裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
誰もが羨むお姫様という生まれは、その立場に生まれた者からしてみれば良いものではなかった。
ただ国王の娘に生まれただけなのに、何年、何十年も先に生まれた大人たちが、エレノアに媚びを売るように笑顔を向けた。幼いころは何も感じなかった。だが彼女自身が大人になればなるほど、その笑顔は偽物だとわかった。
エレノアが話しかければ誰もが彼女の言うことを肯定し、褒め称え、また媚びを売るような笑顔を作る。
それが怖いと、エレノアは思った。
——けれど彼女にも、気を許せる者がいた。
ムスリナ、クルド、モルドレット。王国に仕える騎士の子供に生まれた三人だけは、エレノアを怒り、共に泣き、正真正銘の笑顔をくれた。
だからエレノアは、お姫様として生まれた自分にも心を開いてくれる者はいるのだと知った。そして周りの者とは違う三人を——信じてしまった。
三人は自分に媚びを売るような笑顔は見せない。三人だけは自分をお姫様扱いしない。
それが嬉しかった。ただそれだけ。
なのに。自分の首に奴隷具が付いたあの日。
三人はエレノアに、この時を待ちわびたと言わんばかりの笑顔を浮かべて、彼女のもとを去っていった。
どうして。
その言葉を投げかけても、三人は振り返ることはなかった。ただ今までの思い出をその場に捨てたように、記憶から綺麗さっぱり、エレノアのことを消し去った。
それからの日々は地獄だった。
信じていた幼なじみには裏切られ、奴隷商人は、自分を見て気味悪く笑う。信じてたのに裏切られた。仕方ない。それが自分の運命なのだと、エレノアは自らの人生を諦めた。死んでもいいとまで思えた。
——もう人間を信じられなくなった。
しかし、全てを失ったエレノアに救いの手が伸びた。
同じく奴隷となったセリナ、そして自分だけを見て支えてくれるエギル。
セリナと一緒に居たら次第と笑顔になった。エギルといたら心が温かくなった。
エギルを心から愛し、彼も同じく求めてくれる。身体を重ねれば、温かくて、安心できて、幸せを全身で感じられた。
——けれど、どんなに笑っても、抱かれても、心には微かに憎悪の感情が燃えていた。消えてほしい。幸せなんだから。もう解放して。そう思っても、エレノアの心の中からは三人への恨みの心が消えてくれない。
——だけどその感情も、今日で消えてくれるはずだ。
——あの日から今日まで、ずっとこの日を待ち続けた。
待って、待って、苦しい日々を耐え抜いた。
そしてようやく——この時を迎えた。