裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「なんじゃなんじゃ! 我はお主らの敵ではあるが、これまでもお主らに手を貸したではないか。それなのに我のことを信じられんと言うのか!?」
「いえ、そういうわけではないのです。……ただ、本当に見るだけなのか疑問に思っただけです」
「……ふむ、お主らが不思議に思うのも無理はないが、我は本当に見るだけで十分なのじゃ」
ただ、とレヴィアは悲しそうに俯きながら言葉を続けた。
「……見たら何かが変わる、いや、変えてしまうかもしれんがのう」
そこまで聞いて、エレノアは判断を委ねるといった感じでエギルに視線を向けてくる。
要するに、レヴィアは神の湖を見たいのだろう。だが、それは研究者や科学者が抱くような興味や探求心からくるものではなく──何か別の考えがあるのだろう。
いずれにせよ、扉の向こうに何があるのか、そして何が待っているのか。それはレヴィアも知らないようだった。
けれど、エギルはレヴィアの言葉を簡単には信じられない。
それは彼女が闇ギルドに所属しているからだ。レヴィアはエギルたちの仲間ではない。裏切るだろうから、というよりも、そもそも仲間じゃないから、神の湖に辿り着いた時、一体どんな行動に出るかわからない。
「ああ、わかった」
仲間じゃないから疑うしかない。
仲間じゃないから警戒するしかない。
そもそも絶対的な信頼関係があるわけではなく、これまではたまたまお互いの利害が一致しただけのこと。
だから疑われることも、警戒されることも、彼女はすべてわかっているはずだ。
本来ならこんな怪しい話は受けない方がいい。だけどレヴィアの助言によってエギルはクロエとシロエを殺さずにすんだ。そして、王国に帰還するときにドラゴンまで貸してくれた。
利害が一致している時、彼女はエギルの邪魔は一切していないのだ。だから今回だけは特別に彼女と行動を共にする。
その先どうなるかわからないが、今はそうするのがいいだろう。
──信じて裏切られたほうがいい。
あの日からずっとそうしてきた。であればレヴィアに対しても、この気持ちを持ち続けてもいいのではないか。
それに彼女を同行させて神の湖を前にしたら、何か湖に関する新たな情報を引き出せるかもしれない。
「だが神の湖へと続く道は、不思議な力で封印されていて開くことができない」
「そうであろうな。で、その封印を解く方法は見つかったのかのう?」
「ああ、だから俺たちは……クロネリア・ユースに向かおうと思う」
そう伝えると、レヴィアはピクリと眉を反応させた。
「……おぬし、いいのか? その場所にお主が行っても」
「……知ってるんだな、俺の昔のことを」
「うむ、風の噂程度にはのう」
「そうか。まあ、構わない。あそこへ行かないとこの先へは進めない。なら俺は、みんなと行くさ」
あの頃のエギルには、側で支えてくれる者は少なかった。だけど今では沢山の仲間が──大切な存在がいる。
そしてエギルの言葉を受け、レヴィアは「ふむ」と相槌を打って立ち上がる。
「では、我もお主らに同行するとしようかの」
「なに?」
「そのクロネリア・ユースにもかつて、さっき話したような異常に気温が高くなる時期があったそうじゃ。そしてそこは元は死地。もしかしたらその王国を作った者は、神の湖を手にしたのかもしれぬ」
「手にしたということは、神の湖を実際に見たということか?」
「おそらくは、じゃ。そこが冒険者の街と呼ばれるほど、実力のある冒険者が集まったのも、何か関係があるかもしれんのう」
レヴィアはそう言うと部屋の扉へ向かって歩き出す。
「出発は早い方がいいじゃろ? 明日の朝、またここへ来る」
バタンと扉が閉まると、エギルとエレノアの二人だけになる。
「……エギル様、あまり良い流れではないですね」
「ああ、そうだな」
今まで普通の冒険者として日銭を稼いでいたエギルが、いつの間にか、自分でも気付かないうちに世界の秘密に触れてしまっているようだった。
──引き返すなら今だ。
大切な彼女たちを守りたいなら、これ以上は先に進むべきではないのだろう。
しかし、
「サナとルナの母親を助けるためにもそこへ行くしかない。それに、この秘密を解き明かさないかぎり、おそらくこの王国は永遠に狙われ続ける」
もしかしたらもう、立ち止まれないとこまでエギルは足を踏み込んでしまっているのかもしれない。
「みんなを集めてくれ。明日、誰が俺と一緒にクロネリア・ユースに向かうか決める」
「わかりました。では」
エレノアは軽く頭を下げると、部屋を出て行く。