裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「セリナがそう言ってくれるなら、俺は拒否しない。その時が来れば、その震えた体を抱き寄せるよ」
「……はい」
言った。そして返答も貰った。自分は今どんな顔をしてるのだろう。
だけどきっと、照れくさそうに髪を掻いているエギルよりも、ずっと恥ずかしそうにしてるのだけはわかった。
「まあ、エレノアの熱心な勧めがあったから、セリナの事は前から気になってたんだよ」
「エレノアの、ですか……?」
「ああ。エレノアは俺とセリナがくっ付けばいいと考えてたからな」
「あの子、そんな事を言ってたんですね……」
「俺にはよくわからないな、好きな相手が他の相手と結ばれるのを願うってのは」
「まあ、そうですね……」
エレノアが三人で──変態なプレイをしたがってる、というのをエギルは気付いているのだろうか。いや気付いていないだろう。
「私をエレノアと同じくらい、好きになってくれますか?」
「俺で良ければ、そうする。だって……」
エギルは、見た目からは想像もできないほど照れていた。
「セリナは、その……凄く綺麗だから」
その照れながら言う褒め言葉が子供っぽくて、セリナは声を出して笑ってしまった。
「……なんで笑うんだよ」
「い、いえ、ちょっと子供っぽいなって、そう思っちゃったんです」
「子供っぽいって……」
「エギルさんって、見た目は怖いけど、ちょこちょこ子供っぽい部分あるんですもん。まあ、私はそんなとこを好きになったのかもしれませんけど」
「そんなとこって……」
少し不機嫌なエギル。
セリナは、ゆっくりと距離を縮めていく。
「今日は、ここで寝てもいいですか?」
「だが……」
「あっ、まだ、その……エレノアとしてたみたいな、エッチな事はできませんよ」
「別にそんなこと……だけど、怖くないのか?」
怖い。怖いが、今だけは隣で寝たいと思った。
セリナは壁側とは逆の位置に横になると、天井を見つめた。
「エギルさんは、私が許可しなければ何もしてこないと思ってますから」
「……それは俺がヘタレだと言いたいのか?」
「いえ、エギルさんが人を傷付けるような人じゃないと思ってるだけです」
「……そうか」
「エギルさん、少し、手を繋ぎながら寝てもいいですか?」
「……ああ。だが、怖くなったら言えよ?」
「はい、ありがとうございます」
横になったセリナの隣にはエギルが横になる。
すぐ近くの距離に男が、そう考えると少し怖かった。だけどギュッと指を絡めた手が、セリナを安心させる。
目を閉じれば、昔の懐かしい気持ちを思い出す。
二人の妹と手を繋いで寝た、昔の記憶が。
「エギルさんの手、温かくて落ち着きます」
「ああ、セリナの手もな」
今は自分が守られてる側。妹達の気分を、今はセリナが味わってる。
今日はゆっくりと眠れる。いつも見る怖い夢も、今日は見ないでいられるはず──。
「──ちょっと!」
そう思っていたが、勢いよく扉が開いた。
「エレノア、どうしたんだ?」
「どうしたんだ、じゃないです! 何ですか、その甘々な会話は!」
「甘々って、いや別に普通の会話だろ」
二人が会話をしてるのを、セリナはジッと見ていた。
セリナ自身も甘々な会話──まるでできたてのカップルのような、初々しい会話だと思ってた。
そしてエレノアは、ズカズカとベッドまで近寄ると、エギルの左側に横になる。
「そんな甘ったるい会話を聞いてたら、もうムラムラして大変ですよ」
「いや、勝手にムラムラしただけ──って、いつから聞いてたのよ!?」
「いつからって、最初からに決まってるじゃないですか?」
「なっ! あんた、今日は私のベッドを使うって、そこで寝るって言ってたじゃない!」
「寝ようと思ったんですが、少しだけ会話を盗み聞きしようかと……そしたら、そしたら」
エレノアはエギルの腕を組んで、足を絡めてセリナを睨む。
「あんな甘ったるい会話を聞かされたら、寝れるわけないじゃないですか!?」
「知らないわよ、それなら一人で──いや、なんとかすればいいじゃない!」
「オナニーよりも、エギル様に抱かれたいんです!」
セリナが恥じらって隠した言葉を、エレノアははっきりと言った。
そして、エレノアは「それに」と言って、エギルに絡めた足を大事な部分に移動させた。
「あんな甘ったるい会話して、エギル様が正常を保てるわけないじゃないですか」
「なっ、止めろ、エレノア! 触るな」
「ほら、もうガチガチですよ?」
セリナはエレノアの視線を辿る。
そこには、大きなテントが張られていた。
「エギルさん……もしかして」
「いや、これは違うんだ!」
「エギル様は人よりも性欲が強いんです! 手を繋いだだけでも勃起してしまうのです!」
「……おい、俺を子供みたいに言うな」
「子供です! ほら、もうこんなに大きくなって……さあ、今からわたくしが解放してあげますからね」
「ちょ、ちょっと止めてよ!」
