※この作品はR-18です。

裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る   作:柊咲

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第25話

 小さい頃、セリナの母は頭を撫でて言っていた。

 

 ──誰かを守れる強い子になるんだよ。

 

 この言葉は二人の妹を守れる強い子に育ってほしいという意味だったのだろう。だからセリナは、母の願い通り二人の妹を守るように生きてきた。

 畜産農家だった実家の手伝いをしながら、忙しい両親を助ける為に畑の面倒も、家畜の面倒も、二人の妹達の面倒も見てきた。

 毎日毎日、暑い日も寒い日も外で力仕事。

 だけどセリナは全く苦じゃなかった。誰かに尽くすことを、彼女は苦だとは思わなかった。

 

 ──だからあの村を襲ったあの日も、セリナは二人の妹の面倒を見てた。

 

 穏やかな青空の下。

 突然、近隣の家が大きく燃えた。

 火事かと思った時にはもう、知らない人達が村に侵入していた。

 手に凶器を持って、村人を追いかける。

 脅えて逃げる村人を見ながら、セリナは全く動けなかった。

 怖くて、熱くて、痛くて。だけど二人の妹は、脅えるセリナの手を強く握ってくれた。

 

 ──お姉ちゃん、早く逃げよう。

 

 普段からセリナは誰にも弱い部分を見せなかった。だからこの時も、小刻みに震える自分の体を鼓舞するように、二人よりも大きな声で言った。

 

 ──うん、逃げるよ!

 

 だけど心の中では、逃げるとこなんてないと思っていた。ここは山奥にある小さな村。

 他の村や街に逃げようにも、歩いて一時間くらいかけて山を下りなくてはいけない。

 だけどセリナは考えとは裏腹に必死に逃げた。

 逃げて、逃げて──捕まった。二人の妹も一緒に。そして奴ら──奴隷商人から聞こえるのは汚い会話だった。

 まだ幼い子供は価値が低い。売れない奴隷を養うのはリスクが大きい。若くて綺麗な女がいい。

 そして奴らは、セリナを見下ろした。

 正直な気持ちでは怖くて泣きそうだった。元々、セリナは臆病な性格だ。だからこの奴隷商人が怖くて怖くて、仕方なかった。

 だけどセリナは強気な演技をした。

 強者としてたち振る舞えば、きっと手を出してこないだろうと思って。

 そして予想は運良く的中した。だから村人は縄で縛られることなく、ただ監視されるだけだった。

 そして少しの月日が経って、移送されてる馬車の中でセリナは二人の妹を逃がした。

 価値が無いと言われたまだ一〇歳満たない二人は、奴隷具を付けられてはいなかった。だから二人を逃がすことは容易だった。

 

 ──イヤだ。お姉ちゃんも一緒に逃げよう。

 

 そう言われたけど、セリナが逃げたら追ってくるのはわかっていた。二人だけなら、きっと奴隷商人は追ってこない。

 

 ――絶対に助けるから。

 

 そう言って走って逃げる二人に、無理に作った笑顔を見せた。

 心の中で幸せになってと願い、二人が見えなくなってから、セリナは色々な感情から涙を流した。

 両親も妹も、誰もいない。怖くて怖くて仕方なかった。

 

 その後、セリナはとある街で彼女──エレノア・カーフォン・ルンデ・コーネリア。

 彼女はコーネリア王国の三女だという。なんでそんな子が奴隷に、そう思って声をかけたら、少し複雑な成り行きを聞いてしまった。

 そして彼女はずっと泣いてた。

 一緒に冒険者として活動していた幼なじみに、そして実の姉に裏切られた彼女は、男女問わず、距離を置いていた。

 人という存在が──怖いらしい。

 そんな脅える姿を見て、セリナは失礼だけど妹に似ていると思った。だから助けたくなった。

 奴隷商人は弱い女には手を出す、セリナはその姿を何度も見てる。

 逆に強い女には手を出さない、ただの売り物と接する。

 だからセリナと、冒険者をやっていたエレノアは運良く手を出されなかった。

 それからというもの、セリナはエレノアに何度も話しかけた。

 最初は返事すら素っ気なかったエレノアだったが、根気よく話すと心を開いてくれた。

 その時に、セリナは自虐的に昔の卑猥な思い出を語った。

 するとエレノアも強烈な性癖を持っていたらしく、その日から、二人はそんな話をするようになった。

 そんなある時、エレノアは決意するように言った。

 

 ──セリナ、わたくし、初めてを捧げた相手と絶対に結婚します!

