裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「──結局、一睡もしなかったな」
二人が満足してくれたのはお昼前のことだった。
籠城戦を繰り広げ、騎士たちを撤退させたのは朝だった。それから昼までは各自休息をとるようにし、昼過ぎに再び城に集まる約束していたのだが。
「わたくしたちは寝ずに今後の方針を決める会議に出席、ですね」
「疲れてるのにすみません、エギルさん」
全身に付いた精液や汗なんかを落とすため三人は湯舟へ。そして両隣に座る二人は、どこか幸せそうな笑顔を浮かべていた。
「まあ、俺もそうしたいと思ってたからな」
エギル自身も留守にしていた時間を埋めるように二人との営みを楽んだ結果だった。エギルも二人と同じく笑顔で伝える。
「少しの間だったのに、すごく我慢してたから、いっぱい愛してほしくて夢中になっちゃいました」
「そうですね。エギル様のお〇ん〇んが気持ち良すぎるのが悪いのですよ?」
セリナは照れ笑いを浮かべ、エレノアは頬を膨らませる。
「俺じゃなくて二人が無駄な争いをしてたからだろ」
両隣の二人にそう言うと、二人はエギルを間に挟んでまた言い合いを始めた。
「だって、エレノアよりもいっぱい中に出してほしかったんですもん!」
「ふふん、正妻が愛人に負けるわけにはいきませんからね。セリナよりも多く中出ししてもらわないといけません」
「だから愛人じゃないって! それによく考えたら、私の方がいっぱい出してもらったもん!」
「ふふん、量より質ですよ。セリナが出してもらった精液は薄かったですからね」
「……はあ」
最初は仲良くやってくれていたのだが、争うように段々と様子がおかしくなり、競い合い始めた。
セリナの中に出すと、次は自分にとエレノアが。
エレノアの中に出すと、次は自分にとセリナが。
そうして競い合った結果、三人はくたくたになっていた。
「……それより」
エギルは二人に真面目な話を始める。
「そろそろ向かうとするか。みんなも集まっているだろうしな」
そう伝えると、二人は真剣な眼差しで頷いた。
♢
──時は遡り、エギルたちヴォルツ王国が勝利を治めた頃。
ヴォルツ王国から少し離れた森林では、静けさを切り裂くような声が響いた。
「──た、頼む……た、助けて、くれ」
「ああ、助けてやるよ。テメェが隠してることを全て吐けばな」
白いローブを着た神教団の男は震える声で涙を流しながら助けを乞うと、ずるずると這うように二人の男女から後退りする。
大振りの剣を持ったリノは男を睨みつけながら一歩、また一歩と男へ近づいていく。
そして、その様子を見つめる剣王シルバ・タスカイルはため息をついた。
「リノ、そいつを脅してもなんも喋らんって」
「じゃあどうすんだよ。他の連中は殺しちまったんだぞ?」
「喋られねえなら、仕方ない……頭でも開いて脳を見ればいいだろ? なあ、そうだよな?」
ニヤリと笑いかけるシルバを見て、男は更に脅える。
そしてシルバの言葉に、「ああ、なるほどな」と、リノも不気味な笑みを浮かべた。
そんな二人の恐ろしい会話に恐怖を感じた男は、逃げようとするが、
「──なあ、逃げられると思ってるのか?」
優しそうな表情から一変。シルバは氷のように冷たい表情を男へ向ける。
そこで諦めたのか、彼はうなだれるように木に背を付けて座り、俯いたまま口を閉ざした。
「てかよ、お前、あいつに会わなくて良かったのかよ?」
「あ?」
「わかってんだろ、エギルだよ、エギル」
「……まあ」
リノは耳に髪をかけると、苦しそうな笑みを浮かべながら空を見上げた。
「……いいんだよ。あいつは……エギルは、やっと幸せになれたんだからな」
「あ? 理由になってないっての」
「うっせ。わたしと会ったら、せっかく忘れた昔の嫌な記憶が蘇るだろ」
「そうかもしれないけどよ、お前、ずっとあいつと再会するために頑張ってきたんだろ? あいつに教わった剣技を毎日のように練習して、話題はあいつのことばっか……ずっと好きだったなら、一目顔でも見てくれば良かっただろ」
普段のリノであればきっと、シルバの言葉に機嫌を悪くしたはずだ。けれど、今の彼女は悲しそうに、強がる気はなかった。
「そう、だな……わたしはいつも選択を間違えちまう。せっかく会えると思ったのに、な」
そんな彼女の表情を見て、シルバは噴き出す。
「プッ! なんだよそれ、まるで恋する乙女みたいだな!」
「んだと!?」
今にも大剣を振り下ろしてきそうな勢いのリノから、シルバは距離を取って伝える。
「ははっ。お前は辛気臭い面よりも、そうやって強気に見せた方が似合ってるぞ」
「……うっせぇよ」
「それに」
シルバは腕を組んでため息をつく。
