裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
日も沈んだ頃。エギルは家に帰ってくるなり目を丸くした。
「……これは、どうしたんだ?」
出掛けたときとは違って、家の中は派手な装飾で彩られていた。そんな変わり果てた我が家をみて困惑してるエギルに、エレノアとセリナが駆け寄る。
「エギル様、おかえりなさいませ。少しパーティーをしようと、皆さんで準備をしたのです」
「おかえりなさい、エギルさん。どうです、パーティーらしくなってますよね」
「あ、ああ」
フィー、それからサナとルナもエギルの元に集まってくる。
そしてテーブルには、五人の彼女たちが作った豪勢な料理が並べられていた。
「ささっ、座ってください」
エギルはテーブルへと迎え入れられると、
「いただきます!」
「いただきます」
まだ状況を掴めていないエギルだが、彼女たちの圧力に押されて食事を進めていく。
料理はどれもこれも美味しい。誰が作ったのかを考えると、真っ先に浮かんだのはお嬢様としてあらゆることを学んできたエレノアと、よく家で料理を作ってくれるセリナだった。
二人が率先して料理を作り、他の三人がそれを手伝ったのだろう。
そう勝手に決めつけていたエギルだが、
「まさか、フィーさんが料理上手だとは思いませんでした。どこかで作ってたのですか?」
というエレノアの言葉に驚き、フィーを見ると、彼女は両手でパンを持ちながら少し誇らしげにしていた。
「……皆に、料理を作ってるから」
「皆?」
「……ん」
フィーは地面を指を差す。
そこにいたのは白ウサギから始まり、猫や鳥、それに小さなハムスターまでいる。
彼ら彼女らも人間と同じ料理を食べている、フィーの家族であり、フィーの力となってくれる動物たちだ。
「動物が人間のご飯を……」
そんな馬鹿な。そう思ったエギルだったが、確かに動物たちは同じご飯を食べていた。
どうしてこうなったのか、どんな風に料理を作っていたのかなど。六人のパーティーは終始、明るく和やかな雰囲気で続いた。
「さて、食事も終わったということで。わたくしたちは準備がありますので、エギル様は部屋でお待ちください」
「え、エレノア? どういう――」
背中を押されて部屋へとはじき出されるエギル。
今だけは、大きな体が弱々しくて、主従関係が逆転してるようだった。
「さて、ここからが本番ですよ」
戻ってきたエレノアは宣言する。
前に出したセリナの手の中には五枚の薄く長い細紙。
それを五人は同時に引いて、手元で隠されていた番号を確認した。
どういうことかわからず困惑しているエギル。
すると、コンコンと扉がノックされ、「……どうぞ」と反射的に伝えると、扉がゆっくり開く。
「し、しつれい、します」
恐る恐るといった雰囲気で入ってきたルナはもじもじと、背中に両手を回して、何か隠してますよ、と言っているかのように後ろを見せないようにエギルが座るベッドまで近付く。
「隣に座っても、いい、ですか?」
「あ、ああ、座ってくれ」
普段から大人しく少し落ち着きのないルナ。
今日はその挙動不審な感じが増して、何やら不穏な空気を感じる、
そして隣に座った彼女は、ふぅ、と長い息を吐くと、後ろに持っていた赤色の箱を前に出した。
「これ、プレゼントです」
「プレゼント? なんのだ?」
「……わからないですけど、みんなが渡すって……。それにわたしも、エギルさんに助けてもらったお礼、したいなって……思いました」
「そうか。ありがとう」
赤色の箱は綺麗にリボンでラッピングされている。
大きさは人の顔くらい。エギルはそのリボンを外していき、丁寧に包まれた包装紙を外していくと、箱の中から出てきたのはクマのぬいぐるみだった。
それを取り出して全体を見るエギル。普通のぬいぐるみだ。
エギルが不思議そうにしてるのを見つめるルナは、顔を真っ赤にさせて、普段から前髪で隠された瞳をウルウルと揺らす。
「な、なな、何がいいのか、わからなくて……やっぱり、いや、でしたよね。クマちゃんの、ぬいぐるみなんて……」
