裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
コンコン。
残りは二人。
エレノアとセリナ。
そして入ってきたのは、
「エギルさん、起きてますか?」
セリナはドアノブに手をかけ顔だけを覗かせ、恐る恐る中へと入ってくる。
「いや、寝てないぞ。なんでだ?」
「いえ、もう夜遅いですから、眠たいかなって」
心配してくれるのは彼女の性格か。
優しい。ちょっとした様子にも気付いてくれるから、エギルは嬉しくて笑顔になってしまう。
そして隣に座る前に、セリナは部屋の明かりを消した。
「皆からのプレゼントはどうでしたか?」
「もちろん嬉しかったよ。なんか個性があって、それぞれの性格が出てたな」
「ふふっ、そうなんですね。皆とは別々に購入したんですけど、私も被らないようにしないとな、と思って選んだんです。どうですか? 被ってないですか?」
ベッドに座るエギルの前に小さな台を用意して、その上に一本の蝋燭が置かれる。
そして火が灯されると、部屋中がオレンジ色の光に包まれ、鼻から甘い匂いが感じられた。
「これは?」
「特殊なロウを使って作られた蝋燭だそうです。リラックス効果があるそうですが、どうですか?」
「ああ、凄くいい匂いだよ」
「ちょっと横になってみましょうか」
隣に座ったセリナはエギルの袖を掴んで横になる。
そしてエギルも、ベッドの上で横になる。
寝転ぶセリナは体を密着させて、エギルの肩に自分の顔を寄せてスリスリする。
「形に残る物がいいかなとは思ったんですけど、やっぱり他の皆と被らないのがいいかなって」
「たしかにこれなら被らないな」
「ですよね。こうやって横になってゆっくりとしてると気持ちいいですよね? ……って、これじゃあ嬉しいのは私ですね。まるで私へのプレゼントみたいです」
「いや、俺もこうしてるのは好きだよ。ありがとう」
「いえいえ。こちらこそありがとうございます」
セリナはそう言って、目蓋を閉じた。
「それにしても、なんでいきなりパーティーをしようとか、プレゼントを渡そうとか思ったんだ?」
「……それはもちろん、皆がエギルさんに感謝してるからです。こうして皆で笑って居られるのは、全てエギルさんのお陰ですからね」
「別に。俺がそうしたいから、そうしただけだ。……というより、セリナはいいのか?」
「何がですか?」
「行きたいとことか、やりたいこととか、何かなかったのか?」
すると、セリナは「んー」と唸り、
「やりたいことは、あったと思います。お父さんとお母さんの畑を大きくしたり、家畜をもっと飼ったり。だけどそれはもう叶いません。あとは……」
目蓋を閉じたセリナは、少し間を空けてから言葉を続けた。
「離れ離れになった二人の妹、あの子たちとずっと一緒にいたかったなとか、思いますね」
「……妹が、いたんだな」
「あっ、ごめんなさい。今のは忘れてください……」
エギルにとっては初耳の話しだった。
隠していたわけではない。むしろ聞いていれば、すぐに話してくれたはずだ。
ただ彼女自身、これまで名前を出さなかったのは、自分を救ってくれたエギルにこれ以上の気遣いをさせたくなかったからだろう。
ただでさえ、エギルは周りの人間の力になろうとする。
エレノアとセリナ、そして新しく加わったフィーやサナとルナが困っていたら、彼は無償で手を貸す。
だからきっと、セリナは言わなかったのだろう。これ以上負担をかけないように。
「知り合いに見た奴がいないか声をかけてみる。俺も見つけだすのに全力を尽くすから。名前はなんていうんだ?」
だが聞いてしまった以上、エギルはセリナの二人の妹を救おうと全力を尽くすだろう。
そういう男だとセリナも知っていた。だからそれを再確認してなのか、セリナは顔を隠すようにエギルの腕をギュッと掴む。
「……シロナと、クロナです。エギルさん、ありがとうございます……」
コンコン。
「エギル様、失礼しますね」
最後はエレノア。
彼女は礼儀正しくお辞儀をすると、そのままゆっくりと隣に座る。
「皆さんからのプレゼントはどうでした?」
「凄く嬉しかったよ。それに、いろんな話ができた」
「それは良かったです。企画して正解でしたね」
「もしかして、エレノアが考えたのか?」
「はい。ゴレイアス砦から戻ってからも色々な事がありましたからね。エギル様が忙しそうにしていて、あまり皆さんとお話をしてなかったように見えたので、少しでも、皆さんと二人っきりで話す機会があればなと、そう思ったのです」
「そうだったのか……。たしかに最近は忙しくて、皆とあまり話せなかったな。すまないな」
「いえいえ。ただ、最後の順番は貰いましたけどね」
目蓋を閉じてにっこり。
「まさか、そうなるように仕向けたのか?」
「いえいえ、そんなことはしませんよ。それにセリナがクジで決めようと言ったので不正はできませんでしたから。運が良かったのかなと」
「なんか怪しいな……」
「もう、エギル様はわたくしのことをなんだと思ってらっしゃるのですか?」
エレノアは膨れっ面で言う。
そして、二人は同時に笑った。
エレノアとの出会いは偶然だ。だけどエレノアを見て、エギルは一瞬で好きになってしまった。傷を負った者同士が一目で通じ合った。そんな運命的な理由ではないだろうが、エギルがエレノアに何かを感じたのは間違いない。
「そうそう。わたくしからもプレゼントです」
エレノアはそう言うと、少し日に焼けた黄色の花びらの栞をエギルに渡した。
「これは?」
「そうですね。わたくしはプレゼントというものを今まで一度も渡したことがなかったので、エギル様が何を欲しいのか、何を渡したら喜ぶのか、そう改まって渡す物を考えても見つかりませんでした。なのでわたくしが一番大切にしていた物を、エギル様にあげようかなと思いました」
「それがこの栞か? 一番大切にしてる物を俺が貰っていいのか?」
「ええ、その花びらの名前は『エレノア』といって、わたくしと同じ名前なのです。今はもう無くなってしまったお花なので、もしかしたらそれが最後の一輪だったかもしれません。それをエギル様に持っていてほしいのです」
そう言って、エレノアはエギルの両脚の間に座った。
「そのお花をわたくしだと思って――といった重い女性のセリフは言いませんが、ずっと大切にしていた物を、これからずっと慕い続ける方に持っていただければ、わたくしは嬉しく思います」
「エレノア……」
「まあ、貧乏なわたくしの精一杯のプレゼントですよ」
顔を上げたエレノアはエギルにキスをする。
Sランク冒険者という偉大な存在であるエギルだが、色々な事情があって悲しいことにお金がない。なので一緒にいる彼女らも必然的に、裕福な生活 を送っているわけではない。それでも、こうして各々が手料理を振る舞い、各々が悩んだプレゼントを渡す。お金などは関係なく、エギルにとってはそれが嬉しく思えた。
「プレゼントなんて貰ったのは、いつ以来だろうな」
「これから沢山、貰うことも、あげることもありますよ。ずっと一緒にいますから。わたくしも、皆さんも……」
再びキスをした二人。
そして全てが終わり結果発表――となる予定だったのだが、エギルが誰のプレゼントが一番良かったのかなんて一人を決められる男ではないのは、最初から彼女たちは理解していた。
だから「誰のプレゼントが一番良かったですか?」なんて無粋な質問をすることもなく――つかの間の休息──お互いの関係の構築のイベントは平和的に終了することとなった。