裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
朝目を覚ますと、エギルは隣で横になっているエレノアの金色に輝く髪を抱いていた。
少し右腕に痺れが表れて思うように動かないでいると、既に起きていたエレノアと目が合った。
彼女は全裸にシーツを被って、エギルの胸元に顔をうずめる。
「おはようございます。エギル様」
昨夜、二人は何度も愛し合った。
まるでお互いのことを知りたいと願うように、全てを晒して激しく求め合った。
それでもまだ、エギルはこの光景を直視するのが少しばかり照れ臭かった。
「ああ、おはよう。もう起きてたのか」
「はい。朝食を作ろうかと思ったのですが、勝手なことはしないほうがいいかなとも思って、結局は、このままエギル様の寝顔を見ていたのです」
「悪い趣味だな……」
とはいえ、その言葉に嬉しく思ったのは間違いない。
エレノアを抱きしめている右手を解放して、ベッドから立ち上がる。
「今日は用事があるから少し外に出る。帰るのは昼過ぎかな」
「浮気、ですか?」
むくっと上半身を起こして、両腕で胸を寄せて両脚の間に手を置くエレノアは、少しだけムスッとしながらそう言ったので、エギルはため息をついて答える。
「あれだけしたんだから、もう勃たないぞ?」
「あら、でもさっきまではビンビンでしたよ?」
「それは……寝てたからだろ?」
「ふふっ、では浮気できますね」
「それなら、もう一度するか?」
そう聞くと、エレノアは嬉しそうにほほ笑んだ。
「それは嬉しい提案ですね」
「まっ、帰ってからな」
エギルがそう言うと、エレノアは頬を膨らませてみせた。
「これから、エレノアの復讐の準備をするんだよ」
「そう、でしたか。それは失礼しました」
ちょこんと頭を下げるエレノア。
昨夜、身体を重ねたことで互いの距離は縮んだ。
そのことをエギルは喜んだ。普通の恋人関係でいれたらどれほど良かったか。だがエギルは聞いてしまった、彼女が寝言で「やめて」「助けて」と漏らしたのを。そして瞳からは涙が流れていた。
エレノアの傷は深い。それを払拭してやりたい。エギルはそう思った。
「だからエレノアは、ここで待っていてくれ」
「わかりました。それでは、昼食を作ってお待ちしてましょうか?」
「ああ、それは助かるな。だけど食材が……」
エギルは着替えながら苦い顔をした。
あまり家で料理しないため、そこまで食材を買い込んではいない。だから作ると言われても、難しいと思った。
「でしたら、わたくしが食材を買ってきますよ」
「……出歩いて大丈夫か?」
出先で誰かに襲われたら――そう思ったが、彼女はにっこりとほほ笑む。
「わたくしも冒険者ですから、自分の身は自分で守りますよ」
その言葉を聞いて、エギルは彼女の頭を撫でた。
「そうか。だけど首元は隠していけよ?」
「なぜでしょうか?」
「世間の奴隷を見る目は厳しいんだよ。変な視線とか受けたくないだろ?」
「それもそうですね。では首元の奴隷具が隠れるように、何か対策をしてから買い物に向かいますね」
その言葉を受けて、エギルはいつも通りの服装に着替えて玄関へと向かった。
「それじゃ、行ってくる。くれぐれも気をつけてな」
「はい。エギル様もお気をつけて……では」
肩に手を置き、軽く唇にキスをされた。
「いってらっしゃいませ」
まるで新婚のようだと、エギルは少し照れ臭かった。
◆
「おい、ゲッセンドルフ」
「えっ、エギル様?」
冒険者がクエストに出る前に軽い食事をするお店にエギルが到着すると、クエストに向かおうとしていたゲッセンドルフに声をかけた。
ゲッセンドルフという男を表すなら『胡散臭い小物臭のする冒険者』だ。
背も小さくて、所々歯がない。他の冒険者からは怪しい冒険者として名前が知れ渡っている。
「すぐクエストに向かうか?」
「いえ、少し食事をしようと仲間と話しておりましたところですよ。それより、どうかなされたのですか?」
「ああ、お前にちょっと頼みがあってな」
「頼み、ですか。それはクエストとは別の仕事の依頼でございますか?」
エギルが首を縦に振ると、ゲッセンドルフは周りにいた仲間に離れるように指示をする。
二人は丸いテーブルを囲い、他の冒険者たちの雑音が入り混じる店内の椅子に座った。
「それで、仕事の依頼とはどのようなことでしょうか?」
ゲッセンドルフは汚い仕事でも金を払えば受けてくれる。その客は王城で暮らす貴族から、貧民街の落ちぶれた者までいて、様々な者と交流があってかなりの情報通だ。
