裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「何してんの、あれ……」
「わかりません。ですが、何か探してるみたいですね」
「あっ、向こうに行っちゃった。どうする、エレノア」
しばらく様子を窺うと、騎士たちは家の中を確認したあと、また別の家の花壇を掘り起こし始めた。ルナに問いかけられ、エレノアたちはさっきまで騎士がいた花壇を覗いた。土が掘り起こされた跡。そこに見覚えのある花の根があった。
「これ、アロヘインよね」
セリナが根を見て言う。
「私たちが全て処分したと思ってたのに根が残ってたのね。ということは、連中の目的はこのアロヘインだったってこと?」
「それはわかりません。ただ、花壇を掘り起こしてみていたということは、何か理由があってのことでしょう」
アロヘインを目的とする行動、ということも考えられるが、それにしても不自然だった。もしもアロヘインが狙いなのであれば、この根だって当然回収するだろう。けれど根は抜かれることなく剥き出しのまま放置されている。
まるで根を確認すること自体が目的のようだった。
「そういえば、セリナさん」と、サナがセリナに言う。
「セリナさん、前にアロヘインの匂いが嫌いって言ってたけど、根の匂いは平気なの?」
「匂いがするのは葉っぱだからね。根は平気よ」
「そうなんだ」
「あっ、そういえば、エレノア」
ふと、セリナがこちらを見る。
「アロヘインで思い出したけど、この辺りよりも、南の家の庭の方がもっと生えてたわよ」
「そうなのですか……?」
「うん。あの辺りを掃除していたとき見たのよ」
頷くセリナに、サナが言う。
「セリナさん、アロヘインの匂いが嫌いだから南門付近は後回しにしようって言ってたもんね」
「だって、あれ嫌いなんだもん」
「南門付近に……」
エレノアは周囲の花壇に視線を向ける。
そして、南へ向かって花壇が掘り起こされている状態であるのに違和感を覚える。
まるでアロヘインが植えられている花壇を辿って、南へ向かっているようだと。
「なぜ、アロヘインを……」
そのときだった。誰かが家の陰に隠れながらこちらへ向かってくる。その姿を見て、エレノアは声をかける。
「ハボリックさん」
「え、あっ、エレノアさん」
声を抑えながら言葉を返したハボリック。いつものさらさらの金髪が汗で艶めき、服には微かに泥が付いていた。
「無事でなによりです」
「自分は逃げ回ってるだけっすけどね。それより、エレノアさんたちは北門から?」
「ええ、そうです」
「なるほど。北門から攻められそうな雰囲気はあったすか?」
「あまり感じられませんでした。門を閉めてからも、不気味なほど静かでしたから」
「……」
エレノアの言葉にハボリックは思案顔を浮かべる。
そして何か思いついたのか、彼は何度か頷いた。
「たぶんゲッセンドルフさんたちと会って聞いてるとは思いますが、今奴らは南門から攻めてきてます」
「ええ、そう聞いてます」
「それで、連中の目的のものは、どうやら南門付近にある可能性が高いっす」
「え、どういう意味ですか?」
ハボリックの言葉にルナは首を傾げると、彼は周囲を警戒しながら説明を続けた。
「奴らは当初、北門から攻めてきたっす。だから自分たちは北の二の門を閉じて、侵入を防いだっす。すると今度は西門、東門から攻めてきたんすけど、連中は王城を目指さず、住民区ばかり調べてるんす」
確かに、先程エレノアたちが見た騎士も、家の中や花壇を調べていた。
「王城に向かってはいないのですか?」
「そうっす。今は西、東の住民区を調べ終わったみたいで、静かっす」
すると、サナが口を開く。
「で、でも、南門の近くに目的のものがあるとしても、別に他の門から攻めてもいいんじゃないの?」
サナの言う通りで、南の住民区に 何かあるとしても、他の場所から攻めない理由にならない。
全ての門から攻めて反撃を分散させるのが最も効果的な作戦だろう。
「なぜかはわからないっす。ただ連中は今、南門からの侵入に力を入れてるっす。だから自分は、他の門を守ってるみんなに、南門に向かうよう伝えに行く途中だったっす」
「それで北門へ向かってたのですか」
ハボリックはエレノアたちが入ってきた北門へと向かっていた。南門以外の人員を、南門の守備に移そうとしていたのだろう。
「エレノアさん、それでいいっすか……?」
ハボリックは、決断をエレノアに委ねる。
おそらく、自分の判断が妥当かどうか、その正否を、エレノアに問いたいのだろう。その意味を理解したエレノアは少し考えてから、大きく頷いた。
「それで構いません。ですが数名だけ北門に残り、引き続き壁のからで爆薬を投げるなどの牽制を行うよう伝えてください。わたくしたちもすぐ南へ向かいます」
「了解っす」
「それとハボリックさん。伝達用にこの子を連れて行ってください」
ルナの頭に乗っていたゴルファスをハボリックに預けると、彼は頷いた。
「わかったっす。何かあれば、この子に声をかけたらいいんすね」
「はい、よろしくお願いします」
「では、みなさんもお気をつけて」
それだけ伝えて、ハボリックは北門へと向かった。
そして、エレノアたちは南側へと向かう。
北の住民区の家々は荒らされていた。それは西側や東側もおそらく同じで、不気味なほど静まりかえっていた。
おそらくほとんどが南の住民区に集まっているのだろう。
騎士との接触を避けながら進んでいく。どれだけ歩いただろう。普段、そこまで王国の広さを実感することはなかったが、敵を意識すると、いつもより時間がかかるように感じる。
そしてエレノアたちは北の三の門を抜け、城の横を通り過ぎ、南の三の門から南の住民区へと入った。
「……これは」
そして、セリナが小さく声を漏らした。
南の住民区ではより一層、激しい剣戟の音が響いており、騎士と冒険者が激しく衝突していた。それだけを見ても、騎士たちの目的がここにあることは理解できた。
「……エレノア、どうする?」
家の陰に隠れながら、押し殺した声でセリナに聞かれる。
少し離れた先に見える騎士の数は多く、数だけなら到底勝てるとは思えない。だが冒険者たちにそこまで押されている様子はなく、むしろ均衡状態にあった。であれば総体的に実力では劣っていないということだろう。
──その時だった。
コツコツと、ハイヒールが地面を鳴らす音が後ろから聞こえた。
「アルマ、さん……」
振り返ると、そこにいたのは宿屋でエレノアに会ったという、アルマ・レニッサだった。