裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「──エ、エギルさんは……私のこと、本当は嫌いなんですかっ?」
顔を赤く染めた彼女は、震えた声でそう言った。
そんな彼女から、エギルは後退りして逃げようとするが、背中にはもっちりとした豊満な胸の感触が当たって下がることができない。
「エギルさま、どうして迫ってきてくるセリナから逃げようとしてるのですか? ほら、ちゃんと想いに応えないとダメですよ……? ご主人様はいつも強く逞しく、奴隷であるわたくしたちを守ってくれないとダメなのですからね?」
「いや、それは時と場合ってものがあってだな──」
「私はエギルさんが好きなのに、どうして……どうして、エギルさんは、私をエッチな目で見てくれないんですか?」
「それは、お前が男が怖いって言うからで──」
「それでも、ずっと二人のエッチしてる姿を隠れながら見てて、エッチな声とか聞かされてたら……私だって、その……欲しくなっちゃいますよ」
背後から抱きついてくる彼女はクスクスと笑い。
四つん這いで迫ってくる彼女は涙目で訴えてくる。
どうしてこうなった? なんでこうなった?
エギルは考える。そして結論に至ったときに見たのは、床に転がる中身が空になった一升瓶。
全てはハルトが持ってきたコレが悪い。コレが二人をおかしくしたのだ。
――問題は遡ること数時間前に起きた。
辺りが暗くなるまでお互いの連携を強化し、エギルたちは野営地へと戻ってきた。
「エギルさん、良かったらこれどうぞ」
戻ってきてすぐ。ハルトに渡されたのは一升瓶に入ったお酒だった。
「ん、どうしたんだ、これ?」
「実家に帰った時に両親に渡されたんですよ。地元の村で造られてる焼酎で、結構旨いんですよ」
「両親から渡されたのを俺が貰っていいのか?」
「まだあるので大丈夫ですよ。自分はミカエラさんたちと呑んできますので、エギルさんはお二人と呑んできてください」
そう言って、ハルトはミカエラたちが泊まっているテントへと急いで向かった。
エギルはお酒がかなり好きだ。エレノアとセリナと暮らす前までは、ゲッセンドルフやらハボリックやら他の冒険者たちとよく店で呑んでいた。だが二人と暮らすようになってからは、すっかりと呑まなくなってしまった。だから久しぶりに、それに二人と酒を呑みたくて、エギルはお酒を持ってテントへと戻る。
「あれ、エギルさん、それどうしたんですか?」
「ん、そこでハルトに貰ったんだ。焼酎だってさ」
テントに戻って座ると、いち早く反応したのはセリナだった。
「いいですね。私の実家でも焼酎造りしてたので、お酒には少し詳しいんですよ」
「そうなのか。何でも造ってたんだな」
「両親が何にでも挑戦するタイプでしたから。それで、米、麦、芋、どれですか?」
そこまでは、まだ瓶からではわからなかった。
すると、エレノアが首を傾げながら隣に座る。
「……わたくしはお酒を呑んだことがないのですが、これは美味しいのですか?」
「うん、美味しいよ! ただ……」
口に手を当てたセリナは、頬に空気を溜めてプスプスと笑い出す。
「二〇才になってお酒を呑んだことないなんて、エレノアはまだまだ子供ねぇ」
同じ二〇才だというのに酷い言われようだ。そんな子供っぽいセリナの挑発には乗らないだろうとエギルはエレノアを見ると、彼女はにっこりと──少し不機嫌そうな笑顔を作った。
「……ふふっ。お酒の味は知らないですけど、エギル様に愛される大人の味は知ってますから、別にいいのですよ。あっ、そうでした……セリナはまだ、処女でしたね。大人の味は知りませんでしたねぇ」
大人の味とはなんだろうか?
