裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
今日も《宝剣》のギルドと合流すると、連携の強化をしながら、一の門から二の門までのゴブリンを討伐していく。
「エギルさん、もう少し交代する展開を早くした方がいいですよね。動きが遅いゴブリン相手ならいいですが、他の魔物になったら心配で……」
「ああ、それなら――」
「セリナ、交代する時はギリギリで声を発した方がいいですよ。声掛けが早すぎると、勘の鋭い魔物なら気付かれてしまいますからね」
「そうね、もっと練習しないと駄目ね」
ゴレイアス砦の中へ入ってからの二人は、先程まで性行為について言い争っていた時とは違い真剣だった。ただ単純に切り替えが早いのかもしれないが、おそらくは、エギルが心配するほど二人は本気で言い争っていなかったのかもしれない。
「不思議だな」
二人が姉妹のように仲良しなのだから、心配するだけ無駄というものだ。
だからエギルは進捗について考える。
進捗については順調だ。
ただ一の門から二の門まではゴブリンしかおらず、先に行かないと魔物の強さは変わらないので、ゴブリン相手に遅れをとらないから順調、ともいえる。普通にしていれば、こんなクエストは一週間あれば終わるはず。
――だが、裏切り者は二日目になって行動を開始した。
それは夕刻。別の門を攻めていたギルドが帰ってきて全ギルドのメンバーがテントに集まり発覚した。
王国直属ギルドのリーダーであるエグヴェインは、神妙な顔つきで口を開いた。
「悲しい知らせだが、また裏切り者が姿を現した」
エグヴェインの言葉に周りがざわつく。今現在、このテントにいないのは一人。奴隷で構成されたギルド《断頭の一閃》のリーダー、ファビオラだけだ。
その仲間は困り顔をしている。そしてエグヴェインは言葉を続けた。
「見てわかるように、襲われたのはファビオラだ。私は少しメンバーから事情を聞きたいと思っている」
「……はい」
女の奴隷は頷くと、何があったのかを話し始めた。
「ファビオラ様と私たちは、《万能薬箱》の皆さんと一緒に東門から入って、一の門から二の門までのゴブリンを討伐していました。それで今日も、何の問題もなくゴブリンを討伐してたのです。……ですが、その帰り道で突然、迷路地帯に黒い霧が発生したのです」
その言葉に何人か反応したが、エグヴェインはそのことに触れず言葉を返す。
「黒い霧? それは毒のような物質か?」
エグヴェインが聞くと、オドオドとしたレリックが答えた。
「い、いえ……その霧はおそらく、ただの視界を悪くするだけの霧、だと思います。毒の効果があるなら、一緒にいた僕たちにも異変があると思うので……」
「なるほど。それで、その霧が発生した後はどうなったんだ?」
再び女の奴隷に視線を移す。
「私たちはすぐ近くの壁に固まって、霧が晴れるのを待ちました。ですが突然、ファビオラ様の叫び声が聞こえたのです」
「叫び声か。その時に襲われたのだな?」
「……霧が晴れた時にはもう、ファビオラ様は血だらけになって倒れていました」
ファビオラは自分のテントで眠っていて、まだ意識は戻っていないらしい。
「意識が戻ったら、ファビオラは復帰できそうか?」
「それは……」
「え、えっと……僕が応急処置した感じでは、傷口から考えて復帰するのは難しいと思います。今すぐにでも、ちゃんとした治癒師に見せた方がいいと思います」
レリックのギルドメンバーも同意見のようだ。おそらくレリックたちは傷を癒やす薬や、攻撃する薬を生成する職業に長けてるのだろう。彼らが言うことなら正しい。
そして話題は裏切り者の正体に移った。
「レリックさん。東門を侵攻中の皆さんは、ファビオラを襲った裏切り者の姿は見たんですか?」
ハルトの言葉に、レリックは首を横に振った。
「残念ですが、霧が晴れた時にはもう、ファビオラさんは襲われて倒れてました。怪しい人物も、見なかったです」
「んじゃ、決まりだな?」
口を開いたのは、サナとルナと同じギルドに所属する四〇過ぎのおっさん冒険者のゲイル。彼はニヤリと口角を上げると、レリックを見る。
「お前ら以外は全員ペアを組んで、それも別の門を攻めてたんだぜ? どう考えても、そのファビオラって奴と一緒にいた奴らが裏切り者さんだろ?」
「なっ、ぼ、僕たちじゃ、ありません……」
「じゃあ、そっちの奴隷ちゃんじゃねぇのか? 主が死ねば、奴隷なんて辞められるんだからよ」
「私たちじゃない! それに……奴隷具がある限り、私たちは主から逃れられない……それなのに、なぜ主を狙う必要があるんですか!?」
「まあ、理由なら色々とあんだろ。とにかく、怪しいのはお前たちだ。そうだろ、このクエストのリーダーさんよ?」
ゲイルの言葉を受けて、エグヴェインはゆっくりと頷いた。
「現状から考えると、そうなってしまうな……」
「ちょっと、エグヴェインさん!? 僕たちじゃない、ですよ……なにか、なにか方法があるはずです! 離れた位置から殺す方法――そうです、新種の職業があるはずですよ!」
レリックは周りを見渡すが、誰もその意見には同意してくれなかった。
それは皆が知っているからだ。そんな便利な職業はない。離れた位置から相手を襲える力なんてものはないと。そして、もしそんな便利な職業があれば。
「そんな便利な職業があるとすれば、そいつはSランク冒険者として固有職業を身に付けてる者じゃな。我らとは、レベルが違う存在なのじゃ」
相変わらずニコニコとした表情のレヴィアは言う。
Sランク冒険者になった恩恵である固有職業の能力は公にはなっていない。なのでエギルの能力も、他のSランク冒険者の能力も、その全てを知っている者はほとんどいないだろう。だから、この理解不明の襲われ方は、Sランク冒険者の仕業かもしれない。そして、
「Sランク冒険者って……そんな奴に狙われて勝てるわけないじゃないか!」
初参加である《海竜の夢》のリーダーは声を張り上げた。怖いのだろう。握った拳は震えていた。それに他の連中も、言葉にはしないが意見は同じのようだ。
「もう今日は遅い。明日の朝、出発する前にもう一度ここに集合しよう。その時にこれからの方針を決める。それでいいか?」
エグヴェインがそう全員に問いかけると、各々が頷き、テントを出る。