何をしようとしていたのかに気付いたセリナはそれを止める。
ここでされたらセリナはきっと、その匂いを嗅いで暴走してしまうだろう。まだ自分の性癖は隠したい、セリナはそう思った。
「今日は我慢してよ、ほら、このまま早く寝よう」
「……ですが、エギル様のここ、こんなに大きくなってますよ?」
「お前が触るからだろ……。ほら、早く寝るぞ」
「嫌ですよ」
少し文句を言うエレノアだったが、セリナは何とか我慢させた。
そして三人は、シングルベッドでぎゅうぎゅうになって眠った。
当然、エギルとエレノアが何かしようとしていたけど、今日だけは止めてもらった。
今日だけは、セリナはこの繋いだ手を離したくなかったのだった。
♦
エギルが朝目覚めると不思議な気分だった。
左腕を金色の髪のエレノアが掴み、右腕を桃色の髪のセリナが掴む。
両側に挟まれたエギルは緊張のせいで、深い眠りに入ることはできなかった。
「おはようございます、エギル様」
ふと、目を開けて天井を見ていると、エレノアが小さな声を発した。
まだセリナは寝ているから少し気を使ったのだろう。だからエギルも小さな声で挨拶を返す。
「おはよう。もう起きてたのか?」
「ええ、少し前ですけどね。エギル様はあまり寝れなかったみたいですね」
「……わかるか?」
「いつもより疲れた顔をしてますから」
クスッと笑ったエレノアに、一瞬で見抜かれてしまった。
「この状況が落ち着かなくてな」
「両手に色違いの綺麗な花。とても素晴らしい状況じゃないですか」
「自分で言うか、それ。まあ、男にとっては最高のシチュエーションだろうな。だが……セリナ程でもないが、俺も女は苦手だったんだ。少し前の俺は、二人に好かれるような男じゃなかった。だからこのモテモテな男のような状況に整理が付かないんだ」
朝から夜まで魔物と戦って、夜になったら男達と酒を呑む。決して、絶世の美女二人に囲まれて眠るような男じゃなかった。
だがエレノアは、仰向けの姿勢からうつ伏せの姿勢に変え、頬杖を付きながらエギルを見た。
「わたくしたちにとってエギル様が特別な存在のように、エギル様もわたくしたちが特別な存在なのではないですか?」
「そうだな。だが……なんで俺なんだ? 俺のどこがいいんだ?」
他に男なら大勢いるし、自分よりもっと魅力的な相手はいる。そう、エギルは思った。
「人それぞれ趣味は違います。爽やかな雰囲気の男性が好きな人もいれば、男らしい男性が好きな人もいます。なので要するに、わたくしも、セリナも、エギル様のような男らしい守ってくれる男性がタイプなのですよ」
「そうなのか……。じゃあ、二人は変わった趣味をしてるんだな」
「自分で言いますか、それ?」
言い返されてしまった。だが自分に自信がないから仕方ない。
「ずっと、俺の側に居てくれるか?」
「ええ、勿論ですよ。わたくしはエギル様の側にいます。何があってもです」
見つめ合うと、エギルはエレノアの唇に自分の唇を近付けた。
だがその手前で、
「──ダメ、エッチなことしちゃ!」
とセリナの声が部屋中に響いた。
慌てて隣を見ると、セリナは長い睫毛を閉じて寝ている。
「寝言、でしょうか……?」
「そうみたいだな。俺達が何かしようとしたのを察したんじゃないか?」
「みたいですね。では違うとこでしましょうか」
流れを読んでエレノアが言う。
だがエギルは、少し意地悪をしてみたくなった。
「いいや、セリナに駄目だって言われたからな。もう一度、俺は寝るかな」
「えっ、なっ、なんでですか!?」
「セリナに言われたからだよ。それにほら」
エギルは右腕を強くセリナに握りしめられているのを見せた。
「これじゃあ、離れられないからな」
「そ、そんな……じゃあ、起きないように静かに手を離せば──」
「それじゃあ、おやすみ」
起きた時に、二人がいなかったらセリナが悲しむだろう。そう考えたエギルは目蓋を閉じた。
「そう、ですか……」
エレノアも諦めたみたいで、横になった。
と思いきや──。
「おい、エレノア!?」
「エギル様をその気にさせてあげますよ。ほら、ここはもう、こんなに大きいですよ?」
「そ、それは朝だからで――」
屹立としたモノに、エレノアの柔らかい唇がくっ付き、そのまま飲み込まれた。
こうなってしまえば、我慢はできなかった──。
「いつまで我慢できますか、ご主人様?」
エレノアの笑いを含んだ声が、布団の中から聞こえ、
「……エッチは駄目。駄目だからね、エギルさん」
セリナの謎の寝言が隣から聞こえる。
そんな地獄のような状況で、エギルは天井を見つめながら思った。
――奴隷に人権はない。
そういう考えの者は大勢いる。
売って、買われて、まるで道具のようだと言われている。
だがエギルが買った二人に人権はあるし、自由もある。それは今現在も、そしてこれからも同様だ。
だから二人共を愛して、二人の負った傷を癒やしていこう、それが二人の為にもなるし──自分自身の負った傷を癒やす為にもなるのだから。
一章 完