裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「それじゃあ、行ってくる」
次の日の夜。
エギルとフィーの出発を、多くの冒険者たちと、エレノアたちが様々な表情で見送ってくれた。
「エギルさんっ! 俺、おれっ!」
「なんで、ハルトが泣いてるっすか!」
ハルトが盛大な男泣きを見せ、ハボリックや冒険者たちが茶化すように笑う。
一方、ゲッセンドルフは、
「エギル様、忘れ物はないですか? 海岸に行ったらまず──」
「お前は俺の妻か?」
見た目とは正反対な良妻っぷりで心配そうにしている。
「エギルさん、待ってるからね」
「エギルさん、気を付けて、くださいっ」
「ああ、サナとルナも、あまり掃除を頑張りすぎないようにな」
サナとルナが、涙目になりながらエギルに抱きつく。
──そして、エレノアとセリナはジッと、エギルを見つめていた。
「……行ってくるな」
そう伝えると、二人は小さく頷く。
「はい、いってらっしゃいませ」
「いってらっしゃい、エギルさん」
声が微かに震え、目元にはうっすらと涙の粒が見えたが、二人はそれには触れず、ジッとエギルから目を離そうとはしなかった。
結局のところ、最後まで二人はエギルに弱い部分を見せなかった。
それがきっと、二人が考え抜いた最良の見送りなのだろう。けれど本心では寂しく思ってるのだとわかり、エギル自身も、みんなと離れるのが辛く、こんなにも寂しいものだと気付かされた。けれどそれを表情に出しては、二人も安心させて見送れないだろう。
「……必ず戻るから。ここは頼むな」
エギルは小さな声で伝え、みんなに背中を向ける。
これは別れではない。結果と共にこの場へ帰ってくる一時の旅立ち。
そんな気持ちを背中に込めたことは、はたしてみんなに──あの二人に届いたのだろうか?
エギルとフィーは歩きだす。一歩、また一歩と前へ。
「──エギル様!」
だが、ふと遠くから呼び止められた。
「必ず帰ってきてください! ここは……この、みんながいる場所は、あなたが──二人が帰ってくる場所ですから!」
振り返ると、エレノアは大粒の涙を流しながら叫んでいた。
その隣に並び立つセリナも、目元を拭っていた。
見てよかったのだろうか。そう考えたが、エギルは手を上げた。
「ああ、帰ってくる。俺とフィーと、この場所で暮らしてくれる者たちで」
これ以上の言葉を伝えれば、きっと、前へ足が出せなくなると思った。
それはきっと、見送る側の二人も同じだろう。突如として幸せを奪われた経験を持つ彼女たちにとっては、エギルと離れることはとてつもなく苦しくて怖い決断だっただろう。本当なら、行かないで、そう叫びたかったはずだ。
──けれど、その恐怖よりも信頼が勝ったのだと思う。
だからエギルも、帰ると約束して前へ進む。希望への道へ。