裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
すると、セリナがハルトに噛みつく。
「ちょ、ちょっとあんた! 今なんて言ったのよ!?」
男嫌いは未だ健在でエギル以外の男と話すことが怖いセリナだが、エギルが馬鹿にされたからか、この時だけは強気に怒鳴った。
だが、ギロッとした睨みが、セリナをビクッと怖がらせた。
「……冒険者は男のする仕事だ。女を連れて遊びながらする仕事じゃねえんだよ」
「遊びながらって……たしかに私は弱いかもしれないけど、二人は──」
「やめろ、セリナ」
エギルはセリナを止める。
女なんて弱い、それは以前までのエギルも同じことを思っていた。たまに女を連れている冒険者を眺めて、なんで女なんかと、などと思った時期もあった。
だけど、それは、
「僻みか?」
「なっ!?」
今になってみればわかる、あの頃のエギルは僻んでいただけだ。
女と話せない、女が寄り付かない、女が自分を見て逃げていく。だからエギルは、女と一緒にいる冒険者を嫌っていた。だけど活躍する女冒険者も多くいる。むしろ、男冒険者よりも、女冒険者の方が心が強く勇敢かもしれないとまで今は思っている。
だとすれば、ハルトもただ僻んでいるだけなのか? と思ったのだが、どうやら違うらしい。
「僻んでなどいない。俺は弱い者が嫌いなだけだ」
「そうか。だったらすまないな。だが、二人は決して弱くないぞ? それに俺もな」
「ふん、だったらいい」
腕を組んだハルトは、それ以上は何も言わなかった。
強者にしか心を開かない、そんなタイプなのだろうか。であればこれ以上、今の状況でこの話題を続けるのは無駄だろう。
エギルはそう思い二人を椅子に座るように促すと、ハボリックはエギルの隣へ来て小さな声で耳打ちする。
「旦那、すまないっすね。……仲間を亡くしてから、誰に対してもこうなんすよ」
「……そうか」
仲間を亡くし、自分一人だけ生き残ってしまった。だから考え方が変わったり、周りを憎むようになってしまったのだろう。
せめてその裏切り者を殺して、殺された仲間を供養したかった。だが一人では無謀だと理解し、誰かに力を借りたい……そう思って依頼した冒険者が、両側に女性を連れているとなれば、少し苛立ってしまうのもわかる。
エギルはそのことに触れるのを止め、彼の対面に座る。すると、腕を組んでいたハルトはこちらを見ながら、
「それで、お前たちのランクは?」
と聞いてくる。
彼の境遇はそれなりに理解してるつもりだが、その愛想のなさにエギルはため息が出そうになった。だが先にセリナが口を開く。
「私はEだけど……」
「ふっ、雑魚じゃねぇかよ」
セリナのランクを聞いて、ハルトは鼻で笑った。
「わたくしはCランクですね」
「ふっ、こっちも雑魚かよ」
エレノアは対して苛立つ様子もなく、ニコニコと――いや、この笑顔は内心では怒っているのだろう。
「それで、あんたは?」
最後に彼はエギルに問いかける。
だがふと疑問に思い、エギルはハボリックに視線を向ける。
「おい、ハボリック。前もって俺たちのランクを伝えてなかったのか?」
すると、ハボリックはニヤニヤと悪い笑みを浮かべた。
「発表は自分の口からの方がいいと思ったっす。なので、ハルトの態度を叩きのめしてください」
「叩きのめすって……お前な」
「それに、そっちの方がハルトの素顔が見れるっすよ」
ハルトの素顔?
「おい、さっきから何話してんだよ。早くしろよ」
ハルトに聞こえる声の大きさで会話しているため、ハルトは少し苛立っていた。
エギルはため息をつき、
「……Sランクだが?」
と答える。すると、ハルトは鼻で笑い「ふっ、Sか……」と途中まで口にしたが、すぐに固まった。
その表情は阿呆っぽく口を半開きにして、先程までの目つきの悪さは柔らかくなり、丸々していた。
そして、ハルトの隣に座るハボリックは腰に手を当て、なぜかドヤ顔をして言い放つ。
「旦那はこの世界でも数少ないSランク冒険者っすよ! ハルトのAランクよりも上っすね」
その言葉を受けハルトは頭を抱えるように手を当て、
「い、いや……そんな、馬鹿な……だっ、だってSランクなんて……そ、そうだ、冒険者カードを見せろ!」
動揺を隠せない様子のハルトは手を前に伸ばす。
「ほらよ。捨てるなよ?」
「……」
ハルトに見せると、再び目を丸くして硬直した。
「……これって」
「おい、どうした。偽造カードか? なんて言うなよ?」
以前そう言われたから、少し不安になってしまった。
たしかにSランク冒険者は珍しいが、冒険者カードには名前も記載されてるのだから認めるしかない。すぐに認めて何か言ってくればいいものの、ハルトは固まったまま動かなかった。
「どうした、これでわかっただろ?」
「……Sランク冒険者。いや、それより……こ、この名前……俺の知ってるSランク冒険者で、このお名前は……お、男らしくて、逞しくて、強くて……」
「……おい、どうした?」
壊れた人形のようにブツブツと独り言を漏らすハルト。
そんな彼を見て、ハボリックがハルトの肩に手を置く。
「そうっすよ。お前が憧れていたエギルさんっすよ」
「嘘、だろ? 本当に、本当に、あの……」
その瞬間、ハルトはテーブルを乗り越え、前のめりになって、勢いよくエギルの
手を握る。
「お、おおお、おれっ! エギルさんの大ファンなんです!」
「……は?」
先程までの態度から一変。ハルトはまるで子供のように目を輝かせた。
「エギルさんの噂をあちこちで耳にしていたんです! 『ギルドを組まない最強の冒険者がいる』とか『漢の中の漢』とか、とにかく漢らしい冒険者がいるって噂になってて……だ、だから、いつか会ってみたいと思ってたんですよ! この街によく現れるって聞いてたので、いつも近くを寄ったら探したんですけど、なかなか会えなくて。いやー、ほんと良かったです。まさかエギルさんが依頼を受けてくれるとは思ってもみなかったですよ!」
「そ、そうか……」
「それでそれで──」
ハルトは饒舌に、エギルへの熱い尊敬の気持ちを伝えてくる。
こういう者はたまにいる。いや、残念なことに熱烈な同性のファンは多くいる。
その中でもハルトは超が付くほどの大ファンに入るだろう。エギルは別に嫌ではないのだが、同性ばかりだと少し複雑な気分にはなる。
誰かが止めなくては終わりそうにないハルトの熱弁。それを見ていたハボリックは、友人の変わり身の早さに驚くわけでもなく、どこか楽しそうだった。