「どうせ、またすぐに会うことになるだろうしな」
「そう、なるんだよな」
「ああ、必ずな」
しんみりした雰囲気になると、リノが「つかよ」と言いシルバを見る。
「あの変態、遅くねぇか? さっき知らせは送ったんだろ?」
「ん、ああ、そうだが……ああ、来たっぽいぞ」
二人は視線を音がする方へ向ける。
一台の馬車が真っ直ぐこちらへ向かってきていた。
そして馬車が止まると、一人の女性が降りてくる。
「あら、ごめんなさいね。まさかこんなに早く終わるとは思ってなかったのよ」
暗くても綺麗に見えるエメラルドグリーンの巻き髪は、毛先へ向かうほどに細くなり、胸元まで伸ばされている。
豊満な胸元を強調させた露出度の高いドレスを着た女性。おっとりした雰囲気と唇の左下の黒子で色っぽさを増した彼女は二人へ目蓋を閉じたまま笑顔を向ける。
「遅せぇんだよ、リオネ。何してやがったんだよ?」
「ふふ、それは秘密ですわ。乙女の秘密ですことよ」
どこか不思議な匂いを纏った女性──リオネの言葉を受け、シルバは大きなため息をつく。
「どうせ、あの変態な書物でも書いてたんだろ?」
「ああ、どうせそうなんだろうよ」
二人の決めつけに対して、リオネは心外だと言わんばかりに頬を膨らませた。
「まあ! 変態とはなんですの? あれは聖書。そう命名しても過言ではないほどの上品な作品ですのよ?」
「……聖書じゃなくて、性書だろ。変態作家リオネ先生よ?」
その問いかけに、リオネは更にふてくされてみせる。
「失礼ですわね。わたくしの作品を楽しみにしてくださる方々は、この世界に大勢いらっしゃるのですよ?」
「んなの、変態なおっさんだけだろ」
「いえいえ、女性だって……」
リオネは何か思い出したのか、手をパチンと叩いた。
「そうですわそうですわ。わたくしのファンだと仰ってくれていた綺麗な二人組の女性と以前お会いましたのよ」
「嘘だろ」
「嘘だな」
二人の即答にリオネの自慢の巻き髪が大きく揺れる。
「本当ですわ! もう、二人にも会わせてあげたいですわ。あの屈強な男性が大好きな金色の髪の美女と、匂いフェチの桃色の髪の美女を」
「はいはい、今度な……それより」
シルバはリオネの妄想を適当に流すと、神教団の男に視線を向ける。
「あいつの口を割りたいんだが、頼めるか?」
「はて? リノさんの猛犬のような威嚇でもダメだったのですか?」
「誰が猛犬だ。まあ、残念ながらな。だから──」
「それは有望だこと!」
リオネは大きな瞳を輝かせると、男へと近づいていく。
「リノさんの威嚇を受けても口を割らなかったとは、アナタ、素敵ですわ!」
「は、はあ……」
「これは久しぶりに腕が鳴りますわね!」
興奮気味のリオネを置いて、シルバとリノは馬車へ乗り込む。そしてシルバは男に忠告する。
「そいつが来る前に口を割らなかったこと、あんた、後悔することになるぜ」
「え、それは……」
不思議そうにしてる男へ、リオネは顔を近づける。
「……アナタ、痛みには強いお方ですの?」
「え……?」
「ふふ、ふふふ……楽しみ、楽しみですわぁ! この間のオモチャはすぐ壊れてしまったので」
リオネは彼へカーテシをする。その表情には綺麗な笑顔だが、彼にとっては不気味なほど悪魔のような笑顔に映っただろう。
リオネは彼の体の部分を指でなぞりながら言葉を続ける。
「まずは手足の爪をはいで、全身を斬りつけ、火で炙り、それから、それからぁ……。ああ、想像しただけで濡れてきてしまいます。なので……お願いですから、わたくしの拷問に堪えて堪えて堪えて、楽しませてください。わたくしを、がっかりさせないでくださいませ……?」
それまで聞いて、男はこの後に何が待っているのか察したのだろう。涙を流しながら、小さな悲鳴を漏らした。
「おいリオネ、お楽しみの拷問は帰ってからにしろよ」
「わかってますわ。さて急いで帰りましょう。ふふふ」
「不気味だな……」
リオネが従える筋肉質な執事に暴れる男を任せ、彼女は馬車へ乗り込むと不気味な笑みを浮かべていた。
そして、シルバは遠くに見えるヴォルツ王国をじっと見つめる。
「シルバ、なに笑ってんだよ」
「ん、まあな。次にあいつと会ったとき、どんないい面になってっかなと思ってな」
「まあ、もしかしてシルバ、意外とそっちの気が!? いいですねいいですね、是非その際はわたくしに教えてくださいませ! 実はわたくし、そちら側にも──」
「リオネ……そろそろ静かにしろ」
リノとリオネの会話を聞きながら、シルバは鼻で笑う。
「またな、エギル。すぐに会えるだろうよ。今度は共に世界を変える重要な歯車の一部としてな。だから……死ぬなよ」
三人の乗った馬車は静かに動き出す。
この三人がいるべき大陸へ──冒険者で結成された、冒険者だけの王国へと。