裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
『中から爆薬を投げて注意を引きつけるって。だけど全員を門の前から遠ざけさせるのは無理そう。それでも大丈夫?』
「ええ、問題ありません。中の準備ができたら教えてください」
そう伝えてから、エレノアは三人に伝える。
「門までの移動距離を少しでも短くしたいので、進みましょう……」
エレノアたちのいる場所から二の門までは距離があり、その途中には騎士がいる。だが、建築作業のために作られた簡易小屋に身を隠しながら、距離を縮めることはできるだろう。
「行きます」
エレノアの合図で四人は道沿いに点在する小屋の陰に隠れながら移動を開始する。
騎士たちとはまだ離れてるものの、この緊迫した状況に四人の表情は強張っている。
少し、また少しと門との距離を縮め、はっきりと騎士たちの表情が確認できる門に一番近い小屋まで来ると、門付近の様子をそっと窺った。
「合図があったら、わたくしのライトフェンリルで目くらましをしますので」
「わかったわ。私が先行するから、三人は後をついてきて」
この中で唯一、接近戦ができるセリナが先行し、エレノアたち三人がそれに続くことになる。
『中の準備はできたよ』
「わかりました。フィーさん、ゲッセンドルフさんたちに伝えてください。わたくしが聖獣を召喚し、目くらましをします。敵に隙が生まれますので、爆薬を城壁の上から投下して攪乱してください」
『わかった』
眩い光に視界を奪われないよう三人は武器を手にして目を閉じる。それを確認してから、エレノアは小さな声で詠唱を始めた。
「光の仔狐よ、敵を惑わす光を放ち、現世に姿を現し力を示せ──。称呼──ライトフェンリル!」
エレノアの召喚した子狐が数体、門付近に現れると眩い光を放った。
閃光が走り、門の前にいた騎士たちがひるむ。その瞬間、火を付けられた爆薬が城壁の上から投げられる。門の入り口辺りに落ちた爆薬が大きな音を響かせる。
眩い光に襲われた騎士たちはそれでも必死に武器を構え、敵を探そうとするが、追撃の爆薬によって吹き飛ばされ、一気に統率が崩れてしまった。
直前まで目を閉じていたエレノアたちは、ライトフェンリルの発光が収まったのと同時に目を開ける。だが、周囲には既に視界の戻った騎士たちも何人かおり、エレノアたちに向かってくる。
「サナさん、ルナさん!」
エレノアの声と同時に、閉ざされていた門が開かれ、
「う、うんっ! 光の爆撃を──エンジェル・ノヴァ!」
「当たって──天雨!」
サナが光弾を放ち、ルナが矢の雨が降らせる。
一掃することは難しいが、少なくとも態勢を崩した彼らに反撃する暇を与えない。
その隙に、セリナが立ち塞がる騎士たちを倒して、四人は開いた門へ。その門口には、ゲッセンドルフとハルト、それに冒険者たちの姿が見えた。
「四人とも、早くこっちに!」
四人は一斉に開かれた扉の中へと入った。
エレノアたちが二の門を抜けたのを確認すると、ゲッセンドルフが声を張り上げる。
「門を閉めろ! 侵入してこようとする奴らは全力で排除するぞ!」
敵の侵入を防ぐように二の門は力任せに閉められ、門扉に頑丈な鉄板を挟んだ。
「みなさん、無事でなによりです!」
エレノアの言葉に、ゴルファスを頭に乗せたゲッセンドルフは苦笑いを浮かべる。
「こっちはなんとか、といったところですがね。四人も無事で良かったです」
ここにいるのはゲッセンドルフやハルトを含め十数名の冒険者で、ハボリックや他の冒険者はいない。おそらくは他の門の守備にまわってるのだろう。
「現在の状況を教えていただけますでしょうか?」
エレノアの言葉に、ゲッセンドルフが答える。
「我々もこの門周辺から離れることはできないのであまり詳しくは……ただ、今は他の門もここと同じように閉めていますが、北側以外は住民区まで侵入を許してしまったとハボリックから連絡がありました。それで手の空いてる者は、騎士たちの数が集中している南門で掃討にあたっているそうです」
「どうして、南門だけ……?」
エレノアの問いかけに、ハルトは首を左右に振る。
「それはわかりません。各門、ここと同じ人数の冒険者を配置していたのですが、南門だけ圧倒的に来襲数が多く対処できずに……。向こうの騎士に物凄く強い奴がいるとかではないのですが。それに連中には不思議なことが多くて」
「不思議なこと? それはどういうことですか?」
セリナの言葉に、ゲッセンドルフは答える。
「無理矢理にでもこの中に入ろうと思えば、さまざまな手段で門を破ろうとしてくるはずです……だけどそんなこともせず、それどころか、閉めた今も無理にこじ開けようともしてきません」
今、二の門の前は静かだ。まるでもう、この門から侵入するつもりはないといわんばかりだ。
──不気味だ。明確な目的がわからないから尚更。
エレノアはそう思った。けれど攻めてこないならそれでいいし、これ以上、答えのわからない疑問について考えてもしかたない。
「……わかりました。であれば、わたくしたちは南門へ向かってみます」
「よろしくお願いします。あっ、もし途中でハボリックに会ったら、この子を預けてください」
そう言って、ゲッセンドルフからゴルファスを預けられる。
「あいつは戦えないので、門と門の伝達係をさせています。この子もきっとここにいるより、あいつに同行させたほうがいいと思います」
「わかりました。では行ってきます」
ルナの頭にゴルファスを乗せ、エレノアたち四人は真っ直ぐに南進、住民区の出口である北の三の門へと向かった。
「ねえ、あれ何してるの?」
ふいにサナが口を開く。
「花壇、でしょうか」
四人の視線の先には、家の前の花壇で何かを探している様子の騎士の姿。目を凝らしてみると、花壇の土を掘り起こしていた。