※この作品はR-18です。

裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る   作:柊咲

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第14話

 エギルは華耶とフィーと共に、先程ハルトから聞いた南の住民区へと向かっていた。

 そしてエギルを見送った後、エレノアは自室へと戻った。

 普段はあまり使わない部屋。そこでは、エレノア同様、エギルを心配していたセリナとサナとルナが待っていた。

 三人が聞きたいことは何か、それをすぐに察したエレノアは、エギルの過去とクロネリア・ユースが大きく関わっていることを伝えた。

 

 

 

「そっか」

 

 

 

 どこか申し訳なさそうに椅子に座っているサナとルナは重い表情を浮かべ、壁に背を預けて立っているセリナは俯いた。

 

 

 

「クロネリア・ユースは、エギルさんがルディアナって奴隷に裏切られた場所だったんだ……」

「そうみたいです。ゲッセンドルフさんやハボリックさんも知っていたみたいですね」

「だね。名前が出たとき、二人ともエギルさんのこと心配そうに見てたし」

 

 

 

 サナの言葉に、ルナが何度も頷く。

 

 

 

「それで、エギルさんにあのこと伝えたの……?」

「……アルマさんのこと、ですか?」

 

 

 

 セリナは頷く。エレノアは首を左右に振った。

 

 

 

「いいえ、言えませんでした。彼女が何を意図して、エギル様にクロネリア・ユースに向かうよう伝えたのかわからなかったので」

「そうよね。……過去の記憶を蘇らせて苦しめるための、嫌がらせ……とは思えないけど」

「な、なにか、理由があるんだと、思います」

 

 

 

 ルナの言葉に三人は頷く。

 重く沈んだ空気を変えるように、エレノアは手を叩く。

 

 

 

「どちらにせよ決めるのはエギル様ですから。わたくしたちはわたくしたちにできる準備をしましょう」

 

 

 

 何度も頷くサナとルナ。だがセリナは、愛刀に視線を向けながら冷たい声を漏らす。

 

 

 

「準備なんて……一つしかないけどね」

 

 

 

 その言葉の意味をみんなが理解した。それについてはエレノアも同意見だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 騎士や神教団にとっては財宝とも呼べるモノ、それが眠っているとなれば、普通は豪華で煌びやかな場所を想像するだろう。

 しかし、エギルと華耶、そしてフィーが向かったのは何の変哲もない平屋の一軒家だった。

 

 

 

「これか……」

 

 

 

 家に入ると、あちこち毛足がほつれた絨毯の下に、薄紫色の刻印が刻まれた鉄製の扉が隠されていた。

 まさかこんなところに神の湖に続く扉があるとは、誰も想像しないだろう。

 

 

 

「エギルさん、ハルトさんたちがここを見つけた時にはこの絨毯の上に家具が置かれていたらしいわ。まるで誰かが意図的に隠していたかのようにね」

「意図的にか」

「……それと、動かされた形跡はなかったって」

 

 

 

 ということは、ヴォルツ王国を襲撃してきた騎士たちや神教団も、ここを見つけることができなかったのだろう。

 

 

 

「華耶、シュピュリール大陸には、こういう刻印が刻まれた、地下に続く扉はあったか?」

「大陸中を調べたわけじゃないから正確なところはわからないけど、少なくとも、湖の都にはないわ」

 

 

 

 扉に付いている取っ手を押したり引いたりしてもびくともしない。どうやっても扉が動く気配もない。おそらく、扉に刻まれた紋章によって、どんな力を加えても開けられないよう封印されているのだろう。

 エギルはフィーに視線を向ける。

 

 

 

「フィー、これはさっき言っていた奴に頼めば解除できそうか?」

「……たぶん。この紋章は呪術の類だと思うから、【アレ】に頼めばできると思う」

 

 

 

 フィーは小さく頷きながら答える。

 この扉の周りを掘れば、地下へと進めるかもしれない。だがそれで地盤が崩れてしまえば元も子もない。

 となるとやはり、フィーの言っていた人に頼むしかない。だが、フィーはその人物のことを【アレ】としか呼ばず、詳しく話したがらない。

 あまりいい人物ではないのだろうと思うが、それでもサナとルナのためにも頼むしかない。

 

 

 

「よし、そろそろ戻るか」

 

 

 

 結局、この場所にいてもどうすることもできないという結論に至った。この下には神の湖が眠ってるはずだが、今は厚い壁に阻まれてる。

 ここにいても何もできないし、何もわからない。エギルたちは再び扉を絨毯と家具で隠し、家を出て城へ向かった。

 

 

 

「……エギル、どうするの?」

 

 

 

 隣を歩くフィーはそう言って首を傾げ、華耶も同じように心配そうにエギルを見つめる。

 

 

 

「どうするか。まあ、フィーの言っていた人物に会いに行くしかないな」

 

 

 

