裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
サナとルナがいなくなってからの四日間、エギルとエレノアはグール討伐のクエストに明け暮れていた。
お互いに複雑な気持ちでクエストに没頭していたが、黙々とクエストに取り組めたので、討伐数も五〇〇体に、エレノアの感覚も戻ったと言えるだろう。
そして全てのクエストを終えると、二人は85万ゴールドの報酬を獲得して、我が家へと帰ってきた。
「このままで良かったのですか、エギル様?」
朝一番、ソファーに座ったエギルにコーヒーを手渡すエレノアは、そのままぴったりと横に座った。
何が良かったのか、エレノアが聞いていることをエギルはすぐに理解した。
「二人が決めたことなんだから、いいんじゃないか?」
「ですが、何も言わずにお別れというのは、少し寂しい気もしますね」
「何も言わずにか……」
──そんな事がないことを祈るよ、じゃあね。
サナのあの時の言葉は、もしかしたら別れの言葉だったのかもしれない。
その時はわからなかったが、きっと、サナはあの時には決めていたのだろう。
「いつか会えるだろ、きっとな……」
としかエギルは言えない。いや、会えたら駄目なのかもしれない。
もし今後会う機会があれば、その時は二人の悩みが限界を迎えた時かもしれない。理由の教えてもらえなかった、悩みの。
二人のことを考えるのは止めよう、そうエギルは思い首を振った。
「それより、今からやらなきゃいけないことがあるだろ?」
「……そうでしたね。わたくしの友人である、セリナを競り落とす」
エレノアの友人であるセリナが奴隷オークションに賭けられるのが、今日の昼だ。
「ゴールドは全部で500万ほど……もし競り落とせなければ──少し手荒だが、力で奪うしかないな」
「えっ、それは駄目です! そんなことをしてしまえばこの街から追放されて、奴隷オークションのある街に入ることを禁じられますよ!?」
奴隷オークションで決定された事は絶対だ。
そもそも、競り落とされた額の三割を奴隷商人は街に支払うという決まりがあるのだから、奴隷オークションなんて施設を取り入れてる街なんて、奴隷の売買で維持できていると言っても過言ではない。
エレノアを競り落とした時だって、エギルが支払った1200万ゴールドという大金は三分割され、奴隷商人が受け取れたのは微々たる金額のみ。
それでも何百万ゴールドという大金は受け取れる、だが奴隷商人は恨まれて殺されることが多い。なので危険を冒してまでするようなことではなく、はっきりいって割のいい仕事ではない。
そして、奴隷を巡っての殺し合いは、奴隷オークションのある街では違反行為となり、それを破った者は、今後一切の奴隷オークションのある街の立ち入りを禁じられる。
それが、奴隷オークションという世界には少ない施設がある街の決まりだ。
「必ず救ってみせるさ、エレノアの友人を見捨てるわけにはいかないからな。言っただろ、愛した女の為なら何でもしてやるってな」
「エギル様は……わたくしに甘すぎです」
「愛したエレノアの頼みだから、仕方ないだろ?」
そう言うと、エレノアは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます……それでは、エギル様にもう一つお願いをします」
エギルは不思議そうに、そのお願いが何かを聞く。
「もし競り落とせたら──セリナもわたくしと一緒に、奴隷として愛して頂けないでしょうか?」
「……それは、一人の女としてか?」
「はい、そうです。もちろん、エギル様の好みもあると思うので無理にとは言いません。ですが、彼女もわたくしと一緒で、帰る場所がないのです。なのでエギル様の女にしてほしいのです」
「……いや、だが、向こうの気持ちもあるだろ?」
向こうが何て言うか──というよりも、そんなことをエギルとエレノアだけで勝手に決めていいことではない。
セリナがエギルのことを無理だと言えば、何の発展もしない──今まで女性に免疫がなかったのに、助けられたからといって好きにさせられる自信はない。
だがエギルの心配をよそに、エレノアはニッコリと微笑んだ。
「わたくしとセリナは付き合いはそこまで長くないですけど、彼女のことはよく知ってます。きっと、エギル様を好きになると思いますよ?」
「どっからそんな自信が生まれるんだ?」
「同じ変わった趣味を持った女性ですからね」
「それは、エレノアと似た性癖ということか?」
「ふふ、どうでしょうか」
「……まあいい。というより、エレノアはセリナとそういう関係になっていいのか?」
「ええ、セリナはとても素敵な女性ですからね」
「エレノアは嫌じゃないのか?」
そう言うと、エレノアは首を傾げてニッコリとした。
「まあ、妬くとは思いますよ? 大好きな人ですから、もちろん。ですが、わたくしはエギル様を一人占めするつもりはありません。他の方を抱いて咎めるようなことはしません──なにせ奴隷ですから」
「だが──」
唇を塞がれた、エレノアのふっくらとした唇でだ。
「誰かを抱いて、誰かが幸せになるということは、他の女性もエギル様の魅力に気付いたということです。沢山の人に旦那様の魅力を知ってもらえるのは、わたくしとしては嬉しい限りですよ」
「エレノアは、なんていうか……変わってるな」
「ふふっ、これが本来の奴隷というものでしょうか?」
エレノアを膝の上に乗せて、何度もキスをした。
細い腰に手を回し、体を撫で回す。
「まあ、全ては競り落としてからだな」
「はい。この続きもですね」
二人は奴隷オークションへと向かった。
少し薄暗い一室。その扉を開けると、金髪の彼は子供っぽく声を漏らした。
「ふへぇ、ここが奴隷オークションっすか」
「ハボリックが初めてだったとは驚きだな」
奴隷オークションに行きたいっす!
