裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
見晴らしの良い平原に、王国『クロネリア・ユース』が姿を現す。
このフェゼーリスト大陸には、冒険者によって築き上げた冒険者のための国がいくつか存在する。その代表格と言えるのが、エギルたちが朝早くから馬車に乗って向かっている『クロネリア・ユース』だ。
元は死地《デッドスポット》であったこの場所を、冒険者たちが魔物を排除して王国を建てた。
クロネリア・ユースを築いたのは──エギルと同じくクエストを引き受け、この土地に居座っていた魔物を討伐した冒険者なのだろう。
ただここで暮らす住民すべてが冒険者というわけではない。
冒険者の使う武器や防具を作る職人もいれば、冒険者に食事を提供する料理人や長期滞在する外部の冒険者のための宿屋もある。一番の特徴は政治も経済も冒険者を中心に回っており、貴族階級が存在するような王政ではないということ。
「……冒険者カードを」
エギルたちを乗せた馬車がクロネリア・ユースに入る門へ続く橋を渡っていると、愛想の悪い門兵が現れた。その男は馬車の窓に向かって手を出し、エギルにカードを差し出すよう催促している。その目は微かに睨みつけてるような気がした。三人いる門兵の服装はそれぞれ違っている。おそらく彼らは冒険者なのだろう。
エギルは門兵に冒険者カードを提示する。
「ああ」
冒険者ランクを確認したのだろう、愛想の悪い門兵の眉が少しだけ上がった。
「……どうぞ」
入国を許され、再びガタガタと音を鳴らして馬車は進む。
「意外とあっさり通してくれましたね。外から来る者は、もう少し警戒されるかと思いました」
エギルの隣に座るエレノアが不思議そうに声を漏らす。
「あれこれ聞かれると思ったんだが、それもなかったな」
「ええ、エギル様のランクを見て驚いたのでしょうか」
「驚いた……か」
エギルは後ろを振り返る。
通してくれた門兵はまだこちらを見ていた。少し不気味に感じられたが、エギルは首を横に振った。
「まあいい。それよりフィー、尋ね人のいる場所はわかるか?」
後ろに座っているフィーに声をかける。
「……うん、【アレ】が住んでる場所を変えてるとは思わないから、たぶんわかる」
「そうか」
「ただ、全員で訪ねるのは止めておいたほうがいいかも。難しい性格だから」
「そうか。だが……」
すると、華耶はクロエとシロエの頭を撫でる。
「エギルさん、私とサナルナちゃんとシロクロちゃんは、宿屋で少し休んでるわね」
華耶の言葉にサナとルナは驚き、「でも……」と口を開くが、華耶は二人に優しく微笑む。
「ここに来るまでの間、ずっと顔が強張ってたわよ……。そんな状態で話を聞いても、頭に入ってこないんじゃない?」
「でも、お母さんを助けてくれるかもしれない人に、あたしたちがお願いしないのは……」
「そうね。だったら、まずはエギルさんたちに任せて、それからお礼をしましょう」
サナとルナはここへ来るまでの間、ずっとそわそわしたり、落ち着きがなかった。
母親の病気が治り、また前のように一緒にいられる可能性が出てきたのだから無理もないだろう。
二人は悩み、エギルに視線を向ける。エギルは二人に笑顔を向ける。
「華耶の言う通り、まずは俺たちで頼んでくるから、二人は待っててくれ。ずっと気を張ったままだと疲れるだろうしな」
そう伝えると、二人は申し訳なさそうに頷いた。
「わかった。あたしたちは待ってる。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
華耶はエギルに小さな声で言う。
「これで、良かったのよね?」
「ああ、すまない。本来は俺が言うべきなんだがな」
「いいのよ。それに……絶対に治せるわけではないのだから、二人を同行させるのは避けたいわよね」
「……そうだな」
あくまで可能性がありそうだからクロネリア・ユースに来たのであって、絶対に治る、と断言できるわけではない。であれば、もしものことを考えて二人にはある程度見通しが立ってから伝えるべきだろう。
「私のほうで少しでも緊張をほぐしておくわ。だから、エギルさんはお願いね」
「わかってる。可能性があるなら、何があっても頼んでみる」
二人の笑顔が見れるなら。エギルはそう思い、安心させるように他の女性たちと会話するサナとルナに視線を向ける。
「おねえちゃん、わたしたちも?」
クロエとシロエはセリナを見る。
「二人も華耶さんたちとお留守番しててくれる?」
セリナにそう言われると、二人はうすぐに納得してくれたみたいだ。
「それじゃあ俺とエレノア、それにセリナとフィーとレヴィアで会ってくる」
フィーが全員で訪ねないほうがいいと言ったことから、どうしても行く人数は絞る必要があった。華耶の機転によって割とすんなり人数を減らすことができて良かった。
そしてエギルたちは華耶たちと宿屋で別れ、フィーの案内について行く。