裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
──その日の夜。
エギルはエレノアたちに伝える前に、ゲッセンドルフとハボリックに伝えた。
住民区にある家屋の狭い部屋に男三人。安酒を喉へ流し込むゲッセンドルフは短く言葉を紡ぐ。
「他の大陸、ですか……」
彼はボサボサの黒髪を触り、胡散臭い表情を更に胡散臭くさせ、んーとずっと唸っていた。
「あまり賛成できないか?」
エギルがそう聞くと、
「考えとしては、エギル様の意見もアリかなと思います。ただですね、いざシュピュリール大陸へ行ったものの、話しができる相手じゃなかったら……そう考えると、簡単に背中を押せなくて。なにせ、向こうの大陸の情報は噂程度でしか聞いてませんからね」
「まあ、そうだな」
「でもでもー」
酒が注がれた小樽を左手で持ち、骨付き肉をかぶりつくハボリックは、ニコニコと猫のような笑顔を振りまく。
「正直なとこ、このままじゃマズくないっすか? 大きな拠点をゲットしても暮らす人がいないと、冒険者であるゲッセンドルフさんたちも、仕事を持ってくる俺たちも暮らせないっすよ。何か手を打つなら、大きな賭けに出た方がいいと思うんすよ」
「お前な……エギル様だってそれぐらいわかってるんだよ。だが急いだって上手くいくとは限らんだろ。楽観的すぎんだよ、お前は」
「えぇー、ゲッセンドルフさんが難しく考えすぎなんすよ。固い、固すぎるっすよ。顔に似合わず!」
二人の意見はどちらも正しい。
急いで決めても上手くいくとは思えない。どんな場所かもわからない大陸へ行き、見知らぬ人々に、エギルの願いは届くのだろうか。
そもそも話を聞いてくれるのか、危害を加えられないだろうか、そういった不安はある。
ただ、ハボリックが言ったように、どこかで賭けに出なければ何も変わらないだろう。
エギルは今の今まで悩んでいた。そんないつものような男らしさのない表情を見て二人の表情には笑顔が生まれる。
「まっ、決めるのは旦那っすよ」
「その通り。エギル様がどうしたいかですよ」
「俺か……?」
そう聞かれて、エギルは少し考えてから答える。
「俺は行動したい。このまま訪れるかわからない可能性を待つよりも、自分の手で掴みたいんだ。ここで暮らすみんなが安心して暮らせる場所を作るためにも……」
そう伝えると、二人はニヤニヤと笑った。
「んじゃ、そうするといいっすよ。俺たちはここで、旦那の最高の報告を期待して待ってるっすから」
「エギル様が帰ってくる場所は、自分たちが必ず守るんで安心してください」
「お前ら……」
そんな時だった。
──コンコン。
不意に扉が叩かれた。ハボリックが開けると、
「お迎えですよ、エギル様」
「飲み過ぎてないですよね?」
そこにいたのは、エレノアとセリナだった。
「もうか?」
まだ飲み始めて一時間といったところだが、そう疑問に思う。
「はい、もうです。何かわたくしたちに報告があるのかと待ってたんですよ」
どうやら、フィーが二人に話したのだろう。
「そうか。それじゃあ、ここは二人に任せるな」
エギルは立ち上がり、背中を押してくれた二人の仲間に声をかける。
「任せるっす。手の空いてる冒険者を雇って、ここは死守するんで」
「海岸から向かうなら手は打っておきますので。そうですね、出発は明日の夜でお願いします」
「ああ、わかった」
ゲッセンドルフとハボリックに別れを告げて後にする。
廃城へ向かうまでの道のり。エレノアとセリナはピッタリとエギルの両隣りを歩きながら、黙っていた。
「三人はもう寝たのか?」
「はい。サナさんもルナさんも、掃除中にはしゃいでましたから。疲れたみたいです」
「フィーは自分の部屋でペットたちに必要以上の餌をあげてると思いますよ」
「あいつ、またか……」
苦笑して、また沈黙が生まれる。
いつもならみんなで今日あった話なんかをするのだが、今は静かにエギルからの言葉を待っているようだった。
エギルは歩きながら二人に伝えた。
「……話は聞いてると思うが、シュピュリール大陸に行ってこようと思う」
エギルの言葉に、二人は黙ったまま頷いていた。
「このままここにいても、何も変わらない。打てる手は打ちたいんだ。二人や、他のみんなには迷惑をかけるかもしれないが──」
その言葉を、二人は腕を組んで止める。その表情は月夜に照らされ美しい笑顔だった。
「エギル様がみんなのためを思って出した答えなら、わたくしたちは背中を押します」
「そうです。私たちもできることをして待ってますから」
「……二人とも」
「ですが、約束してください」
「ちゃんと私たちの……待ってる私たちのいるこの場所に、必ず帰ってきてください」
深くは聞かず、ちゃんと背中を押してくれる。
だから安心できて、この自分の居場所へ帰ってきたいと思う。
「ああ、約束する。絶対にここへ帰ってくる」
それだけを伝えると、彼女たちは嬉しそうにエギルの腕に顔を埋めて、三人はこの時間を長く堪能するように、ゆっくりとした歩幅で城へと歩いていく。