裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
──エレノアが籠城戦を行うという決断をエギルに伝えた頃。
雨降る中、大空を舞う二頭のレッドドラゴン。
そのドラゴンの背に乗るエギルは、目を閉じ、目的地へ到着するのを静かに待っていた。
「見て見て、シロエ! 大陸があんなにちっちゃいよ!」
「そうですね。ほら、あそこの街」
ドラゴンが風を切る音と共に、前に座るクロエとシロエの声がする。
真下に見える大陸を指差すクロエは、真っ白い雲の間近にいることに舞い上がってるのか、頭の上でお団子のようにまとめた髪をゆらしながら、大きくはしゃいでみせた。
それを見て胸元まで髪を伸ばしたシロエは、上品に口元に手を当てクスクス笑う。
それでも時間が経てば経つほど、微かにソワソワし始めているのは、これから二人の姉、セリナと会うからだろうか。
「下手に動いて落ちるなよ」
そんな二人を見て、エギルは笑顔を浮かべる。
「平気平気! エギルも見て……って、なんで笑ってるの?」
「本当です。何を笑ってるのでしょう」
クロエとシロエは首を傾げる。
「いや、少し嬉しいことがあってな」
「んー? なにかあったの?」
「あったといえば、これからの作戦について、このウサギちゃんが喋ってたぐらいですが」
シロエはエギルが抱く白ウサギのエリザベスを撫でる。
シロエの言う通り、エギルの周りであった出来事というと、エレノアから作戦について伝えられたことくらいだ。
それも危険な作戦。
けれど、それを彼女から伝えられ、協力を求められたことがエギルにとっては何より嬉しかったのだ。
──エレノアが自分で考え、周囲の仲間を指揮する。
決して自分からは何も決断しなかった最初の頃の──奴隷と自分自身を蔑んでいた──エレノアとは違う姿に、エギルは嬉しく思っていた。
すると、前を飛ぶドラゴンの背に乗ったレヴィアが振り返る。
「エギルよ、そろそろ到着するのじゃ」
その言葉を受け、エギルも地上に視線を向ける。
大きく広がる森林の中心に聳える王国を見て、エギルは息を吐く。
「エギルよ、どこに着陸するかのう?」
レヴィアの問いかけに、エギルは即答する。
「王国の南側に回り、王城を攻めてる連中の背後を狙う。挟み撃ち。それがエレノアの作戦だからな」
「うむ、では旋回して後方より攻めるのじゃ」
それを聞き、二頭のドラゴンは雲上で王国をぐるりと回った。
「シロエ、クロエ、これから戦闘に入る。手を貸してくれるか?」
「わかってる、おねえちゃんのためだもん」
「ええ、私たちも戦います。お姉ちゃんを助けるために」
エギルは笑顔を浮かべると、二人の頭を撫でた。
「フィー、エレノアに合図を」
『わかったよ。少し待ってて』
エギルは頷く。それから少しして、フィーが合図したと知らせてきた。
『カウントするよ、準備はいい?』
「ああ、構わない」
エギルは目を閉じると、クロエとシロエが落ちないように後ろから抱きしめる。
『それじゃあ、3、2、1……』
エギルたちが乗るドラゴンは黒雲を突き抜け、南の三の門辺りに降り、王城を攻めていた騎士たちの背後から出現する。
数百もの騎士たちが、突然のドラゴンの出現に驚いていた。
「人の家に、家族に手を出したこと──後悔しろ」
そして、エギルはドラゴンの上から右手を前に出した。
「──無限剣舞 」
無数の剣が、南の三の門に向かう騎士たちの進路を封鎖するように召喚される。
進む道を閉ざされた騎士たちは右往左往しながら、ドラゴンに乗るエギルへと剣を向けるが、彼に睨まれると足が止まり、全身を委縮させていた。
「さあ、行こうか……」
エギルはドラゴンから降り立ち、王城へ向かって進む。騎士たちは脅えたように後退りする。彼らはエギルと戦うか、南の門から逃げるかしか選択肢がなかった。
エギルは敢えて逃げ道を与えた。
それはエギルが王城に立てこもっている者たちの身を案じて、戦闘を早く終わらせたいと思ったからだろう。
そして、騎士たちはエギルとの力量差を感じ、攻めることを放棄して撤退した。
「このまま進むぞ」
エギルたちは急いで王城へと向かって駆け出した。