裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
奴隷オークションは淡々と始まった。
値段の安い者から競り落とされ、そして客と奴隷が消えていく。
「……見てるのは、辛いですね」
エレノアはそう呟いた。
「嫌だったら外で待っていていいぞ?」
元奴隷であるエレノアが辛い気持ちになるのは当たり前だ。もしかしたら、セリナのように自分の知ってる者だっているかもしれない。
だが、エレノアは首を横に振って、エギルの手をギュッと握った。
「いえ、わたくしがお願いしたことですから……最後まで、見届けさせてください」
「無理はするなよ」
エレノアが頷くと、再び視線を前に移す。
すると、ゲッセンドルフが腕を組みながら言う。
「まあ、エレノアさんが辛い気持ちになるのもわかりますが、この逆バージョンもありますからね」
「逆バージョン、ですか?」
「えぇ、男が売られる奴隷オークションで、客のほとんどは女です。だから被害にあってるのは女だけではないのですよ」
「そう、なんですね……」
「男も女も、結局は同じ趣味の奴がいるってことっすねぇ」
ハボリックは首を横に振って、やれやれといったポーズをした。
そして、奴隷オークションは進み、
「エギル様、セリナです」
目的の女性の番になったようだ。
視線を前に移すと、そこには桃色の髪の女性が、奴隷オークションの為だけに着せられた、透明感のある水色のドレスを着て立っていた。
『さあ、本日も残すところ三人になりました』
「彼女が、セリナなのか?」
「はい」
桃色の髪を輪郭に沿わせたショートカット。少し強気な印象を与える目尻が上がった桃色の瞳で、エレノアのような大人っぽさを持ちながら、可愛い顔つきだ。
だが周囲を威嚇するような眼差しをしてるので、少し気の強そうな性格に感じる。
背丈は一六〇とエレノアと同じくらいだろうか、遠くてはっきりとはわからないが、先程から喋っている者の隣に立つと高身長なのがわかる。
そして、この場を取り仕切る男が手を上げ、オークションが始まった。
『では、まずは30万ゴールドから参りましょう!』
「35万!」
「40万!」
一斉に会場から声が響く。そして、
「100万だ!」
一気に跳ね上げたのは、セリナの元主であるセブレスチャフだった。
そしてセリナは、セブレスチャフと目を合わせるとビクッと体を震わせて、強気な表情は一瞬にして涙目に変わった。
「セリナ……」
安心させてやりたい。セリナも、エレノアも。
だからエギルは序盤から勝負を仕掛けるように声を張り上げる。
「150万!」
エギルの声と共に、会場中がどよめいた。
少しずつあげるつもりはセブレスチャフにもないだろう。だからエギルは出し惜しみせず攻める。
自分はお前よりゴールドを持ってるんだ! そう伝えるような宣誓の攻撃。
──だが。
「300万だ!」
「──っ!」
ドヤ顔でセブレスチャフは手を上げて倍の額を提示した。
300万、エギルの持っている手持ちは残り200万。
「350万!」
「ふっ、400万だ!」
完全にエギルとセブレスチャフの争いになっていて、周りの者は後退するように、二人の争いを見ていた。
他が関与してくれないのは助かる。だが、
「……410万」
「450万!」
セブレスチャフの提示する額がおかしい。
隣に座る3人からは心配する声が漏れる。
「……旦那、あいつ下りるつもりないっすよ?」
「もう、所持金が無くなってしまいます……エギル様」
「けっ、親の金ですね、ありゃあ」
なんでそんなに攻めてくる? 幾ら持ってるんだ? 幾らまで出せるんだ? どうすれば勝てる、あいつの手の内がわからない。
色々な憶測が脳内を駆け巡ると、エギルの額と背中からは気持ちの悪い汗が流れていた。
こんなことなら、もっと金を残しているんだったなと、今更になって後悔してしまった。
──村を救ってくれて、ありがとうな。
ふと、昔に自分が言われた言葉が響く。そう、これは自分の考えで行った事だ。無駄遣いなんかじゃない。決して違う。
「……500万」
エギルは手持ち全てを提示した。
頼む、決まってくれ、という願いを込めて。
「──ふっ」
だが、セブレスチャフとの座る距離はかなりあるのに、彼が鼻で笑ったのがはっきりと聞こえた。
まさか、
「600万!」
「……嘘、だろ?」
そんな額はない。エギルにはもう戦えない。
その瞬間、エレノアの両手が触れた。
「エギル様……仕方ないです」
「仕方ないって、だが……」
エレノアは涙目でそう言った。
助けられる者もいれば、助けられない者もいる。
どちらか取れば、どちらかを失う。
そんなことはわかってる。それでも、エギルが今までのクエストで手に入れたゴールドを全て残していれば助けられた。
だがそうすれば……。
「エギル様には感謝してます。だから自分を責めないでください」
ポロッ、ポロッと横を向いた彼女の涙が手に落ちる。
こういう悲しい表情をされるのが嫌だから、エギルはずっと頑張ってきたんだ。
沢山の人に喜んでもらいたいから、エギルは人に尽くす生き方をしてきたんだ。
なのに、本当に喜んでもらいたい女を泣かせてしまった。
『えっと、他にいませんか?』
エレノアがエギルの手をギュッと握る。
だが、エギルはその握られた手を握り返すことができなかった。
もう、負けたんだ。
「──650万!」
シーンとした会場に声が響いた。