※この作品はR-18です。

裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る   作:柊咲

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第6話

 

「今はその時じゃない。その時が来たら……」

 

 

 

 エレノアは、ハッ、と我に返るように、エギルの手を握り返す。

 

 

 

「わたくしとしたことが、すみません……。ただ、三人が幸せそうに笑ってるのを見たら、どうしても、怒りの気持ちがわたくしの中でたぎって、それを内側に押し留めることができませんでした。……ですが、もう大丈夫です」

 

 

 

 エレノアは、ふう、と長い息を吐きながら、いつもの穏やかな表情に戻る。

 

 

 

「エギル様。あの眼鏡をかけたのがクルド。背の低い赤髪がモルドレット。そばかすに三つ編みの彼女がムスリナです」

「なるほど。それで、あのレヴィアっていう女が三人の中に加わったリーダーだな」

「わたくしは見たことないので、おそらくそうかと思います」

 

 

 

 見たことないということは、コーネリア王国で出会った者ではないということか。

 

 

 

「──んで、これで全部のギルドが揃ったのか?」

 

 

 

 エレノアと話してる最中、ファビオラが周りを見渡した。

 今いるメンバーは、奴隷女を集めたファビオラのギルドが五名。銀縁眼鏡のオドオドしたリーダーのレリックが率いるギルドが八名。レヴィアという幼女とエレノアの幼なじみのギルドが四名。

 そしてエギルたちを合わせて全部で二一名。合同クエストにしては少ない。

 すると、ハルトが口を開く。

 

 

 

「まだだろ。まだこのクエストを依頼した王国の直属ギルドが来てない。それに新しく加入するギルドもだ」

「ああ、そういえばそうだったな。すっかり忘れてたぜ」

 

 

 

 王国直属のギルドというのは、おそらくフェリスティナ王国が依頼するクエストのみを引き受けている専属ギルドだろう。

 そして新しく来るギルドは、おそらく裏切り者ではない。注意する必要はない。エギルがそう思ったとき、

 

 

 

「――おっ、もういんのかよ。もしかして俺たちが最後か?」

 

 

 

 少しねちっこい笑いを含んだ声が、入り口から聞こえた。

 そして全員が声の主を見る。声の印象通りの胡散臭い顔つき。冒険者らしくない小太りな体型に、四〇代であろう男の口周りには濃い髭が粗末に伸びる。

 

 

 

「なんで……」

 

 

 

 エギルとエレノアは目を疑った。男はどうでも良かった。重要なのはその後ろ。そこにはエギルとエレノアの見知った二人の少女の姿があった。

 

 突然、エギルとエレノアの前からいなくなった双子。

 

 馬の尻尾のようにぶらぶらとさせたクリーム色のポニーテールの彼女と、目まで隠した赤みがかったクリーム色の前髪に肩まで伸ばした後ろ髪が印象的な彼女。共にクエストを受け、戦い方を教えた——サナとルナだった。

 男の後ろを付いて歩くようにサナとルナがテントの中へと入ってくると、エギルとエレノアは顔を隠すように、二人とは違う方向を向いた。

 今更なにを話せばいいのかという疑問と、なんでここにいるんだという疑問が混ざり合い、この場で顔を合わせることを避けたのだ。

 そして、サナとルナと目を合わせないように待っていると、今回が初めてだという他のギルドの二組が加わり、最後に王国直属のギルドも到着して、全員が着席して話が進んだ。

 このクエスト全体のリーダーは、王国直属のギルドリーダーであるエグヴェインが務めるらしい。

 

 

 

「それでは、初めての者もいるみたいだから。まずは自己紹介を――」

「——いいんじゃねえか、そういうの」

 

 

 

 まずは自己紹介をしてから。

 お互いを知るとこから始めるのが合同クエストでの当たり前なのだが、それをファビオラが手を払って拒んだ。

 それに対し、髭を生やしたエグヴェインは怪訝そうに、ファビオラを見下す。

 

 

 

「顔合わせするのは今回が初めての者もいる。お互いの名前くらい知っておくのがいいだろ?」

「別に、新しく来た連中がどんな奴だろうと、俺たちには関係ないだろ? ――どうせ、すぐに死ぬかもしれねえんだしよ。それに俺たちは仲間じゃない。お前らだって人数が減ってくれた方が助かるだろ?」

 

 

 

 ファビオラの言葉に、エグヴェインは声を荒げる。

 

 

 

「馬鹿なことを言うな! 人数が多い方がクエストの達成率が上がる。だったら協力するのが当然だろ!?」

 

 

 

 エグヴェインの言葉に同調するように、統一された騎士の鎧を身にまとったギルドの面々は、ファビオラの言葉に反論した。

 だがそれすらも、ファビオラは鼻で笑う。 

 

 

 

「そう言って、本当はお前らが仲間殺しの裏切り者なんじゃねえのか? 裏切り者がいるって王様に報告して『こんだけ大変だったんですよー、だけど自分らは頑張って達成しましたー、だからもっと自分らの待遇を上げて、もっと多く報酬をくださいよー』って言うつもりなんだろ?」

「なっ、我々は国王の命を受けて参加してるのだ! そのようなことなどするわけがないだろう! 貴様こそ、その奴隷たちを購入するために金が必要だから参加したんじゃないのか!? 金品強奪を目的にな!」

「おっ、そこでむきになんの怪しいなー?」

 

 

 

 売り言葉に買い言葉。二人の会話は平行線のまま、互いを疑い、互いを貶すことしかしない。それを周りで見ている他のギルド連中も、何も言葉を発しない。おそらく裏切り者というのは、この場にいる誰よりも強く、ここで目立てば狙われる可能性が上がる。だから黙っているのだろう。

 そして話が進まない現状を見て、エグヴェインはこれからのクエスト進行の話し合いへ移行するため、ギルドリーダーのみを残して他のメンバーに解散を命じた。

 

 残ったのは今回が初参加の二ギルド《宝剣》と《海竜の夢》のリーダーと、

 このクエストを仕切るギルド《フェリスティナ騎士団》を率いるエグヴェインと、

 奴隷ばかりで構成されたギルド《断頭の一閃》のリーダーであるファビオラ、

 それに《万能薬箱》というギルドのリーダーであるオドオドとしたレリックと、

 エレノアの幼なじみ三人がいる《夕焼けの絆》のリーダーである幼女のような姿をしたレヴィア。

 そしてサナとルナの所属する《フェレーリル》のギルドリーダー、ゲイルという男。それらを残して、あとは解散した。

 

 エギルは自分のテントへ帰ろうとするサナとルナに声をかけようか迷っていた。

 なぜ突然、自分らの前から消えたのか。そして、なぜこの危険なクエストに参加するのか。それらを聞きたくて。だが、それをエレノアが止める。

 

 

 

「今ここで、お二人と話をしてどうするのですか?」

「それは……」

「エギル様にもわたくしにも理由を教えられないから、二人は何も言わずに去ったのではないのですか? だったら、エギル様が今お声をかけても二人は喜びませんよ? 二人はきっと、ここでエギル様と再会することを望んではいないと思います」

 

 

 

 もし、あたしが悩みを抱えているとしてさ、その悩みの限界を迎えたら、その時は、あたしたちのこと助けてくれる?

 

 サナと別れる時にそう聞かれ、エギルは頷き、彼女が何に悩んでいるのかを無理に聞かないと言った。であれば今は、まだその限界の時じゃないんだろう。

 

 

 

「何かあったら、相談してくれよ……」

 

 

 

 その背中を見送り、エギルは返ってこない言葉を投げかけた。

 

 

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