そんな簡単な疑問すら抱かないほど頭に血が昇ってるであろうセリナは、怒りを露わにしながらそっぽを向いた。
「ふんっ! 別に……大人の味なんて、そんなのいつだって味わえるもん!」
「えー、本当ですかー? 本当にいいんですかー?」
「……そ、それは」
「ふふっ、何度もわたくしとエギル様のエッチを盗み見てるのに何の進展も無い人が、いつだって味わえるとは思えませんね」
「ちょ、それはエギルさんには内緒にしてって約束したじゃない!?」
「あら、ごめんなさい」
あたふたとするセリナと、ニコニコとした笑みを浮かべるエレノア。
このまま続けていたら、二人の会話が止まらなそうなので、
「二人共その辺にして、早いとこ呑まないか?」
とエギルは二人の言い争いを止めた。
酒を呑めば二人共すぐに眠たくなって、この軽い口喧嘩も収まってくれるだろう。そう思った。だが、二人の言い争いはお酒を呑み始めてからも収まることはなかった。
呑むペースは明らかに早く、二人は競い合うように酒を呑み続けていた。
「……このお酒、強いですね」
「ふふっ、何だか世界がグルグル回ってるみたいです」
「お前ら大丈夫か?」
呑み始めて一時間が経過してから二人は顔を真っ赤にし、焼酎の入った一升瓶を天に掲げたり、天井の簡易ライトを眺めたりと、焦点が合っていないようだった。
「それじゃあ、そろそろ寝るか……」
そろそろ寝かせた方がいい。エギルはそう思い、辺りを片付け寝る場所を確保しようとした――が、セリナはエギルの腕をギュッと掴み、抱き寄せた。
上目遣いで見つめる彼女の桃色の瞳は、真っ直ぐエギルを見つめていた――。
――そして、お酒に酔った二人に迫られる場面が生まれた。
「……エギルさん。私を、抱いてくれませんか?」
いつの間にかエレノアはお酒に負けて、すやすやと寝息を立てて熟睡している。そして目の前には、四つん這いでこちらへ迫ってくるセリナの艶めかしい姿。
「……なんで、いきなりそうなるんだ?」
「私では、興奮しないですか?」
先程まで騒々しかったテント内には熱があり、その暑さから、セリナは胸元のボタンを二つ開けている。その間から見えるのは、男を興奮させる谷間と、黒生地に赤色の刺繍がされた派手な下着。エギルは慌てて視線を背け唾を飲み込む。
「興奮はする。当たり前だろ。だが……酔ってるセリナを抱いて、次の日に思い出して悲しまれたら困る」
「私は酔ってません! 確かに少しお酒で気分は高まってますけど。意識はちゃんとあります。それに悲しんだりしません」
「……エレノアに言われたこと、気にしてるのか?」
セリナはコクリと頷くと、そのままお尻から座る。
「エレノアの言う通り、この二週間ずっとエギルさんと三人で寝てきました。だけど……私とエギルさんは手を繋いで寝るだけで、他には何もしてません」
「それはセリナが男嫌いだから、なにかしたら嫌な記憶を思い出すと思ったからだ。少しずつ、慣れてほしかったんだよ」
「嫌な記憶を思い出すのは仕方ないです。もう、それは消えない過去ですから……。だけど、だからこそ! 私はエギルさんと結ばれて、新しく進みたいんです」
セリナは再びゆっくりと近付いてくると、俺の膝の上で背中を向けて座った。
その体は、少しだけ震えている。
「今ではエギルさんのことが大好きです。私を救ってくれて、私に戦う方法を教えてくれて、私に、笑顔をくれました……。エギルさんが近くにいてくれたら、すっごく幸せなんです。なのに。なのに。体が勝手に、震えちゃうんです」
「セリナ……」
目蓋から涙をこぼす彼女は、無理に笑顔を作った。
「変、ですよね。矛盾、してますよね。私でもおかしいこと言ってるって、わかってます。だけど、私にもよくわからないんです」
「それはまだ怖いからじゃ、ないのか?」
「そう、かもしれません。でも、エレノアも言ってたんです」
「エレノアが?」
そう聞くと、セリナは小さく頷いた。
「どっちも相手のことを大切に思ってるから、このままじゃあ、ずっと変われないよって。私が臆病だから一歩を踏み出せのと同じように、エギルさんも優しいから私に一歩を踏み込まないんですよね? 傷付けると思って……」
「それは……」
「そんな優しいエギルさんを好きになったんですから、当然です。だから、エレノアはさっきみたいに、少し強引に勧めたんだと思います。じゃないと、男性恐怖症の私を心配してるエレノアが、無理に背中を押すようなことしませんから」
エレノアはエギルを大切に想い、セリナを大切に想う。だからそうなのだろう。エレノアは二人に幸せになってほしいと思っているんだろう、自分が今、幸せなように。そして、お酒の力を借りるセリナはエギルの手を取り、顔を上げて見つめた。
「お願いします。私の全てを、私の最悪な過去を、最悪な男たちの記憶を、エギルさんの愛で消してください。酔ってません、後悔なんてしません。私は……愛してる貴方に、強く求められたいの」
その言葉と共に、エギルは覚悟を決めてセリナを抱きしめた。