だからゲッセンドルフは、Cランク冒険者というよりも、情報屋として稼いでいる額の方が多いだろう。
そんな彼に、エギルは小さな声で伝える。
「実は、三人の冒険者の現在の居場所を捜してほしいんだ」
「三人の冒険者ですか?」
「ああ、名前はクルド、モルドレット、ムスリナの三人だ。最初の二人は男で、最後の一人は女だ」
これらの名前は、エレノアとギルドを組んでいた幼馴染の名だ。
そしてゲッセンドルフは、真剣な表情をする。
「……その者たちのランクをお聞きしてもよろしいですか?」
「ランクはお前と同じで全員がCランクだな」
「C、ですか……」
ゲッセンドルフは適当に伸ばされたアゴの髭を撫でながら難しい表情をした。
「少し時間がかかるかもしれませんが、それでもよろしいですか?」
「……何か問題か?」
「ええ、わたしの情報網はランクの高い冒険者しか入っておりませんので。……その、同じCランクの者は眼中にないのですよ」
「仲良くなっても利益にならないからか?」
「そのとおりでございます。それに居場所が分からないということは世界中から捜さなくてはいけないということですよね? 他の三つの大陸にいるというのは考えられませんが、なかなか難しいので……そうですね、最低で一週間はお待ちいただけますでしょうか?」
「意外と早いな、それで構わない。それと、男と女を扱う奴隷商人も一緒に紹介してくれると助かる」
その言葉を受けて、ゲッセンドルフは眉をピクリと反応させた。
「……なるほど。一つ聞いてもよろしいですか?」
「なんだ?」
「この依頼は、先日エギル様がご購入した奴隷と何か関係はございますでしょうか?」
「ああ、あいつの頼みだ」
すると、ふう、とゲッセンドルフは少し困った表情でため息をついた。
「……奴隷は奴隷。あまり信用しないほうがよろしいですよ。今も家で待たせているのですよね?」
「まあな」
「エギル様に戦闘で敵うものはこの世界に数名いるかどうか、なので殺されるということはないかと思いますが……」
「何が言いたい?」
「エギル様が超の付くほどのお人好しでお優しい方なのは、数年間も共にしてきたのでよくわかっております。だからこそ、女にはお気をつけください。また……好意を抱いていた奴隷に裏切られたくはないですよね?」
その言葉に、今度はエギルが眉を反応させた。
「──お前、それを誰から聞いた?」
殺気を発してエギルは睨むが、ゲッセンドルフは慌てる様子もなく返答する。
「わたしの尊敬するエギル様の昔話を、ちらっと風の噂で聞いたものでしてね……」
「そうか。まあ、どうやって調べたかは聞かないでおく。だが、昔のことを知っていてよく、お前は俺を奴隷オークションに連れていったな?」
「この噂が本当かどうか、それを確かめる為でございます。そして奴隷を買われたので噂は偽りだと思いました──が、どうやらその反応、この噂は本当のようですね。であればなぜ過去に傷を負ったのに、あの奴隷をご購入したのですか?」
何故か、エギルには答えが出ていた。
「一目惚れだな。簡単な話しだが、それ以外の理由はない」
「……もし、また裏切られたら?」
「その時は仕方ない。疑って生きるよりも、信じて裏切られた方が男らしいだろ。それに、俺は愛した女を心の底から信頼できない方が辛い」
愛した女性に二度も裏切られたら悲しい。だが疑って共にいるよりも、エレノアを心の底から信じて生きたかった。
そして返答を聞いたゲッセンドルフは、軽くため息をついた。
「まさか、男冒険者たちの憧れであったエギル様から、一目惚れなどという言葉を聞かされるとは思ってませんでしたよ」
「おかしいか?」
「少しだけ、ですが。奴隷に裏切られて命を狙われた経験があったのなら、わたしなら全ての奴隷を怨んで犯して捨てますよ」
「まあ、奴隷にも悪い奴ばかりじゃないってことかもな。エレノアだけかもしれんが」
「そうですね。では昔話も聞けたところで、このゲッセンドルフ、エギル様の依頼に全力を尽くさせてもらいましょう」
「ああ、何かわかったら報告してくれ」
「かしこまりました。では」
胸に手を当ててお辞儀をするゲッセンドルフは、そのまま何処かへ向かった。
ゲッセンドルフは『強い者に従うタイプ』の人間だ。だからエギルより強い者に『エギルの情報を売れ』と言われれば売るが、エギルより強い者が現れなければ、ゲッセンドルフは絶対に裏切らない、ズル賢い男だ。
「さて、この一週間どうするか。適当なクエストでもこなすか」
これから先、エレノアと冒険者として生きていくのであれば、彼女の実力を確認しておいたほうがいいだろう。
エギルはそう思い、エレノアの待つ我が家へ向け歩き始めた。
