裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
そしてエレノアは、冒険者たちを見回しながら指揮をする。
「正面から攻めてきた敵を、ゲッセンドルフさんとハルトさんとセリナが先頭に立って迎撃してください!」
その声に、ゲッセンドルフたちがうなずき、表口の守りを固める。
「遠距離から攻撃できる方は二階から牽制を! 時間稼ぎでも構いません、できるだけ城に攻め込まれないようにしてください!」
サナやルナといった後方から攻撃できる者たちが二階の狭間からすぐさま攻撃を仕掛ける。
その一方、仲間たちを支援しようと、エレノアは詠唱を始める。
「一角獣の聖獣よ、混沌とした世界に一閃の輝きを、我々に栄光ある勝利にお導きください──称呼──ユニコーン!」
両手を広げたエレノアの背後から一角獣の聖獣が浮かび上がる。
眩い光に包まれた馬の姿をした聖獣。ユニコーンは、その白き羽を広げると、大きく翼を羽ばたかせた。
吹き抜けのロビーを飛ぶユニコーンから眩い鱗粉が降りそそぎ、それに包まれた冒険者たちの傷が癒える。エレノアが使える中で最も強力な広範囲の回復魔術。
それほど強大な力を使用したエレノアは、ガクッと膝から崩れかけたのだが、
「エレノア!? 大丈夫?」
それをセリナが支える。
「ええ、なんとか」
「良かった。今まで使ったことないでしょ、無理しすぎよ」
「そうですね、ですが、みなさんの力になりたかったので……」
サナとルナが主体となって狭間から矢や魔術を放ち、一階のロビーではハルトたちが攻めてきた騎士たちを迎撃する。
必死に戦ってくれる仲間たちの負担を少しでも軽くしたいという思いが、エレノアにこの召喚術を使わせたのだろう。
そんな王妃と呼ぶに相応しい振る舞いをみせるエレノアを見て、セリナはどこか寂しそうな小さな声を漏らす。
「……やっぱり、エレノアはエギルさんの王妃様なのね」
「え……?」
「私も行ってくるから、あんま無理しないでね」
セリナはそう伝えると、ロビーにいる騎士たちへ走り出した。
セリナはきっと、自分とエレノアの違う部分を見てしまったのだろう。
だがエレノアも、エギルから教わった剣技で敵を圧倒するセリナを羨しく思っていた。
「……セリナは、エギル様に教わったその力で、背中を預け合い、共に戦えるではないですか」
その小さく漏らした言葉はセリナには届かない。
セリナに限らず、サナやルナやフィーにも、それぞれ他の誰も持っていない魅力や、誇れる部分がある。
それを羨ましく思う時はある。けれどそこに優劣はつけない。
「エギル様は、そういう方ですから……」
だから全力で、自分のできることをやる。
ロビーへと次から次に攻めてくる騎士たち。それをセリナたちが迎撃し、その負担を少しでも減らすためサナやルナたちが二階から攻撃する。
分断しながらも、この引きも切らず攻めてくる騎士たちを相手にするのは楽ではないが、劣勢状態にもならなかった。
だからこのまま時間を稼いで──エレノアがそう思った時、
「エレノアさん、雨が強くて矢が届きません!」
ルナの声が響く。
弱かった雨がいつしか本降りへと変わり、敵へと鋭く放たれていた矢が空中で雨に打たれ届かない。
それにより、足止めできていた騎士たちもが一斉に王城へと侵攻してくる。
「そんな……」
エレノアは次の策を考える。だが思いつかない。
「エレノア!」
ロビーで戦っていたセリナの声が届く。
「私たちが外に出て敵を食い止めるから!」
そして、セリナはハルトや他数名の冒険者たちに視線を向ける。
「ハルトさん、みなさん、お願いできますか?」
「もちろん、喜んで」
その意見に賛同したのか、ハルトたちは大きく頷いた。
「セリナ、ですが──」
「矢が届かないなら、ここでずっと守っててもいずれ一気に攻め込まれるだけ……大丈夫、私たちは死なない。心配しないで」
そう言って、セリナは他の冒険者たちと共に入り口を抜け、外へ向かって走り出した。
セリナの決断のお陰で、王城へと侵攻していた騎士たちの半分ほどがセリナたちへと向かい、一斉に攻められることはなくなった。けれど、少人数だけに、雨によって視界の悪くなった外で戦うのは分が悪い。
ましてや、長時間となると── そんな時だった。
フェニックスを通じてフィーの声がした。
『エレノア、お待たせだって』