ここへ来る途中でハボリックに出会い、どうしても奴隷オークションに行きたいと言われたので連れてきた。
そして段になった客席の入口側の椅子に座って、オークションが始まるのを待った。
「旦那は何回も来てるっすか?」
「俺も七日前に一度来ただけだな」
「そうなんすね。それにしても、ゲッセンドルフさん遅いなぁ」
「はっ、ゲッセンドルフも来るのか?」
「えぇ、というより、元々はゲッセンドルフさんとクエスト受注所で待ち合わせしてたんすよね」
「……お前、あいつにここに居ること伝えたのか?」
エギルの問いかけを受けて、ハボリックは口をポカンと開けて遠くのステージを見た。
「忘れてたっす。どうしましょ」
「俺に聞かれてもな……誰かにここに来る事は伝えたのか?」
「えぇ、旦那と奴隷オークションに行ってくるって、クエスト受注所のみんなに伝えたっす。あっ、だったら大丈夫っすね」
「……奴隷オークションに行くってのを、職場の連中に堂々と伝えるお前の神経は大丈夫だとは思えないがな」
ハボリックは抜けてる、というよりもかなり馬鹿だ。
このまま話を続けていればため息しか出ないと思ったエギルは会場を見渡す。
奴隷を競り落とそうとしてる客の数は前回と同じくらいで、ステージはこの世界では珍しい色付きの光で照らされている。そして、会場を見つめる客の表情は、後少しでオモチャを買ってもらえる、ワクワクする子供のようだった。
「エギル様、あの方です……」
エレノアに言われて、左下の客席に視線を移す。
そこにはこちらを睨みつけている爽やかな青年と、執事だと思われる老人がいた。
「あれが、セブレスチャフ伯爵とやらか?」
「……あの若い方がそうです。おそらく貴族だと思われます」
「なるほど、金持ちか」
親の金で奴隷買いをしているかどうかはわからないが、あまり好きになれないタイプなのは間違いない。
隣の老人が執事だというエギルの予想も、おそらく当たってるだろう。
そんな中、低く息の荒い声が響く。
「おい、ハボリック! なんでクエスト受注所で待ってないんだよ」
「あっ、ゲッセンドルフさん、こっちっす」
少し苛々とした表情のゲッセンドルフは、ハゲて広くなったデコに付いた汗を拭きながらこちらへと来ると、怒っていた表情を一変させエギルに頭を下げる。
「お久しぶりです、エギル様」
「久しぶりだな。エレノアの隣に座ってくれ」
「はい。エレノアさん、隣に失礼しますね」
「あっ、はい」
突然に声をかけられたエレノアはビクッとする。
そして左端に座るハボリックと、右端に座るゲッセンドルフの言い合いは、エギルとエレノアを飛び越えて行われる。完全にハボリックが悪いのだが、ハボリックはゲッセンドルフには何故かいつも強気だ。
「あの、エギル様」
すると、エレノアは不思議そうな表情をエギルに向けた。
「どうした、エレノア?」
「どうしてお二人は、奴隷であるわたくしに敬語を使うのでしょうか?」
「ん、どうしてって……」
「そりゃあ、エレノアさんは旦那の奥さんだからっすよ」
「わたしたちはエギル様にいつも面倒を見てもらってますからね。そんなエギル様に大事にされてるエレノアさんに敬語を使うのは、当たり前のことなんですよ」
「でも、わたくしは奴隷ですから……」
エレノアが申し訳なさそうに言うと、ゲッセンドルフは笑って答えた。
「奴隷だとしても、今はエギル様のパートナーですから。だから、わたしたちはちゃんとした接し方をさせてもらいますよ」
「そうっす、そうっす」
「ですが……」
「まっ、こいつらは変なとこで律儀なんだよ。だからあんま気にするな。それより──始まるぞ」
会場を照らしていたライトが一気に消灯すると、ステージのみが照らされた。
『お待たせ致しました、これより奴隷オークションを始めさせて頂きます!』