裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「それは、その奴隷具に込められた魔術の術式を理解したから解除できたのよ。たいがい、術式さえ解読できれば、時間はかかるかもしれないけど解除することができる。その扉にかけられた封印も、おそらく解呪の要領で可能だと思う」
「そうか、助かる」
「だけどそうね、その母親の呪いを解くのは少し厄介ね」
「どうしてだ?」
「それは人が生み出した魔術や呪いじゃなくて、モンスターが付与した呪いよ。モンスターの呪いには魔術を使う時に必要な決まった術式なんていうのはないの。つまり──」
「正真正銘の呪い、じゃな」
レヴィアの答えに、ソフィアはうれしそうな顔をして、今度はレヴィアの頭を撫でる。
「ええ、そうよ。賢い子ね。好きよ、あなた。愛でてあげる」
「うわ……」
それを見てセリナは思わず引いてしまう。その反応を見とがめられ、ソフィアから鋭い眼差しを向けられる。
そしてソフィアは咳払いをする。
「コホン。だけどその母親については、どんな魔物に、どんな呪いをかけられたのかを把握して、それを解呪するのに必要な薬を調合すればたぶん可能よ」
「薬を……?」
「ええ、そっちの方が早いわ」
「そんなことできるのか?」
「……ソフィアは変態だけど天才だから」
フィーの言葉に、後ろから抱きしめているソフィアはまた嬉しそうに頭を撫でた。
「褒めてくれたの? 嬉しいわ、愛でてあげる」
「……褒めてない」
「それじゃあ頼めるか? 依頼金なら──」
「──結構」
ソフィアは右手を前に出して止める。
「可愛いフィーの頼みだし、それに、その母親を想う双子も可愛い子なのでしょ? だったらいいわよ、愛でさせてくれればお金は取らないわ」
「愛でさせるとは言ってないのだが……まあ、受けてくれるならいい。ありがとう」
後でサナとルナには謝っておこう。エギルはそう思い彼女に感謝を伝えると、すぐにでも出発してくれることになった。支度をしているソフィアにエギルは世間話をする。
「そういえば、ソフィアも冒険者なのか?」
「私? ええ、そうよ。まあ、この街の連中みたいにどこへも旅しない冒険者もそう呼べるならね」
「そういえば、俺はここが王国になってから初めて来たんだが、昔からこうなのか?」
「こう、とは?」
「ここは冒険者が作った王国で、住民たちも冒険者が多いと聞いていたんだが、俺にはここの連中が現役の冒険者には見えなくてな」
「冒険者らしくない、ってことね?」
「ああ、そうだ」
「そうね、ここの冒険者連中は昔からこうよ。見た感じ、あんたがこの子たちとそこの無駄に胸ばかり大きい女たちのリーダーっぽいけど、こういう冒険者だけの王国に来るのは初めて?」
「ちょ、胸ばっかって!」
セリナが反発すると、ソフィアは鼻で笑う。
「本当のことじゃない」
「そんなこと言ったら、フィーだって大きいわよ」
「……え」
ソフィアは固まると、両手はフィーの胸元へとゆっくりと伸びていく。だが、その手をフィーははたいた。
「触ったら嫌いになる」
「……ごめん。まあ、フィーの胸が大きくなるわけないわよね。あんな脂肪だらけになるわけないわ。ええ、そうよ」
勝手に決めつけるソフィア。だがエギルは、確かにフィーの胸は小さくはないと思いながらも、脱線してしまった話を戻す。
「ところで、俺はこれまで冒険者が作った王国に行ったことはないんだ」
「やっぱりね」
そう言ってソフィアは言葉を続ける。
「ここへ来た冒険者はみんな、最初は「頑張るぞ!」って感じだったわ。だけどいつからか、この街の体たらくっぷりに染まって、冒険をしなくなったわね」
「冒険をしなくなった、か……それじゃあまるで、普通に暮らす連中と変わらないな」
「冒険者がさして多くなければ『他に仕事がないから冒険者として頑張ろう』ってなるけど、全員が冒険者であれば『クエストを受ける以外にも働き口があるから他の仕事をしよう』ってなるのよね。名前だけは冒険者だけど、本当の冒険者じゃないわね。──それに、ここは働かなくても稼げるから」
「働かなくても稼げる?」
その言葉を不思議に思って問いかける。
「ええ、この国では優秀な冒険者は何もしなくても金が入ってくるのよ。だから冒険者として一旗揚げようって思う人は絶対にここへ来ては──いいえ、冒険者だけが暮らす国に行っては駄目なのよ」
「なぜ何もしなくても金が入るんだ?」
「冒険者には冒険者の等級がある。それは知ってるでしょ?」
「……ああ。冒険者ランクだな」
「そうよ。ここへ来た冒険者は、最初に格付けされるの。そしてその格付けで、クエストをこなさなくても一定額の報酬が貰えるのよ」
「昼間から酒を飲んでいた連中はランクが高いってことか?」
「ええ、その通りよ。私の家に来るまでに、この街で暮らす冒険者を見てきたでしょ? あのやる気のない連中。彼らは高ランクの冒険者たちよ。一方、朝からクエストへ向かってる連中はランクの低い冒険者」
何もせずに報酬が貰えるならわざわざ働く必要はない。だが冒険者ランクが高いからって報酬が貰えるってのはおかしな話だ。
