※この作品はR-18です。

タイラズマ+1(元カノ→妹) ~3人の愛と欲~ 分割版   作:eronosuke

16 / 25
第5話 観察者

東の世界を滅ぼすような激情、ミサキの世界を包み込む慈愛。どちらも平から見て、怖いほどの感情の高ぶりを感じる。そのエネルギーが部屋全体を満たしていて、時折圧迫感さえ覚えるほどだ。

 

(ミサキを見て思う)

 

かつての恋人。彼女の言葉に傷つき、自己嫌悪に溺れた日々があった。世界が灰色に見えるほどの絶望。だが今はどうだろう? 彼女は眩しい光の中に立っている。かつて自分が苦しめた少女が、今は自分よりも輝いて見える。その笑顔一つで場が和む不思議な力を持つようになった。

 

(人は変わる)

 

自分も変わった。陰鬱だった中学時代の自分と比べれば別人だ。人は変化できる生き物なのだ。この事実は過去の自分への救いでもある。

 

(今のミサキは……)

 

目を細めてキッチンで料理するミサキを見る。動き一つ一つが軽やかで楽しそうだ。全身から「アタシ幸せだよ?」という無言のメッセージが伝わってくる。もう彼女なしの生活は想像すらできない。

 

(対して、東は)

 

隣に座る東に視線を移す。彼女はどこか儚げだ。触れるとガラスのように砕け散ってしまいそうな脆さがある。時折見せる沈んだ表情も気になる。表面的には完璧に装っていても、深い闇を抱えているのが分かる。

 

(東は結局のところ……)

 

自分の全てを受け入れられない人間なんだろう。昔の自分を見ているようで不思議な既視感がある。完璧ではない自分を許せず、周囲の評価ばかり気にしてしまう。ミサキがどんなに現在の東を肯定しても、根本的な問題は解決しない。

 

(はぁ……)

 

思わずため息が漏れる。こんなにも複雑で難儀な人間だったのかと、改めて過去の自分を恥ずかしく思う。あの頃は自分の欠点ばかり数えて生きていた。

 

(懐かしい感覚だ)

 

ぐるぐると回る思考。出口の見えない迷宮。これに囚われていた当時の自分が甦る。こんな風に自分を責め続け、誰にも心を開けずにいた。

 

(何か話をしているな)

 

楽しそうに談笑する二人。無邪気に微笑むミサキと、僅かに微笑む東。あの輪に入る決意を固める。

 

(まずは東と話そう)

 

簡単ではない。けれど必要だ。ミサキと相談してからの方がいいかもしれない。彼女の助けが必要になるかもしれないから。

 

(会話から始めなければ)

 

これまで人と正面から向き合うことを避けてきた。逃げて、隠れて、ごまかしてきた。でも今回は違う。自分の意思で、彼女たちと向き合いたいと思う。

 

(東、大丈夫だ)

 

心の中で語りかける。君の過去も、弱さも、全てを受け止める準備はできている。今はまだ勇気が足りないかもしれない。それでも歩み始めなければならない。

 

ゆっくりと立ち上がり、二人の方へ歩み寄る。かつての自分ができなかった選択肢を選ぶために—。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。