 エレノアは希望に満ち溢れた表情で言った。だがセリナは、そんな彼女を心から応援することはできなかった。

 二人は奴隷、そんな相手はもう見つからない。もしかしたら初めては知らない男かもしれない、嫌いな男かもしれない。

 

 ──うん、じゃあ私も、初めてを捧げた人と結婚するかな。

 だけど夢見るエレノアに、セリナは現実を告げることはできなかった。

 そしてエレノアと別れて、セリナはあの男に売られた。

 

 ──今日から僕が、君のご主人様だ。

 優しくて、爽やかな顔。そしてお金持ちの貴族だという。

 これは当たりなのか。そうセリナは初対面の時に思ったのを覚えてる。

 だけどそんな脳天気な考えは、一瞬にして崩壊した。

 セリナを買った男は突如として豹変した。何もしていないのに殴られ、何もしていないのに蹴られる。

 

 なんで? なんでなの?

 ただ堪えながら、セリナは声に出せない質問を脳内で永遠にしていた。

 そして他にもいた奴隷の子達がいたから、セリナはこっそりと、なんでいきなり暴力を振るうのかと聞いた。そしたら、

 

 ──あの方は女性を殴ったり蹴ったり、痛めつけたら性的興奮が生まれるの。だから犯される心配はない──殴られて死ぬ人は、一杯いるけどね。

 その言葉を聞いて、セリナは死んでもいいから逃げる決意をした。

 皆が寝静まった夜、監視の男から鍵を盗み、他の奴隷達と一緒に逃げた。

 だけど、脱走なんて無理だった。

 執事の男に一人捕まり、また一人捕まる。だけどセリナは自分を奴隷として売り払った奴隷商人に再会した。

 彼に奴隷具の所有権を上書きしてもらい、セリナは再び奴隷商人に売られることになった。

 そして元主と、奴隷商人はとある街で言い争っていた。

 元主は返せと言い、奴隷商人は売り物だと言う。

 自分はもう人じゃないのか、そう思った。

 次は誰だろう。また殴ったり蹴ったりする人か。もう殴られたくない。もう痛いのは嫌だ。

 

 男なんて――嫌い。

 嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い。

 もう男なんて大嫌い。

 

 ──セリナ?

 男を拒絶すると決めた時、セリナはエレノアに再会した。

 買い物袋を持った彼女は、奴隷商人と何かを話して、自分をギュッと抱きしめてくれた。

 以前とは全く逆の立場。泣いてるセリナと、慰めるエレノア。この時のセリナに強がる気力はなく、ただ助けを求めた。

 だけどエレノアの首には奴隷具が付けられている、同じ奴隷なのは変わってない。それでも着ている服は、セリナなんかよりも裕福な格好だった。

 きっと、いい主に巡り会ったんだと、セリナは思った。

 

 ──必ず助けるから。

 エレノアはセリナにそう言った。

 それが嬉しくて、その言葉を信じて、セリナは売られるその日を待った。

 そして奴隷オークションが始まると、エレノアは会場にいた。悲しそうな表情、だけど瞳ではセリナに助けるからと訴えていて、隣に座る大柄な男性と目が合った。

 元主とは違う、戦う男の姿で怖い容姿の男性。そんな彼に、エレノアは寄り添っていた。

 

 それを見て──媚びを売って体を捧げないと駄目な人なのかと思った。

 

 一緒にいた頃に掲げた誓いを忘れてしまったのかと、少し悲しくなった。だけど生きる為なら仕方ない。

 そう思った。だけど……。

 競り落とされると、エレノアの主はいなかった。

 だからセリナは、エレノアに一緒に逃げようと伝えた。

 あんないかつい顔で、屈強な肉体の主。殴られたら、痛いじゃ済まない。

 怖いと思った。だが、そんな第一印象は、初めての顔合わせで少し変わった。

 セリナが挨拶すると、なぜか子供っぽく照れてるみたいで、目を合わせてくれない。そしてエレノアと話しているのを見ると、二人が本当に幸せなのがわかった。

 この人が自分の永遠の主になるのか、セリナはそう思った。

 だけどエギルに声をかけられると、奴隷商人と元主のあの顔が重なって甦る。だからセリナは、エギルと会話ができなかった。

 それでもいつか、男を嫌いになった自分をこの人が救ってくれるのかもしれない。もしエレノアと同じ人を好きになれたら、ちょっと嬉しいかもしれない。

 

 そんな──淡い夢物語を見ていた。

 

 

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