タイラズマ+1(元カノ→妹) ~3人の愛と欲~ 分割版 作:eronosuke
東の世界を滅ぼすような激情、ミサキの世界を包み込む慈愛。どちらも平から見て、怖いほどの感情の高ぶりを感じる。そのエネルギーが部屋全体を満たしていて、時折圧迫感さえ覚えるほどだ。
(ミサキを見て思う)
かつての恋人。彼女の言葉に傷つき、自己嫌悪に溺れた日々があった。世界が灰色に見えるほどの絶望。だが今はどうだろう? 彼女は眩しい光の中に立っている。かつて自分が苦しめた少女が、今は自分よりも輝いて見える。その笑顔一つで場が和む不思議な力を持つようになった。
(人は変わる)
自分も変わった。陰鬱だった中学時代の自分と比べれば別人だ。人は変化できる生き物なのだ。この事実は過去の自分への救いでもある。
(今のミサキは……)
目を細めてキッチンで料理するミサキを見る。動き一つ一つが軽やかで楽しそうだ。全身から「アタシ幸せだよ?」という無言のメッセージが伝わってくる。もう彼女なしの生活は想像すらできない。
(対して、東は)
隣に座る東に視線を移す。彼女はどこか儚げだ。触れるとガラスのように砕け散ってしまいそうな脆さがある。時折見せる沈んだ表情も気になる。表面的には完璧に装っていても、深い闇を抱えているのが分かる。
(東は結局のところ……)
自分の全てを受け入れられない人間なんだろう。昔の自分を見ているようで不思議な既視感がある。完璧ではない自分を許せず、周囲の評価ばかり気にしてしまう。ミサキがどんなに現在の東を肯定しても、根本的な問題は解決しない。
(はぁ……)
思わずため息が漏れる。こんなにも複雑で難儀な人間だったのかと、改めて過去の自分を恥ずかしく思う。あの頃は自分の欠点ばかり数えて生きていた。
(懐かしい感覚だ)
ぐるぐると回る思考。出口の見えない迷宮。これに囚われていた当時の自分が甦る。こんな風に自分を責め続け、誰にも心を開けずにいた。
(何か話をしているな)
楽しそうに談笑する二人。無邪気に微笑むミサキと、僅かに微笑む東。あの輪に入る決意を固める。
(まずは東と話そう)
簡単ではない。けれど必要だ。ミサキと相談してからの方がいいかもしれない。彼女の助けが必要になるかもしれないから。
(会話から始めなければ)
これまで人と正面から向き合うことを避けてきた。逃げて、隠れて、ごまかしてきた。でも今回は違う。自分の意思で、彼女たちと向き合いたいと思う。
(東、大丈夫だ)
心の中で語りかける。君の過去も、弱さも、全てを受け止める準備はできている。今はまだ勇気が足りないかもしれない。それでも歩み始めなければならない。
ゆっくりと立ち上がり、二人の方へ歩み寄る。かつての自分ができなかった選択肢を選ぶために—。