裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
エギルは抱えた頭を上げてステージを見る。司会者はこちらを見てる。客も──セブレスチャフも。
だがエギルじゃない。
そして、全員がエギルの右側を見ていた。そしてエギルも、右側を見た。
「まだ戦えますよ。エギル様」
立ち上がったゲッセンドルフは、エギルに親指を立てていた。
エギルはゲッセンドルフが何をしたのかわからなかったが、次のやり取りを聞いて何をしたのかを理解できた。
「……チッ、700万!」
「750万!」
セブレスチャフが50万ゴールドを上乗せして伝えると、すぐさまゲッセンドルフが続いた。
「お、お前、なにしてんだよ?」
「何って、エギル様は彼女を競り落としたいのでしょう?」
「いや、そうだが……なぜお前が賭けてるんだ?」
「エギル様は500万は持ってるみたいですからね。私も全財産の500万までは出せますよ」
そう言ってから、ゲッセンドルフは笑った。
「とりあえず──1000万までは勝負しましょう」
「いや、だから出してくれる理由が──」
そう言うと、セブレスチャフは800万とコールした。
そしてゲッセンドルフは大声で850万とコールして、エギルを見て笑顔を作る。
「勘違いしないでくださいよ? これは投資ですからね」
「……投資?」
「えぇ、投資です。エギル様にはいつも助けてもらってますからね。いつも、クリアできないクエストに助っ人として手伝ってくれたり、バックに付いて情報屋としての仕事がしやすいようにしてくれたり──だからこれからも私を助けてくださるように、エギル様に助けてもらおうっていう、私のずる賢い投資なのですよ」
「お前……」
「んじゃ、自分も投資しますかねぇ」
と、左に座るハボリックは頭の後ろで腕を組んで言った。
「俺も旦那には貸しを作りたいっすからねぇ」
「お前まで……なんでだよ」
「だって俺が紹介したクエストを旦那がクリアしたら、紹介者はボーナスを貰えるんすよ。だから、俺も投資するっすよ」
「へぇ、お前もか。だがそんなに金持ってないよな?」
「まっ、退職金でなんとかなるっすよ」
「はぁ……退職金ってのはな、退職したら支払われるんだよ──950万! まあいいや、んで、お前は幾ら出せるんだ?」
ゲッセンドルフがそう言うと、ハボリックはニヤリと笑って、
「リアルな数字は200っすね。だから1000万を超えたら俺が代わるっすよ」
「おい、お前ら。本気で言ってんのか?」
本気です。
そう言ってるのが表情でわかった。
Sランク冒険者であるエギルが、500万ほどしか持っていないのに触れることなく、二人は資金援助をしてくれた。
それは二人が、エギルが何にお金を使っているかを知ってるからだろう。
──投資。
その言葉はおそらく、エギルを困らせないように使った言葉だろう。
普通にあげると言われればエギルは断る、二人がそこまで裕福な生活をしていないのを知っているから。
なので投資と言って、エギルに見返りを求める言い方をしたのだろう。
「……悪いな、二人とも」
「気にしないでください。ですが……向こうさん引いてくれないですね」
現在はゲッセンドルフの950万ゴールドで止めてる。
このまま終わってくれればいいが、それは難しいだろう。
「よし、勝負に出るっすよ」
そう言ってハボリックは立ち上がると、セブレスチャフを指差す。
「おい、お前! このまま2000万ゴールドまで勝負してやるよ!」
「「なっ!?」」
エギルとゲッセンドルフは声を揃えて驚いた。
これは揺さぶりをかけてるのではなく、油に火を注いでいるだけだろう。もし向こうが下りようと考えてたら、むきになって張り合ってくるはずだ。
「……1000万!」
だが、セブレスチャフは少し怯んだように小さな声でコールをする。そして、
「1200万!」
自信満々に腕を組んで伝えるハボリック。
いきなり額が跳ね上がる。そしてハボリックのまだ戦えると言わんばかりの表情に会場はざわつき、セブレスチャフの言葉は返ってこなかった。
エギルはセブレスチャフを見ると、彼に執事らしき老人が耳打ちをしていた。そして清々しい表情が、怒り狂ったような表情に変わった。
『他にいませんか?』
誰も反応しない。
そして、
『それでは、セリナ・マーベリックを落札したのは、そちらの方です』
ライトで照らされたハボリック。
「うわっ、めっちゃ眩しいっすね。ははっ」
あっさりと終わった。
エギルとゲッセンドルフは笑うしかなかった。
「まさか、あんな嘘に騙されてくれるとはな……額が大きくなると思って降りてくれたのか?」
「あの執事が出せる金額をあいつに伝えたんでしょうか、2000万は無理だと。どちらにせよ、ハボリックの言葉が決め手になったようですね」
「ああ、お前たちのお陰だ。……ほら、エレノア、もう泣くな」
ゲッセンドルフとハボリックに感謝をして、エギルはまだ泣いているエレノアに声をかけた。
頭を撫で、握り返せなかった手をギュッと握った。
するとエレノアは、目元を拭ってニッコリと微笑んでくれた。
「ありがとうございます、お二人共。そして、本当にありがとうございます、エギル様」
「まあ、ほとんど二人のお陰だがな」
「いえ、お二人が力を貸そうと思ったのは、エギル様だったからこそです。わたくしの友人を助けていただいて、本当にありがとうございます」
彼女の笑顔を見れて、エギルは本当に良かったと思った。