クリシュナの街を、中心部へと向かって歩くエレノア。
風が吹けば金色の髪が舞い、美しい容姿をより一層引き立てる漆黒のドレスは、歩くたびにスカート部分が揺れ、彼女とすれ違った男たちはその美貌に釣られるように振り返って彼女の背中を見つめる。
「確かこの辺りに……」
そんな視線を向けられてることなど気にもしていないエレノア。
首元に装着された奴隷具を地味な色合いのスカーフでしっかり隠しており、彼女を奴隷だと思う者はいないだろう。
「あ、ありました!」
そして、目的地のお店の看板を見上げながら歓喜の声を漏らした。
ここは娯楽用品を取り扱っている本屋。様々な料理のメニューを記した書物や、薬草などの調合手順を記した書物まである。
「お客さんは数名いますが、仕方ないですね。恥ずかしいですけど購入しましょう」
エレノアは何か覚悟を決めるように拳をギュッと握り店内へと入っていく。
「いらっしゃい」
本棚が何列にも縦に並べられた店内。その最も奥に座ったいかつい店主は、エレノアを見て低い声で挨拶をした。
「男性、ですか……」
店主を確認したエレノアは悲しそうな表情を浮かべ呟く。
が、再び目的地へと歩み始めた。ここで負けられない、ここで足を止められない。
エレノアは店内で最も人気のないコーナーへ到着し、目的の本を探す。
「ありました! あっ……」
大きな声を出し、慌てて辺りを確認する。
そして誰もいないとわかると、一冊の書物を眺めながら、口を半開きにさせ今にもよだれを垂らしそうなほど幸せそうな表情をしていた。
その書物の表紙には、大柄で分厚い胸板の男性と、その膝の上に座る華奢な体型の女性が淫らに舌を出してる絵。
その表紙には大きく『屈強な騎士に抱かれた令嬢は何度もイかされる3』と表記されており、エレノアはその隣に置かれた書物を見て、
「よ、4巻も出てたのですね!」
と再び歓喜の声を上げる。
この書物は女性向けに書かれたものであり、エレノアは奴隷になるまで愛読していた。だが3巻が発売されたのは知っていたが、4巻が発売されていたのは知らなかった。
「後はこの2冊を店番のおじさまにエッチな目で見られるのを我慢して購入するだけですね」
表紙だけでも卑猥な書物だということは一目瞭然だった。
後はこの2冊を無口そうな男店主に会計してもらうだけ。そして暇そうにしてる店主の前に裏側を表にして書物を置く。
「いらっしゃい」
店主は書物の表紙を見ながら動きを止めた。
エレノアは恥ずかしそうに顔を下げ、早く会計をして、と心の中で念じる。だが一向に値段を口にしない店主。
エレノアは恐る恐る顔を上げると、無表情だった店主はエレノアを見つめ、にやりと笑った。
そして──胸板に力を入れているのを、エレノアは確認してしまった。
「お嬢ちゃん、こういうのが好きなんだろ?」
「あっ、ああっ……」
ピクッ、ピクッと、無い胸板を反応させる店主を見て、エレノアは後退りしながら声を漏らす。
そしてお代をテーブルに叩き置いて、
「わ、わたくしのご主人様の方が凄いです!」
と言って逃げるように走った。
「くっ、少し汚された気分です!」
まるで、あの店主に目で犯されそうになったような気分。
だが成果はあった。多大な対価を支払ったが。
「ふふっ、購入できました」
エレノアは家屋と家屋の間の狭い路地裏に入り込んだ。
記憶が正しければ、2巻はヒロインのアンナが騎士団長であるフーバートに後ろから激しく突かれて中出しされたとこで終わったはず。では今回は……。
裏表紙のあらすじを確認して、エレノアは少し出てしまった涎を拭いた。
『初めての中出しを経験したアンナ。その日からお腹の中には違和感を感じ、寝ても覚めても考えるのはフーバートとの激しい夜のことばかり。そして城内の皆が寝静まった夜、アンナはフーバートの寝室に向かった。
──もう一度、わたくしを犯してください。
少し汗臭い部屋で寝ていたフーバートにそう伝えると、アンナは獣のような大きな体格のフーバートを押し倒すと、凶悪な肉棒を自らの意志でパイズリし、淫らに欲しがった。
そしてアンナは気付く。自分はフーバートのこの男らしい体に惚れたのだと……』
「こ、これはいいです! さすが作者様、わかってますね。最初は自分の気持ちを知らないで犯されることを嫌がっていたアンナが、自らフーバートに求めるシチュエーション。そして朝まで眠ることなくセックス三昧!」
エレノアはこの書物の作者である、リオネに心酔していた。おそらく同じ性癖なのだろうと予想していた。
