裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「──そんなことが、あったのか」
フィーから自分がシュピュリール大陸へ向かってから、フェゼーリスト大陸に残ったエレノアたちがどういう状況にいて、どんな行動を取ったのかの説明を受けて、エギルは微かにため息を漏らした。
ため息が出たのは、決してエレノアたちが勝手な行動をしたからではない。むしろ、自分たちで考え行動してくれたのは嬉しかった。
彼女たちが自分で考え、自分のために良くしようと考えてくれたのだ、嬉しく思わないはずがない。
──ただ、こうなってしまった状況に、少しだけ悲しくなってしまったのだ。
「……教えてくれたら良かったのにな」
「……ごめん」
「いや、フィーを責めてるんじゃないんだ」
ただ単純に、信頼して話してくれたら良かったのにという意味だ。
話さなかったのには理由があるかもしれない。もしかしたら、帰ってきたときに報告してエギルに喜んでほしかったのかもしれない。それはエギルにはわからず、残った四人にしかわからないことだ。
「たぶん、エギルに内緒にしてたのは、自分たちの手でエギルを楽させてあげたかったんだと思う」
「かもな。エレノアたちなら、そう思ったんだろう」
エギルは笑顔で答えると、フィーは首を傾げた。
「エギル、怒ってる……?」
「いいや、怒ってないさ。俺は四人がしたことに怒るつもりはないからな」
「そっか」
「四人と連絡が取れなくなってから、状況を把握できるか?」
「うん。姿は確認できる。呼びかけても、返事はないけど」
「そうか。頑張ってくれてるんだな。四人は」
フィーにはエレノアたちの姿は見えるけど、エギルには見えない。だが、フィーが取り乱していないとこを見ると、おそらく最悪の事態にはなっていないのだろう。
すぐにそこから離るよう伝えろ、エギルが言っても聞いてくれないだろう。
それに、そんなことは言えない。状況が最悪になったとしても、彼女たちは諦めない。狙われてる場所が、エギルと彼女たちの家なのだから。
「帰ったら褒めてやらないとな。どんな言葉よりも、きっと四人が望んでる言葉はそれだろうから」
きっと大丈夫。楽天的な考えだとしても、ここで慌てても仕方ない。四人が頑張っているのなら、エギルができるのは急いで帰るべき家に戻ることだろう。
「フィー、急いで帰ろう」
「うん。早く帰って、またみんなでパーティーしたい」
「ああ、そうだな。今度は華耶とシロエとクロエも一緒にな」
「うん。……あっ、今なら大丈夫だと思う。エギル、エレノアたちに伝えることある?」
フィーはエリザベスを抱えて、エギルへと向ける。
赤い瞳がジッとエギルを見つめ、エレノアたちが何か言葉を待っているような、そんな気がした。だからエギルは、笑顔で四人が待っているであろう言葉を伝えた。
「……必ず帰る。約束したからな。だから四人も頑張ってくれ。俺に大切な存在を失わせないでくれ」
そう伝えると、少ししてからエレノアからの返事が届いた。
『……はい。必ずお二人が帰ってくる家を守ります。帰ってきたら抱きしめていただいてもよろしいですか?』
「ああ、もちろんだ。何度でもな」
『ありがとうございます。絶対にこちらは守ります。だから、エギル様も帰路はお気をつけて』
エレノアの声色には微かに笑顔が戻ったように感じられた。
『エギルさん! 私たちが絶対に帰ってこれるように、お家は守りますから!』
「期待してるぞ、セリナ。だけど無茶はしないでくれ。……帰ったら、プレゼントを渡すから」
『プレゼント……? 中身はなん……いえ、帰ってから貰います。それの方が貰ったときに嬉しいですからね!』
シロエとクロエをセリナに会わせたい。そして、再会できた二人の妹と会ったセリナの表情を見たい。エギルはそう思い、「死ぬな」という言葉ではなく、「また抱きしめたい」と伝える。
『はい、私も抱きしめられたいです。エギルさんの温もり、早くほしいですから』
そう答えた。
『エギルさん、あたしも頑張るから! だから……帰ったら……頭を撫でて?』
「ああ、何度でもしてやる。サナが望むことならな」