「……強い冒険者を集めて、戦争でも起こそうとしてるのか?」
実力のある冒険者を手元に置きたいから報酬を渡している。それぐらいしか想像できない。しかし、戦争を仕掛けるつもりなら集めるべきは冒険者ではなく兵士だ。そんな馬鹿げた質問を、ソフィアは鼻で笑った。
「さあね。私にはこの街を仕切っている連中の考えはわからないわ。だけど──高ランクの冒険者は時々、あのお城に呼ばれてるみたいよ? そしてみんなずいぶんと腑抜けた顔して戻ってくるわね」
「……腑抜けた?」
「──エギル様」
ふいに、ずっと静かにしていたエレノアに呼ばれた。その表情はどこか真剣だった。
「この街へ入る時に、入り口の門兵に冒険者カードを確認されたのは、この街に入ることのできる者かどうかを確認するためではなかったのではないでしょうか?」
「えっ、エレノア、それどういうこと?」
セリナは不思議そうに尋ねる。
「……俺のランクを確認して、誰かに報告されたか?」
「かもしれませんね」
「あんた、ランクは?」
ソフィアに問われ、エギルは「Sランクだ」と答えると、ソフィアは苦虫を噛んだような表情をする。
「これは少し、嫌な予感がするわね……」
「嫌な予感?」
「ええ、おそらくこの街は高ランクの冒険者を手中にしようとしてるのよ。理由はわからないけど。外から来た冒険者のランクは当然、知りたいところだわ。ねえ、他のみんなは確認されたの?」
「いや、俺が代表で見せて、そのまま通してくれたな」
「そう。当たりね」
ソフィアは膝の上に乗せたフィーを横に座らせて、エギルをジッと見つめる。
「通常、このクロネリア・ユースに入る冒険者に対しては、必ずそのカードを一人一人確認するわ。代表だけなんて有り得ない。だけどあんたのランクを確認して──不要だと思ったのかもしれないわね」
「つまり、この街を仕切ってる奴が俺に接触してくる可能性があるってことか?」
「可能性、じゃなくて、確実に接触してくるわよ。あんた一人か、あんたたち全員にね」
エギルはその言葉を聞いて立ち上がる。
理由はわからないが嫌な予感がした。なにせここは、エギルにとって嫌な思い出が詰まった場所なのだから。
ソフィアの話からすると、このクロネリア・ユースの長──つまりは高ランク冒険者を捜してる者は、ここにいるエギルたち五人だけではなく、サナやルナ、それに華耶やシロエやクロエに接触してくる可能性がある。
そして、宿屋にいる彼女たちはまだこのことを知らない。もしかしたら、もう接触しているかもしれない。
そうなれば華耶たちだけでは対処できないだろうから、なんとか接触は阻止したい。そう思って立ち上がったエギルだったが、ソフィアは落ち着いた様子で止めた。
「すぐに動かない方がいいかもしれないわよ。むしろ、今動く方が危険かもね」
「……それはどういうことだ?」
「ねえ、フィー。あんたたちが来たのは徒歩? それとも馬車?」
「……全員同じ馬車でよ」
「そう。だったらエギルの顔だけ見られた可能性が高いわね」
「他のみんなは見られてないから、俺といなければ何もされないってことか?」
そう問いかけると、ソフィアは頷いた。
たしかに、馬車から顔を出して、冒険者カードを提示したのはエギルだけ。他の者たちは顔を見られていないし、人数すら確認されなかった。
宿屋で別れた時も、誰かの視線を感じることはなかった。
目撃されているとすれば、この屋敷へ向かっている途中か。であれば、この場にいない華耶たちは見られていない可能性は高い。
エギルは腰を下ろし、ため息をつく。
「だったらどうしたらいい? いや、その前に、ソフィアはこのクロネリア・ユースを仕切ってる奴を知ってるのか?」
「名前しか知らないわ。顔は見たことがないの。まあ、王国で言えば王様みたいなもんだからね。私自身、そいつと会いたいなんて思ったことも一度もないけど」
ソフィアは苦笑いを浮かべる。そして腕を組むと、エレノアたちを見る。
「それより、残りの連中はあんた以外の奴が連れてくればいいんじゃない? そしたら、あんたが外に出て目を付けられる心配もないわけだしね」
「……それはそうだが、いいのか? 厄介事に巻き込まれるかもしれないんだぞ?」
もしかしたら迷惑をかけるかもしれない。いきなり押しかけられて強引に勧誘されるわけではないと思うが、それでも、ここに面倒な奴が来る可能性はある。
人を寄せつけないような屋敷に住んでいるのだ。ソフィアは、人と慣れ合うのを嫌うタイプだろう。
少し心配になり、聞いてみると、彼女はため息をつく。
「別にいいわよ。どうせあんたらの頼みを聞くとなれば、いずれそういう、面倒事に巻き込まれることはわかっていたから。あとで他の可愛い子たちも愛でさせてくれればね」
「……エギル、ソフィアは何よりも小さい女の子を愛でるのが好きだから、気にしないで巻き込んでいいよ」
「そうそう、こうしたいだけだからね」
またフィーを抱き上げて膝に乗せたソフィアはそう言いながら彼女の頭を撫でる。
フィーの表情はすこぶる不満げだが、そんなことにはお構いなしといった感じだ。
とその時、ずっと黙っていたエレノアとセリナは立ち上がる。