※この作品はR-18です。

裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る   作:柊咲

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第20話

 

 待っても、返事はなかった。

 

 

 

「エレノア、セリナ、フィー。無事か!?」

 

 

 

 だから先に三人に声をかける。すると、バラバラの方向から返事が届いた。

 

 

 

「わたくしは大丈夫です」と右斜め後ろからエレノア。

「私も大丈夫です! 何も見えないですけど」と少し離れた前方からセリナ。

「なんとか」とエギルのすぐ横からフィー。

 

 

 

 三人は無事だが、ハルトの声はまだしない。

 迂闊に剣を振ることも、動くこともできない。

 

 

 

「エレノア、風の聖獣を召喚できるか?」

「大丈夫ですが、周りが見えないので皆さんに当てる可能性があります」

「極力威力は弱めてくれ。この黒い霧を風で流す程度でいい」

「わかりました」

 

 

 

 濃霧は何処かに発生源があるわけではなく、一度発生させれば永遠に生まれる霧だ。この霧を消すには、吹き飛ばして視界を晴れさせる必要がある。そこでエレノアの聖獣の力が使える。

 

 

 

「風の聖鳥よ、暗雲立ち込めるこの世界を、大いなる風でなぎ払う力を与えよ──称呼──エアリアルバード!」

 

 

 

 エレノアの声がする方向。ふわっと広がったエメラルドグリーンの光は、丸く一点に変わり、それは天高く飛行した。

 

 

 

「風の鳥さん、なるべく弱く、なるべく優しい風でお願いしますね」

 

 

 

 というエレノアの頼みを聞いたエアリアルバードは、全体に温かくて心地よい風を発生させた。

 普段は敵の肌を斬り刻む刃の風。その威力を弱め変えることに成功したようだ。そして黒い霧は頭上から徐々に晴れていき、次第に全体が見えるようになった。

 ホッとしているエレノア。

 剣を持って周囲を警戒するセリナ。

 目蓋を閉じているフィー。

 だが一人だけ、いなかった。

 

 

 

「ハルト、どこに行った!?」

 

 

 

 ハルトの姿は近くになかった。返事もない、まさか、

 

 

 

「……逃げたよ」

 

 

 

 と、フィーが小さく一言。

 

 

 

「……そうか。やられたわけじゃ、ないんだな?」

「そう。この子が教えてくれた」

 

 

 

 フィーが抱きかかえてるのは、小さな黒猫。

 まだ子供だろう。ただ落ち着いてる雰囲気から察するに、フィーが操作してる動物なのは間違いない。

 

 

 

「暗いとこでも見える猫か。それで、ハルトはどこに逃げたんだ?」

「あっち」

 

 

 

 と来た門を指差す。

 

 

 

「ここを出ようとしてるのか……。まあそれでいい」

 

 

 

 ここでハルトを責めることはできない。それに止めても彼は先に進めなかっただろう。そうすれば、エギルは彼を置いて先へは進めなかった。

 

 

 

「フィー、ハルトの側に置ける動物は残ってるか?」

「フェンリルくらい。他は別のギルドの監視をしてる」

 

 

 

 黒猫はフェンリルという名前らしい。

 

 

 

「なら、その猫をハルトの監視に付けてくれ。それと、何か危険があったらすぐに報告してくれ」

「わかった。行って、フェンリル」

 

 

 

 フィーは小さく頷くと、フェンリルを優しく地面に置き走らせる。

 

 

 

「ハルトには申し訳ないが、ここで引き返すわけにはいかない。ここで引き返せば、ハルトの望みも、エレノアの目的も、ここへ来た目的が果たせなくなる」

 

 

 

 ハルトを心配して助けに行ったところで、彼の仲間への無念を晴らす目的は果たせない。であれば、裏切り者の正体を知り、代わりに仇を取るのが、ハルトのためにもなるはずだ。エギルはそう思い、フィーを見やる。

 

 

 

「フィー、濃霧を発生させた奴を見たか?」

「……見た。オーガ種だと思う」

「オーガ種か」

「エギルさん、オーガ種って朝、《宝剣》さんたちが言ってた魔物のことですか?」

「ああそうだ。だがなんで襲ってこなかったんだ……? 隙はあったと思うんだが」

 

 

 

 視界を奪って隙はできた。ならばエギルたちを襲ってくるはず。なのに襲ってこなかった。というより、もうこの場には謎の職業の力を使った魔物はいない。すると、フィーはエギルをジッと見る。

 

 

 

「たぶん、顔を見に来たんだと思う」

「顔を? 俺たちのか?」

「ううん、わたしたちじゃなくて──エギルの」

「俺の? なんで俺単体なんだ?」

「……わからない。けど、エギルをずっと見てた。たぶんわたしと一緒。操作してるモノの目を借りて見ることができるんだと思う」

「俺を見てたか。理由がわからないな。だが、操作してる奴がいる、で正解か?」

「たぶん……。それと、他が危ない」

「他のギルドの連中のとこにも、謎のオーガ種がいるのか?」

「いる。急がないと、やられちゃうよ。エギルの心配してた双子も」

 

 

 

 フィーはエレノアをジッと見つめる。

 

 

 

「あなたの目的の連中も」

「あら、わたくしの目的もご存知なんですね」

「ずっと見てたから」

 

 

 

 二人はまだ全くと言っていいほど話してない。なので会話という会話も、これが初めてだろう。エレノアは目蓋を閉じて嘘くさい笑顔をフィーへ向ける。

 

 

 

「ずっと、ですか。ストーカーのセンスがありますね」

「……得意分野」

「素晴らしい得意分野です。その得意分野に今は感謝しております」

 

 

 

 会話から何か推測できたわけではないが、おそらく二人の中で解決したらしい。

 

 

 

「フィー、怪しい行動をしてる奴はいるか?」

「……いない。東門は戦闘中。西門は劣勢。それと南門の二ギルドは先に進むことを決めたらしい」

 

 

 

 東門にレリック。西門から進んでいるのは、エレノアの幼なじみのいるギルド。南門がサナとルナ、それに王国直々のギルドがいる。エギルは少し考え、

 

 

 

「よし、西門から進むぞ。……いいな、エレノア?」

 

 

 

 助けるわけではない。

 全てを終わらせるために向かうだけ。

 そしてこの質問は、エレノアの覚悟を聞くためだ。

 

 

 

「心配してくれてありがとうございます。ですが大丈夫です。やっと……やっと、終われます」

「……ああ、そうだな」

 

 

 

 エレノアは笑った。

 いつもは笑顔から喜怒哀楽が読み取れるのだが、今だけは全くわからない。

 嬉しいのか、悲しいのか。はたまた会うのが怖いのか、憎悪の気持ちで一杯なのか、エギルには何もわかれなかった。

 

 

 

「よし、行くぞ」

 

 

 

 だからそれ以上は何も言わず、エギルは走り出す。

 

 愛する彼女の、決着の場所へと——。

 

 

 

 

 

 

 

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