裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「はっ? 何を言っているんだ、俺が主導権を握っていただろ」
当事者はそう思っていた、だけど第三者の見方は違うらしく、サナは、はぁー、と深々とため息をついた。
「最初から最後まで見てたけどさ、エレノアさんが超が付くほどのドMだって知ってるよね?」
「ま、まあな。だがそれがどうした?」
「最初から最後まで、エレノアさんがそうして欲しいように誘導されてたでしょ?」
「いや、そんなことは……」
「それに、エギルさんはすっごいドSになれると思うんだけど、いまいち足りないんだよね。もっとこう、なんていうのかな……ガツガツ感がないんだよね」
「ガ、ガツガツしてるだろ!」
「もー、大声出さないでよ! まだ万全の体じゃないんだからさ」
「あっ、悪い……」
「もう、そうやってすぐ謝る。エギルさんは顔は男らしくて少し怖いけど、本質的な部分で優しいからなぁ……そういうプレイ中にも優しい部分が出ちゃうんじゃない? 例えば──もっと激しくしたいけど痛いかな? とか、もっと強引にしたいけど嫌がられないかな? とか思ってない?」
「……」
「図星でしょ?」
何も言えない、それは事実だからだ。
すると、サナは上半身を起こして、手のひらの上でポンと手を叩く。
「そうだ! 魔物との戦い方を教えてもらったから、エギルさんにいいこと教えてあげようか?」
「いいこと?」
「昨日見た感じだと、たぶん、まだエレノアさんも初級編のSMプレイしか試してないと思うんだよね。強引にだとか、無理矢理にだとか。だから、エギルさんから中級編を試してみるんだよ」
「中級編?」
何を言い出すんだ、というより、なんでそんなことを知ってるんだ?
「サナは、そういう経験があるのか?」
「ん、ないよ。ただねぇ、あたしの好きな書物にはエッチィのが一杯書かれてるから、それで知ったんだよ」
「書物?」
物語を文字と絵で表現した娯楽だったものが書物と呼ばれていたが、エギルはそういった娯楽品を見たことがない。
そしてサナは、
「そう、エギルさんにも一度”リオネ先生”の『ご主人様は絶倫狼』って書物を見てもらいたいよ」
「なんだそのリオネ先生ってのは」
「リオネ先生は有名な作家さんだよ。色々な作品を出してるの」
「そう、なのか……」
「それじゃあ、あたしがエギルさんにSMプレイを教えてあげるよ」
「は、はあ……」
流されるまま、サナの教えは長々と続いた。
そのどれもこれもが、エギルの知らなかったことばかりだったが、女性というのは男性よりも性行為に詳しいものなのか? という疑問の方が強く印象に残った。
そしてすべて聞き終わると、
「うんうん。これで戦い方を教えてくれたお礼はできたかな……」
そう言って、サナは立ち上がった。
「あたしも水浴びしてくるかなぁ。エギルさんと二人でいてもつまらないし」
「おい、それはどういう意味だよ」
「ふふっ、冗談冗談──ねぇ、エギルさん」
着替えを持ったサナは、テントの入口まで歩いてから、こちらを振り返る。
「……もし、あたしが悩みを抱えているとしてさ、その悩みの限界を迎えたら──その時は、あたしたちのこと助けてくれる?」
「……いきなりどうした?」
「いやいや、もしもの話だからね? 真面目に考えないで答えてよ」
笑ってふざけていたが、瞳は真剣だ。だからエギルも、彼女の目を見て真剣に答えた。
「もしサナがどうしようもなくなった時は、どんなことでも、俺が助けてやるよ」
そう答えると、ははっ、と笑ってサナは入口の布に手を付けた。
「そんな事がないことを祈るよ。じゃあね」
「ああ、いってこい」
悲しそうな笑顔をしたサナを見送ると、エギルは一人テントで待つ。
――そして次の日の朝、サナとルナの姿はキャンプにはいなかった。