裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「ええ、文字通り、クエスト参加者を狙った、裏切り者っすよ」
「……仲間殺しをする奴がいるってことか?」
「そうっす。このクエスト中、少し不思議な死が目立つっすよ」
「不思議な死? それは魔物に殺されたとかじゃないのか?」
ハボリックはゆっくり首を横に振った。
「死体を回収したら、その死体には人間が付けた傷が散見されたんす。それも色々な死体からっす。だから人間に殺されたと皆が思ってるんすよね」
「だが、クエストクリアの目処は付いてないんだろ? じゃあ殺す理由がないだろ。それとも装具とか盗られてるのか?」
「いえ、その者達はただ殺されてるだけっすね」
合同クエストで冒険者同士が殺し合う理由は二つある。
分配される報酬の取り分を増やすため、そして、高価な装具を付けている者から装具を奪うためだ。
だがその二つとも、クエストをクリアしてから行われることが多い。それはクエストをクリアする前に殺してしまっては、戦力が減ってしまうからだ。
「そこで旦那に相談があるっす」
「俺に?」
「はい。これは旦那にしか相談できない……ちょっと危険な相談っすよ」
「それは?」
「このクエストを受けてほしいっすよ」
ハボリックは一枚の紙を取り出し、テーブルに置いた。
その紙は『ゴレイアス砦侵攻戦の裏切り者』というクエストだった。
ランクはA、募集人数は3名。
「このクエストは少し前までゴレイアス砦侵攻戦のクエストに参加していた、仲間を三名亡くした冒険者が依頼したクエストっす。それは勿論、魔物に殺されたのではなく、人間に殺されたと、依頼主は言ってるっす」
「……唯一残ったそいつの願いは、その裏切り者を殺すことか?」
「そうっす。だからそいつは、ゴレイアス砦侵攻戦というクエストの攻略よりも、その裏切り者を殺すことだけを考えているそうっす。そして自分はこのクエストを直接頼まれました。『強い冒険者に渡してほしい』と言伝付きで」
「要するに、その残された一人のギルドに一時的に所属して、その裏切り者を捜すのを手伝えってことか?」
「そうっす。それで……こっからは私情っすけど、この残された奴は自分の友人なんです。だから旦那には、本来のクエストじゃなくて、こっちのクエストを受けてほしいっす」
怨みを抱いた友人の力になってやりたい、そういう気持ちなのだろう。エギルがエレノアを助けたいと思う気持ちと同じ。
エギルはハボリックの気持ちを理解し即答した。
「お前には借りがあるからな。俺はそれでいい。だが──」
エギルはエレノアを見る。すると彼女は、にっこりと微笑んだ。
「わたくしはエギル様に付いて行きますよ」
「助かる。じゃあ、そのクエストを受けるよ」
そう答えると、ハボリックの表情が晴れやかになった。
「本当にありがとうございます。あいつも喜ぶと思うっす」
「だが参加するのは俺とエレノアだけだぞ? それでもいいのか?」
「えっ……ああ、セリナさんは冒険者じゃないんすもんね。まあ、そこは何とかするっすよ」
少し驚いた様子のハボリック。この場に呼んでるのだから、セリナも冒険者だと思うのは当然かもしれない。
「それで、いつからそのクエストに向かえばいいんだ?」
「今はこのクエスト自体お休み中らしくてですね。一週間から二週間は、間が開くと思うっすよ」
クエストを開始してから合計で四週間も経過するクエストはあまりない。
とりあえず話が一段落したとこで、エギル達は共に朝食を済ませることにした。
「ハボリック、その依頼主にはもう会えるのか?」
ハボリックは第三者として説明してくれてるだけなので、エギルは直接どういう状況だったのかとか、怪しい奴はいなかったのかとか、色々と詳しく確認したかった。
だが、
「クエストが始まるギリギリまで、こっちには来ないと思うっす。……仲間の出身地に出向いて報告したり、仲間を見送らないといけないっすから」
「そうか……」
状況がすぐにでも聞けないのは少し辛いが、残された者が忙しいのは仕方ない。
やれることをやって、その来るべき時に備えたほうがいいだろう。
「どうかしましたか?」
ふと、エレノアはボーっとしているセリナを見た。
「え、ううん、なんでもない」
だが、何かを考えているようにしか、エギルとエレノアは見えなかった。