「第2の少女来なさい。君に会いたいという方がいる」
「……分かったわ」
冬月副指令に呼ばれて、式波・アスカ・ラングレーはその背に続いて歩く。
「失礼します」
普段はパイロットが入らないようなVIPルーム。
その扉をノックする。
「どうぞ」
聞こえてきたのは男の声。
その声でもうすでにろくでもない相手だろうとアスカは予想を立てた。
「翌谷様、連れてまいりました。式波・アスカ・ラングレー大尉です」
「こちらソドモリー社会長の翌谷・キョウジ・ソドモリー氏だ。ネルフへの資金提供をされている」
その予想は当たっていた。
少女をつま先からじっくりと舐めるように見る醜いアラフィフ。
「よろしく。式波・アスカ・ラングレー大尉?」
差し出された手をじっと見つめるが、手は出さない。
「……」
副指令が見とがめ、口を開こうとする前に翌谷が口を開く。
「いやいい。代わりがいるからその子と握手しておくれ」
そうして現れたのは……2人のアスカだった。
「あたし……まさかっ!シキナミタイプ?」
「そうよ。あたしは翌谷・イロハ・ラングレー。元No168」
鏡写しでそっくりな少女だ。
「あたしは元No.27、翌谷・ジーナ・ラングレーよ」
こちらも鏡写し。だが一点、胸のサイズが二回りは大きい。
「よろしくアスカ」
「よろしくいっちばん優秀なあたし」
「う、嘘よ。だって廃棄処分だって……」
「まさか!こんな可愛い子たちを廃棄?そんなもったいない事させないさ」
「キョウジ様には感謝しかないわ♡」
「そ~そぉ。こんなに幸せにしてもらって♡」
左右から抱き着き頭を預ける。
「不愉快。あたしに何の関係があるの?…帰るわ!」
自分と同じ姿をした存在が醜い中年に媚びを売っているさまにアスカは怒りと不快感が込み上げていた。
「君が乗ってる2号機。開発費も修理費も結構支援させてもらっててね」
その言葉にアスカは動けなくなった。
「あたしを廃棄処分から救ってくれるために……キョウジ様はぁ」
「そぉよ!開発費を山のように援助したのよ」
「……その男に売られただけじゃないの」
「廃棄予定のあたしに値段をつけてくれたのよ」
「あたしの価値を認めてくれたのよ?」
「あー冬月副指令。もう外して大丈夫だ」
「では私はこれで……」
「あーそう。プラグスーツだったかね?私も欲しいのだが」
「特注品でして、その……」
「言い値で買おう」
「……。手配しておきます」
「結構。で、大尉。第7使徒の殲滅を完了したと聞いた。いや、素晴らしい活躍だったと」
「……まぁね」
「そう警戒しなくてもいい。私は別に君を手に入れるためここまで来たわけではない」
「……」
「いやね?彼女たちと使徒戦を鑑賞したくてね」
「ふぅん。ならいいけど」
「あと、彼女たちがね……君と話したいんだと」
「そぉよ!聞きたいのよアスカ」
「……何?」
「使徒を倒して称賛された?やっぱりみんな褒めてくれるの?」
「……は?」
「それあたしも気になるなァ」
「そんなの……」
「うん?」
「そんなの必要ないわ!……誰かに褒められる?自分だけが自分を褒めてあげれればそれでいい。他人を必要としてるからアナタたちは一番になれなかったのよ?」
「ふ~んこうなるんだぁ…」
「かっわいそぉ」
「キョウジ様はいっぱい褒めてくれるわよ?」
「そうそう。……もう余すとこなく褒めて可愛がってくれるわ」
「「ね~」」
「そんな男に褒められて嬉しいとは……情けないわね」
「自分を一人で慰めてる子に言われたくないわ」
「そんなに張りつめてケンカ腰でさァ?」
「……負けると闘争心までなくなるの?」
「ピリピリしちゃってェ……お肌荒れてるわよ?」
「髪の状態も……やっぱりパイロットってストレス凄そうね」
「肌?髪?そんなことにかまけてたからアンタたちは負けたの」
「違うわ。負けてキョウジ様に拾われたから十全にケアできるようになったの」
「おっぱいも……栄養不足なんじゃないのォ?」
「それはジーナが急成長しただけで、アスカはあたしと同じくらいよ!」
「アンタたち贅肉に価値を見出してるわけ?」
「キョウジ様が喜んでくれるから……」
「イロハのおっぱいも綺麗で好きだから安心しなさい」
男が後ろから片手で抱き寄せて胸をもむ。
だがそれは単に欲望の解消ではなかった。
もう反対の手で頬を撫ぜて顔を固定し、自身の頬を摺り寄せる。
それは確かな愛情と承認だった。
「……っ」
その光景はアスカが選べなかった願望に見えた。
事実は違う。
負けたら廃棄だと思っていた彼女にそんな選択肢はなかった。
たまたま二人が運よくこんな道に進んだだけだ。
「キョウジ様、あたしもぉ♡…」
「おいで」
胸の手を頬に移動し撫ぜながら、もう反対の腕を開く。
収まった少女の頭を胸板で抱き留めながら頭を撫でる。
「~♪」
「呼んでおいて済まない。二人とも甘え盛りでね」
「キョウジ様ァ……あたしのこと好き?」
「うん。大好きだよ」
「キョウジ様。あたしのことは?大事?」
「大事だ」
「いいでしょ……あたし?」
「キョウジ様はァ…優しくてェ…あたしの為に幾らでも使ってくれてェ…」
「こうやっていっぱい可愛がってくれて……」
「褒めてくれてェ……」
「認めてくれて……」
「幸せにしてくれて……」
「「愛してくれるのよ」」
「だからねあたし」
「頑張って!」
「そうそう。あたしたちの幸せの為に使徒と戦って!」
「アスカは特別だから」
「そうよ!式波を引き継げた一番優秀なあたしだから」
「あたしの代わりに頑張って!」
「……さい」
「んん?」
「うるさいっ!あたしはあたしの為にエヴァに乗るの!アンタたちみたいな敗北者にとやかく言われる筋合いはないの!」
「そんな気持ち悪い男にベタベタして本当に不愉快っ!二度とあたしの前に現れないでちょうだい!」
「あたしにはもうエヴァしかないの!お気楽なアンタたちとは違うのよっ!」
言うだけ言うと乱雑に扉を開けてアスカは出て行った。
「あーあ。可哀そう」
「ねェ…。一番になっても全然あたしは幸せそうじゃなかったね」
「それに比べて……」
「「あたしってなんて幸せ…♡」」
翌谷・キョウジ・ソドモリー:
・セカンドインパクト前に転移
・セカンドインパクト前後でうまく儲けて大企業と呼べるまで急成長
・ユーロに拠点を移して空軍やユーロネルフに接触
・廃棄シキナミタイプを対価に資金提供を強化する
イロハとジーナ:
・シキナミタイプなので負けず嫌い
・第8使徒戦を鑑賞しながら3Pした