※この作品はR-18です。

裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る   作:柊咲

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第30話

 

 

 エレノアはエギルに何があったのかを理解できなかった。だがうっすらと鼻をかすめる香りを感じて、エギルに何が起こってるのかをすぐに理解した。

 

 

 

「ソフィアさん!」

 

 

 

 だから彼女の名前を呼んだ。

 エギルの身に何かあった場合、ソフィアは術式を読み取り、エギルにかけられた呪いを解除する。

 

 ──もしそれが不可能だった場合、新たなる呪いにて上書きする。

 

 それが予め用意していた対処法だった。だからそれにすぐさま反応したソフィアは両手を前に出して、術式を唱える。

 

 

 

「術式を唱えないで発動するなんて桁違いよ、ほんと!」

 

 

 

 術式を読み取るのであれば、本来、術を発動させている金(・)色(・)の(・)巻(・)き(・)髪(・)のルディアナに向けられる。しかしソフィアの手のひらが差す方向はエギルだった。ということは術式のない、ソフィアのこれまで得た知識では測れない能力ということだろう。

 咄嗟の判断で、ソフィアはエギルへ新たなる呪術を付与しようとする。

 だが、

 

 

 

「危ないッ!」

 

 

 

 フィーは何かを察して地面を蹴り宙を舞う。そして蹴り飛ばしたのは一本の矢だった。

 どこから?

 そう思ったエレノアは辺りを警戒する。

 

 

 

「ふむ、囲まれてるようじゃな」

 

 

 

 レヴィアが言うように、この王城のロビーに、エレノアたち以外の人の気配が生まれた。

 十、二十、三十……。数え切れないほどの人数が突如集まってきた。さっきまで誰もいなかったはず。いつからそこにいたのか。

 すると、レヴィアは「やはりか」と口を開き、ルディアナを見る。

 

 

 

「これも、お主の力かのう?」

「あら、どうしてでしょう?」

「お主の能力は香りで相手を操る、ではなく──匂いで対象に幻を与える──なのじゃな? ここにいるやつらも、幻に騙されているのじゃな」

 

 

 

 ピクッと眉を反応させるルディアナ。

 エレノアを含めて誰もが理解できなかった。

 

 

 

「レヴィアさん、それは……?」

「おそらくエギルは香りで魅了させられていたわけではない、ということじゃな。そして、幻に囚われておったのはエギルだけではなく、ここにいる我々全員もじゃよ」

「わたくしも、ですか……?」

「うむ、お主の場合はあの女と会話して、脳内に幻を埋め込まれたのじゃ。『匂いで相手を魅了する』という。それを信じ込んだお主が我々にその情報を伝え、我々はまんまとその嘘を信じ込まされたのじゃ」

「じゃあ」

 

 

 

 セリナは驚きを隠せずにいた。

 

 

 

「あの女の能力がSランク職業の固有能力だって、私たちは勝手に思い込んでたってこと!?」

「うむ、エレノアから聞いた話をエギルは信じる。だから、お主はエレノアに接触したのじゃな?」

「ふうん、そう……勘の鋭い子ね」

 

 

 

 ルディアナは素直に感心していた。

 エレノアはそれらを聞いて思う。

 もしレヴィアの仮説が正しければ、自分がエギルに伝え、全員に伝えた。エギルもみんなも、エレノアの話を疑わない。それを知っていたとするなら、たった一人に幻の記憶を与え、それを全員に浸透させることは容易い。

 それに、

 

 ──その香りでエギル様を魅了させた、ということですか?

 先にそう言ったのはエレノアだ。決してルディアナから言ったことではない。

 どうしてそのように察したかなんて……。

 言えるのは、甘い香りを感じた瞬間、なぜだかその考えに至ったということ。

 

 

 

「それが、わたくしに与えられた幻……」

 

 

 

 金色の髪を撫で、甘い香りを発する。それが能力の発動条件だったのであれば納得はできる。あの時も同じ行動をしていたから。エレノアは自分の警戒心のなさを恨む。

 

 

 

「ですが、わかったところでもう遅いというのは、わかっていますでしょ?」

 

 

 

 ルディアナの声に応えるように、エレノアたちを取り囲む覇気のない冒険者たち。一瞬にして囲まれた。それにエギルは固まったまま動かない。

 

 

 

「レヴィアさん、では彼女の能力は」

「……幻術師《ミラージスト》、であろう」

「はあ!? そんなわけないでしょ!」

 

 

 

 ソフィアは慌てた様子で、エギルへ呪術を付与し続けたままレヴィアに伝える。

 

 

 

「幻術師はBランク職業。幻を見せられる相手は一人程度だし、人の思考を操る能力なんてないわよ!? ここまで大人数に幻を見せるのは──」

「Sランク職業に匹敵する能力……薄々、怪しいと思っておったのじゃ。エギルを幼い頃から魅了していた、操っていた、幻を魅せていた。それなら、あやつはいつからSランク職業になっておったのか、とな。──お主」

 

 

 

 レヴィアはルディアナを睨みつける。

 

 

 

「その力、どこで手に入れた? 普通に手に入る力ではなかろう」

「……」

「──神の湖で、いったい何を得た?」

 

 

 

 レヴィアの視線を受けたるルディアナは、先程までの笑顔から一変、苛立ちを浮かべ小さく舌打ちをした。

 

 

 

「……どうしてよ」

 

 

 

 レヴィアの問いかけが核心をついたようだった。

 

 

 

「お主の職業である幻術師はBランク。その効力は対象全員の自由を奪うほどのものではない。──とすれば、お主の職業はBランクではなく、Sランク職業であり、我やエギルが知らない未知の職業と考えるのが正当であろう」

「だったら──」

「じゃが、エギルに見た先導者の器と同等の輝きを、お主からは感じられぬ。であれば、お主のその力は紛い物であろうと、そう思ったのじゃ」

 

 

 

 レヴィアの言葉に、みるみるうちに表情を歪めていくルディアナ。

 

 

 

「……紛い、物……このわたくしを──お前も、私を蔑むのか!?」

 

 

 

 

 そして、キッとレヴィアを強く睨みつける。

 

 

 

「やり直す……Sランク冒険者のエギルを手に入れ、あの男から開放され、私が築き上げてきたこの楽園で再びやり直す──この日のために、私はあの男の奴隷としてずっと堪えてきたのよ」

 

 

 

 ルディアナは壊れたようにぶつぶつと呟く。

 人が変わったように言葉を続けるルディアナに、レヴィアは問いかける。

 

 

 

「あいつとは、お主に力を与えた者かのう?」

「あいつは……。私を蔑んで、私を利用しようと……」

 

 

 

 そこで言葉を止めたルディアナは、不意に込み上げてきた笑いを隠せずにいた。

 

 

 

「ふふっ……利用されたフリとも知らず、あいつは……。だけどこれでお終い。私(・)をこれまで利用してきたあいつを、今度は──わ(・)た(・)く(・)し(・)が利用する。……だから絶対に邪魔させない。わたくしはやり直すのよ──この聖力石の力で!」

 

 

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