「やっぱり男性は包容力のある男らしい体が一番ですね。この書物のおかげで、セックスの知識を勉強したと言っても過言ではないですし……」
四年ほど前、エレノアは父親と母親に連れられた本屋で、この本と出会った。
最初は気持ち悪いと思った。女性が男性に犯されてる物語など。だがそう思ったのは最初だけで、真剣に読んでみると二人の愛情表現に共感を持てた。
そしてエレノアは、この書物を書いたリオネという作者の他の作品を全て読んだ。
そのほとんどが屈強な男に犯されるものばかり。ただそれだけなのに、自分が興奮してるのに自覚した。
──好きな相手に、激しく犯されたい。
そういう願望を持ってしまったのだ。だが犯されると言っても、良い犯され方と、悪い犯され方があると、エレノアは思っている。
悪い犯され方は、全く好意を抱けない相手に犯されること。どうして好きでもない男に犯されて、その後、好きになるのか。ペ〇スに惚れたという表現を何度か目にしたが全く理解できなかった。
そして良い犯され方は、好きな相手に強引に、それでいて激しく求められること。
昨夜、エレノアは一度目のセックスで股を少し傷めた。処女である彼女は初めてなのだから仕方ない。だが、同じく経験の無いエギルはその事に気付かなかったのだろう。
ズブズブっと大きくて堅いペ〇スの動きが止まることなく、エレノアの中を侵食した。
だがエレノアは、痛いから止めて! など思わなかったし言わなかった。むしろもっと乱暴にして! そう言ってしまいそうになった。
初体験を終えて、エレノアは気付いたのだ。好きな相手に強引に責められるのが大好きなのだと。
「お尻を力一杯に叩いてほしい。手足を縛られたい。疲れてもずっと、お〇んこにお〇ん〇んを挿入されたい。だけど……それを言ってしまったら、エギル様は引いてしまわないでしょうか」
この性癖を理解できるのはごく一部であり、エレノアは受け入れてくれるか不安だった。
「……だけど、わたくしは奴隷。ふふっ」
嫌だった奴隷という響きは、愛する相手が現れてからは甘美な響きとなった。
「ご主人様の命令には絶対に逆らえない。お〇ん〇んを喉奥まで押し込まれても、目隠しされて後ろから突かれても、イった後なのに無理矢理に犯されても、絶対に文句を言えない──ああ、酷い命令をされたいですね」
こんな歪んだ性癖を、主人であるエギルは受け入れてくれるかどうか……。
「……おっと」
赤くさせた頬に手を当てながら腰をクネクネさせてると、通行人に変な目で見られてしまった。
妄想だだ洩れの声までは聞かれてないだろうが、それでもここに長居するのは止めておいたほうがいいだろう。
エレノアは路地裏から出ると、
「少しずつ、わたくしのご主人様をドSなご主人様に調教しましょう」
いつかエギルに調教されるように、今は自分がエギルを調教しよう。そう決断し、この場を急いで立ち去る。
本来の目的は昼食を作るための食材の買い出しだ。
「早くお昼ご飯の食材を買って帰りましょう。エギル様に手料理を振る舞うのですから」
そして食材が売られているお店に到着した。
「エギル様に好きな料理を聞いておけば良かったですね」
食材を選んでもエギルの好みが分からないので悩んでしまう。
少し悩み、結局は色々なお肉の料理に決めた。もっと逞しい身体になってほしい。そういう邪な考えはあったが、おそらく喜んでくれるだろう。まだ出会って二日だが、料理が不味いと怒るタイプではではないというのは、エレノアがこれまで培った人を見る力でわかっていたのだから。
そして食材を買ってお店を出ると、
「おいっ! それは僕の奴隷だぞ!」
「あん? 俺が拾った奴隷だろ」
少し離れた場所から二人の男性の争う声が聞こえた。
奴隷という言葉に敏感になっていた。また自分のような奴隷絡みの争いかと。そして言い争いの声がした場所には二人の男性と、一人の女性がいた。
一人は貴族のような高貴な身形。もう一人は奴隷商人であろう小汚い服装。
そしてその間には奴隷服を着た女性。脅えた表情をした彼女を見て、エレノアは目を見開いた。
「もしかして……セリナ?」
ビクッと肩を震わせる奴隷の彼女。だがエレノアを見て、少しだけ表情を明るくさせた。
「……エ、エレノア」
彼女は同じ奴隷商人に捕まえられたセリナだった。
セリナは涙を浮かべながら、エレノアへと手を伸ばす。
「エレノア! お願い、助けてっ!」
「おい、売り物が騒ぐなっ!」
「それは僕の奴隷だ! 返せっ!」
エレノアよりも少し前に競り落とされて別れたセリナの肌には、幾つもの殴打の傷があった。
その痛々しい傷を見て──競り落とした主が最悪な奴だと理解できた。