「いや、そんなことないよ。ありがとう、ルナ」
頭を撫でると、ルナはニコニコと嬉しそうにはにかんだ。
「じ、実は、ですね。わたしは動物の中で、クマちゃんが好きなんです。それで――」
それから一時間、二人はお互いのことを知ってもらうように話をした。
コンコン。
「どうぞ」
流れはルナとの一件でエギルも読めた。
持ち時間は一人一時間程度。よくわからない順番で彼女たちは部屋に訪れる。
そして次に入ってきたのは、愛するペットを連れてきたフィーだった。
「次はフィーか」
「……そう」
普段から無口な彼女はベッドの隣に座るなり、抱きかかえていたペットたちを部屋中に解放した。
暴れるように動き回る動物たち。そして一瞬にして、部屋中が獣臭に包まれる。するとフィーに小さな箱を渡された。
一切装飾されていない箱。飾らない感じがフィーらしいなと、エギルは心の内で微笑んだ。
そして中を開けると、そこには多種多様の餌が入っていた。
「これは?」
「……皆のエサ。皆が食べてると、わたしは笑顔になれる」
「エサか……」
先程まで手料理を食べていた動物たちに、まだ何か食べさせようとするのか。
エギルは少しだけ、フィーが愛情を注ぐときに強引で、尽くすタイプのように感じてしまった。
「……エギルも、皆にあげてみて」
「ああ。こうか?」
「うん。手のひらにエサを乗せたら、皆が寄ってくる。どう、安らぐでしょ」
たしかにフィーの言う通り、動物たちにエサをやったことのないエギルにとって、この動物たちにエサをやるのは落ち着いて、少しだが和む。
今までには無い体験。特に会話らしい会話はなかったが、エギルにとっては良いプレゼントとなった。
コンコン。
「はい、どうぞ」
「おじゃましまーす。って、何か獣臭い」
まだ獣臭がする部屋に明るい声色が響く。
どうやら次はサナのようだ。ずっと大人しい二人が続いていたから、エギルの中で新鮮という言葉が浮かぶ。
彼女はニコニコと、嬉しそうな表情をしながらエギルの隣にぴょんとお尻からダイブする。
その反動でエギルの体がふわりと浮き、二人の体が寄り添う。
「この部屋、なんか凄い獣臭するね。前ってたしかフィーさんだよね? どんなプレゼントを渡されたの?」
「動物たちのエサやりだな。意外と癒やされたよ」
「へえ、そうなんだね。たしかにフィーさんの飼ってるペットたち……ああ、家族って言わないと怒られるんだった。フィーさんの家族って人懐っこいよね」
「ああ、そうだな」
「たしか名前が──」
他愛もない世間話が続く。
なのにサナは、背中に隠したプレゼントを出そうとはしない。
五分、一〇、一五分。
世間話のような軽い会話だけで時間は進んでいく。
そしてモジモジと、サナは背中で隠したプレゼントを渡すタイミングを伺ってる。
「何か、くれるのか?」
エギルがそう聞くと、パアッ、と明るい表情になり、何度も頷きながら水色の小さな箱を前に出した。
「えっとね。アタシってプレゼントとか渡したことないから、どんなのが喜ぶかわからなかったんだけど、アタシなりに選んだの、だから良かったら……」
そう言って遠慮がちに渡すサナ。
箱を開けると、中に入っていたのは小さなガラス細工の可愛らしい天使の置物。
「これは?」
「あんまお金無いから、屋台のおじちゃんに値切ってやっと買えたの。透明で綺麗だなって。アタシ、こういう綺麗な物が好きなんだよね」
サナはそう言って「エギルさんは、あまり好きじゃない? こういうの」と不安げな表情をする。
エギルは、あまり夜景や綺麗なモノを見て喜ばない。だが今だけは、彼女の優しさや、彼女の笑顔が、エギルにとって嬉しく思えた。
だから頭を撫で、彼なりの優しい笑顔で言葉を返す。
「いいや、俺も好きだよ。何よりサナが買ってくれた物だから、俺は嬉しいよ」
「ほんと? 良かった……。えっとねえっとね、これね──」
渡そうか渡さないか不安気にしていた姿はもうない。
自分がプレゼントした物の説明する彼女の表情は、いつになく生き生きと、楽しそうにしていた。