 ルディアナに裏切られた、かの地、クロネリア・ユース。そこへ向かうしかない。

 嫌な出来事があった場所へ向かうのは気が引けるが、それでも、サナとルナの笑顔を取り戻すためには行くしかない。

 ──エギルがそう思った時だった。

 まだ昼間だというのに、一瞬だけ周囲が暗くなったように感じた。その原因は、エギルの真上を飛行する大型の魔物だった。

 

 

 

「来たか」

 

 

 

 ドラゴンは大きく広げていた翼をゆっくりと閉じると、王城に向かって降下している。

 乗っている人物が誰なのか、それはすぐにはわかった。

 

 

 

「二人とも、俺は先に戻る」

 

 

 

 急いで向かおうとすると、フィーがエギルの手を掴む。

 

 

 

「一人で、大丈夫?」

「ああ、問題ないだろう」

 

 

 

 そう返しながらフィーの頭を撫でると、彼女は頬を赤くして、猫のように嬉しそうにする。

 エギルは二人と別れて、ドラゴンが降り立った王城へと走った。

 屋上へ向かう途中、二階の廊下で、エレノアがエギルに向かって軽くお辞儀をする。

 

 

 

「お待ちしてましたよ、エギル様」

「待ってたのか?」

「ええ。わたくしもお供しますので」

 

 

 

 エレノアはそれだけ答えて、エギルの隣を歩く。

 

 

 

「自分の部屋にいたのか?」

「いえ、地下で少し調べ物をしておりました」

「書庫か?」

「はい」

 

 

 

 この城の地下には鍵のかかった書庫がある。そこには過去の出来事を記した書物が数多く残されている。よく魔物に荒らされなかったなとエギルは思ったが、そもそも魔物は書物を読まないし、食べたりもしないので、破れたページはあっても、おおかたはそのまま本棚に並べられたままになっていた。

 そしてエレノアは時間があれば、その過去の書物に目を通していた。

 エギルの力になりたいと考え、彼女なりに少しでもクロネリア・ユースの情報を得ようとしてくれているのだろう。

 

 

 

「ちょうど書庫から出てきた時、この王城の真上にドラゴンが降り立ったことに気づきまして、ここでエギル様が来るのを待っておりました」

「わざわざこんなところで待たなくてもよかったのに」

「そうはいきません。エギル様に置いていかれたくないですから」

 

 

 

 そんなわけで、地下から急いで二階へと戻ってきたのだろう。

 

 

 

「妻として、あの方のお話をちゃんと聞きたいですし、それに他のみなさんにもちゃんとお伝えしないといけませんから」

 

 

 

 笑顔でそう告げたエレノアに、エギルも笑顔で言葉を返す。

 

 

 

「みんなに、俺といるよう頼まれたか?」

 

 

 

 ドラゴンの翼を羽ばたかせる音は騒がしい。誰だって気づくだろう。こんなときには大抵、真っ先に来るセリナや、この近くにいるであろうサナやルナがいないということは、他のみんなに一緒にいるよう頼まれたのだろう。

 

 

 

「さあ、それはどうでしょうか。もしそういうことがあるとすれば、みなさん難しい話が苦手だからとかでしょうか?」

 

 

 

 ──エレノアは、みんなにとっても、エギルにとっても、良き理解者のような存在だから。

 

 

 

「まあいい、それじゃあ、一緒について来てくれ」

「はい、どこまでも」

 

 

 

 隣にそっと寄り添うエレノアと共に、エギルは階段を上っていく。

 そして王城の最上階へ到着すると、待ち人はエギルを見てニヤリと笑う。

 

 

 

「ふむ、出迎えてくれるとはありがたいのう」

「出迎えじゃないんだがな」

 

 

 

 薄紫色の髪を胸元まで伸ばし、黒の生地に赤い糸の刺繍をあしらったドレスを纏う少女──レヴィアは、エレノアに視線を向ける。

 

 

 

「つれない男じゃなお主は。我とお主の二人だけで話せるかと思ったのだが……?」

 

 

 

 邪魔だというよりも不思議そうな眼差しを向けられたエレノアは笑顔を崩さず答えた。

 

 

 

「エギル様と女性を二人っきりにしてしまうと、またわたくしたちのような妻が増えてしまいますからね。第一夫人として、わたくしは立ち会わなければいけないんです」

 

 

 

 その言葉をキョトンとした表情で聞いていたかと思うと、レヴィアはケラケラと笑い出した。

 

 

 

「アハハハッ! そうかそうか、それでは、お主も交えるとしようか」

「レヴィア、ついて来てくれるか?」

「うむ、我はどこでもいいのじゃ。それに昨夜は暗くてあまりよく拝見できんかった、お主らが作り上げた王城をよく見てみたいからのう」

 

 

 

 レヴィアはすんなり後ろをついて来る。だが時折、視線だけを動かして、廊下のあちこちを見ていた。

 

 

 

「さあ、入ってくれ」

 

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