『ほんと? 良かった……約束だからね。あたし、頑張るから!』
サナは嬉しそうに声を弾ませる。顔が見えず声だけなのに、彼女が笑顔なのがはっきりと見えるようだった。
『エギルさん……私も、その……』
「ルナ。帰ったら、また二人で星を眺めながら話そうか」
『は、はい! もっと一杯、エギルさんと、お話がしたいです!』
「ああ、俺もだ。だから待っていてくれ」
星を眺めながら二人で話したとき、ルナは楽しそうだった。いつもサナの後ろに隠れるようにしていた彼女は、自分の好きなことには流暢に語り、笑顔を出してくれる。それがエギルとルナが二人でいるときの幸せな光景だろう。
そして、四人に伝えると、最後にもう一度、エギルはエレノアを呼んだ。
「帰るまでエレノアが三人と、無名の王国の指揮を取ってくれ。できるな?」
『はい、お任せください』
「ああ、任せる」
『ですが、エギル様。もうここは無名の王国ではありません。ここはエギル様が作った王国──ヴォルツ王国と名付けました』
「……そうか」
気恥ずかしさがあったが、彼女たちが付けた名前なら文句はない。
「じゃあ、俺たちが幸せな明日を歩める王国、ヴォルツ王国を頼んだぞ」
そう伝えると、四人は大きな声で返事をした。その声には先程までの涙ぐむ様子は感じられず、希望の道が見えてるような強い意志を感じられた。
「よし、フィー帰るぞ。俺たちの家へ」
「うん!」
歩き出したエギルの横をフィーが歩く。星に照らされた彼女の表情は明るい笑顔だった。
そして、エギルたちは湖の都にある御澱へと戻ってきた。移住することを決めた者たちは、まだ飲んでる者や、移住の準備を始めていた者がいる。
二人は急いで華耶のいる部屋へと向かうと、そこには華耶の他にシロエとクロエ、それともう一人の少女がいた。
「……レヴィア」
「夜の散歩は気持ちよかったかの、エギル?」
相変わらずの陽気な笑みだが、周りに湖の都の者たちがいるからか、少し居辛そうにはしていた。
「どうしてここにいるんだ?」
「なに、少しお主と話がしたかったのじゃ」
「俺と?」
「エギルさん」
座っていた華耶は立ち上がると、エギルに耳打ちする。
「……彼女、敵意はないって言ってたからここへ向かい入れたわ。側近の者たちやシロエとクロエもいるから、大丈夫だと思ったけど、駄目だった?」
「いや、問題ない」
側近やシロエとクロエがいても、レヴィアには適わないだろうと思ったエギルだったが、何かしてくるなら、おそらくこの前にしてるだろう。
なので、エギルは警戒しつつ、レヴィアの前に座った。
「それで、話ってのは?」
「うむ、お主の王国に招待してほしいと思ったのじゃ」
「招待……?」
その言葉に身構えてしまったが、レヴィアは何もしないと言わんばかりに首を左右に振る。
「敵意はないのじゃ。ただ、見てみたいだけじゃ」
「……理由を聞いてもいいか?」
「それは入れてくれてからの方が良いのじゃ。なにせ、我にも確信があったわけじゃないからのう」
「確信……それは、お前がここにいる目的の一つでもあるのか?」
それしかないだろうが一応は聞いてみる。そして彼女は、考える間もなく頷いた。
「うむ、そうじゃ。まあ、ただで入れてくれとは言わぬ。我で手伝えることがあればそうしよう」
「……そうか。王国に危害を加えるつもりはないんだな?」
「うむ。そんなことをするつもりはないのじゃ」
「そうか」
フィーは不安気な表情を浮かべ、華耶は口を挟まないで状況を見守る。
「それじゃあ、ここへ乗って移動できるドラゴンを呼ぶことはできるか?」
「エギル……?」
エギルの言葉にフィーは慌てて口を開く。それを、エギルは首を左右に振って安心させる。
「大丈夫だ。それで、できるか?」
「ふむ。できることはできる。じゃが、それが希望かのう? そんなことをすれば、ここにいる者たちに我が狙われそうなのじゃが?」
「そこは大丈夫だ。それで、ドラゴンは何体呼べる? それと、ここへ来るまでどれぐらいの時間がかかる?」
「……何か、そうしたい理由があるようじゃな。ふむ、少し待っておれ」
レヴィアはそう言うなり、目を閉じた。