裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
グヴェースの表情は変わらない。瞬きの回数も、動揺からくる体の揺れも、何もない。嘘は付いていないように感じられた。
「それは、どういう……」
「言葉のままだ。我はそのような依頼はしていない」
「──で、でも!」
慌てた様子でセリナが反応するが、一気に視線を向けられて頭を下げる。なので代わりに、彼女が口にしようとした言葉をエレノアは伝える。
「ですが、現にフェリスティナ王国の名でクエストは依頼されております。それに、王国直属のギルドも参加しておりました」
「そ、そうです! フェリスティナ騎士団の、エグヴェインさんが指揮を取ってました!」
サナが口をはさむと、周囲にいた騎士の数名が微かに反応する。そして、グヴェースの表情も初めて、驚くように目を見開いたように見えた。
「……エグヴェイン、と」
その瞬間。エレノアの隣に近付いてきたシルバが小さく伝えた。
「……これは、ちっとおかしい。ここは出直した方がいい」
彼の表情は真剣で、エレノア自身もおかしいことには気付いた。
「……グヴェース国王様。申し訳ありません、日を改めて再度こちらへお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「うむ、我々も少し予定がある。王国として公言する件は後日にしてもらおう」
「こちらから伺ったのに、申し訳ありません」
グヴェースが頷いたのを見て、この場から立ち去ろうとした。だが、グヴェースはシルバを呼び止め、
「──シルバ殿も、また後日こちらにきてもらいたい」
そう告げられた。その言葉にシルバは「あいよ」とだけ答えて立ち去る。
どうしてシルバを名指しで、それに、なぜ国王が一介の冒険者に「シルバ殿」と呼ばれたのか、それはわからない。だが今はそれどころではない。
エレノアたちは重い表情のまま王城を出て行く。
城下町の空は夕焼け空へ変わっていて、今から馬車を走らせたとしても、道半ばで辺りは暗闇に変わるだろう。
「今日はこちらで泊まりましょうか」
夜になってから魔物に襲われるのは避けたい。そう思いエレノアが伝えると各々が頷く。
それから城下街にある宿屋へ移動するなり、エレノアたちは一つの部屋で重い表情を浮かべていた。
エレノアとセリナは椅子に腰かけ。サナとルナはベットの上に座り。シルバとリノは壁に背中を付ける。それぞれの表情は考えごとをするように重く、空気も次第と同じように沈んでいく。そんな中、シルバは口を開いた。
「……あの反応、もしかしたら本当に何も知らなかいのかもな」
いつもの彼らしくない真剣な表情は、事態の異常さを物語っているようだった。
「つかよ、そもそもそのクエストってのは本当にあったのか?」
リノがシルバへ疑いの眼差しを向けると、サナは立ち上がる。
「ありました! それに、エグヴェインさんたちは、魔物に……」
サナはそこまで言って口を閉じる。フェリスティナ王国直属のギルドのリーダーである彼の最後を知ってるから、それが真実だと主張したのだろう。けれど、その場にも、クエスト自体にも関わっていないリノは納得できていなかった。
「あんたらの言ってることを疑ってるわけじゃねぇさ。ただ、クエストを依頼したはずの王様が、そのクエストを知らない感じだったろ? それがおかしいって話だ」
「だな。まあ、十中八九、あれは本当に知らない感じだった。んで、俺っちたちが帰ってすぐに、その情報を探らせるように騎士たちに指示を出すってとこだな」
「……王国の名前を語ってクエストを依頼させた者がいる、という可能性はあるのでしょうか?」
考えられる理由を、エレノアは二人に聞く。だが二人は難しい表情を浮かべた。
「赤の他人が、ってのは無理だろうさ。それも王国の名を語ってなんて、不可能に近い話だ」
「それにはアタシも同感だ。そもそも、どうしたらクエストを依頼できるのかは知ってるだろ?」
「依頼者の身分を証明するモノを持っているか、その者が直接に依頼すること、でしたよね?」
セリナの答えに、リノは頷いた。
「ああ、そうだ。だが国王の依頼の場合、絶対に国王自らがクエスト受注所で依頼しないといけねぇってわけじゃない。なにせ国王様は忙しいからな、足を運ぶ時間すら惜しいだろ。んで、そんな国王様が依頼すんのに必要なのは、国王が記入したっていう署名の証と、代理人の身分を証明するモノだ」
「ちなみに、その代理人ってのも誰でもいいわけじゃねぇ。国王が自分の代わりにクエスト依頼をしていいと認めた……おそらくは数名の側近だけだろうさ」
「では、グヴェース様の認めた方が、依頼をした可能性があると?」
「でも」
エレノアの質問に、ルナは不思議そうに首を傾げた。
「それなら、国王様は依頼できる人を知ってることに、なりますよね……?」
「おそらくな。まっ、それは俺っちたちが知ったことじゃねぇけどな」
シルバは両手を上げて伸びをすると、部屋の出口へと向かった。
「今は、フェリスティナ王国が嬢ちゃんたちが暮らす無名の王国を狙っているわけじゃないってわかったことを、素直に喜ぼうぜ。んじゃ、明日の朝にでもまた足を運んでみるとして、俺っちたちはこの辺で」
おやすみ、とシルバが部屋へ出て行くと、それを追うようにしてリノも部屋を出て行く。四人になった部屋で、各々がベットの上に集まる。
「エレノア、嫌な予感がするのって私だけ……?」
「いいえ、わたくしもそう感じます」
セリナの言葉に、エレノアも同意する。そして、サナやルナも同じだった。
「エグヴェインさんたちは、確かにあそこにいたよ。本気でクエストを達成しようとしてた……それに、あたしたちの目の前で……。それなのにどうして……」
「サナ……。エレノアさん、これからどう、しますか?」
「そうですね」
少し考えたが、良い考えは生まれない。
「明日もう一度、国王様にお会いしましょう。わたくしたちが今できるのは、それしかありません」
そう伝えて、エレノアたちは明日に備えることを決め、宿屋で明日を待つのだった。