ、て……ぇ、んぅ、あ……っ」
そういえばこれまでは触手で嬲るばかりで、指で触れたのは初めてだったか? とブラボールはこれまでを振り返った。華奢な彼女の体に対して、ブラボールの指は太く大きい。例え頑丈な魔法少女の体であっても、聊か気後れしていたのは事実だ。
『……ふむ。痛くは……なささそうだな。くくく。自分がどんな顔でどんな声を上げてるか、理解しているか? とても無理やりされているようには見えんぞ』
「ん……うっ、何、を……。そっちだって、背後から、じゃ……はぁ、んぅ……こっちの顔、見えてない、でしょ……あっ。憶測、で、んあっ、はあっ、はあっ、物、言わない方が、良い……よっ」
『なんだ、気が付いてないのか。前を見ろ』
そういって、ブラボールは右手をアリスの細い顎にあてがい、くっ、と顔を上げさせた。俯いていた視線が前を向く……そこには、黒光りする鎧の男に背後から抱き留められる、金髪碧眼の魔法少女の姿が、銀色の金属板にありありと写されていた。
「…………え」
『鏡の一枚や二枚、あるに決まっているだろう。くくく、お前の蕩けた顔が、よく見えるぞ』
研究室の壁にかけられた大きな姿見……勿論特注品だ。アリスが寝ている間に、ブラボールが手掛けた特大の姿見。それは魔法少女の足の先から、うさ耳カチューシャの先端まで、その全身を克明に写している。
「…………っ!!! や、やだっ」
アリスの顔が、興奮と酩酊に酔ったそれとは別種の赤に鮮やかに染まる。瞳に明らかな恐怖と困惑を浮かべてブラボールの腕を振り払おうとするが……残念ながら今更手遅れだ。
彼女の身体強化はそんなに強くはない。背後から完全に抱きかかえられている状態から、ブラボールを振りほどくのは不可能だ。何より本人は必至なつもりだろうが、魔族の魔力に惚けた細腕に込められた力は全然弱い。
立ち昇る、魔法少女の甘く瑞々しい魔力をじっくりと味わいながら、ブラボールは彼女の抵抗の上から左手で胸を揉みしだいた。
「や、おじさ……あっ、はあ……っ! これ、はずか……しいっ、やめ……てぇっ」
『何を今さら。その恥ずかしい事に、蕩けた顔をしていたのはどこの誰だったかな』
「い、言わない、でぇ……、んぅ……あっ、はぁ……」
ぺたん、とうさ耳を伏せて、見ていられないと顔を逸らすアリス。元気印の小生意気な魔法少女が、すっかりやり込められて日向の草のように萎れている様子は、ブラボールを愉快な気持ちにさせる。
だが、本番はここからだ。
右腕を、下へ。スカートの下、内股気味に閉じられた彼女の足の間、秘められた秘所へと伸ばす。
アリスがはっと顔を上げるが、もう遅い。
指先は確かに彼女のショーツを捕らえ……くちゅり、指先で粘液質の音が鳴った。