裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
シュピリール大陸に上陸した翌日。
エギルはフィーと共に、この湖の都を華耶に案内されていた。
昨日、エギルとフィーが泊まった『御殿』から出ると、橋で繋がれた家屋を忙しなく行き来する人たちの様子を見ることができた。
「ここで暮らしている住民は、一〇〇〇人ぐらいね。フィーちゃんがいたときより減ってるわ」
「四つの領土に分かれた大陸の一つにしては、少ないぐらいか」
「そうね。大陸で一番力を持ってるのは終の国。ここよりも、もっと多くの人口がいるわね。昔は均等だったけど、安全な場所を望む人が多くて、強い国にみんな移住してしまうの」
「それはいいのか?」
要するにそれは裏切り。エギルの問いに、華耶は苦笑いを浮かべる。
「ここが安全な場所だと思ってもらえなかった、ただ……それだけのことよ」
エギルは華耶の顔を見て、小さな声で謝る。
「すまない。変なことを聞いた」
「別にいいわよ。……ねえ、私はこの大陸でしか暮らしてないから、他の大陸のこと聞かせてもらえる?」
「ああ、構わない」
別大陸に興味を持ってくれるなら、そう思いエギルは自分たちの大陸について説明した。
フェゼ―リスト大陸に魔物という共通の敵が生まれたことで人々が協力していること、それに対抗するために職業の力を身に付けた冒険者たちがいること。他にも華耶たちの着ている服装がとても珍しく、家の中で靴を脱ぐ習慣がないことなどを丁寧に話すと、華耶は興味深そうに終始頷きながら真剣な眼差しで聞いていた。
「……じゃあ、そっちは人同士の争いは少ないってことなのね」
「ああ、ここに来てまだ一日だが、おそらく人間同士の争いはここより少ないと思う」
「人同士が争う代わりに、魔物が溢れてるってこと?」
「ああ、そうなるな」
「……そう。どちらも敵はいるってことね」
「そうだが、魔物相手だと人とは違って少しは気持ちの面で楽かもしれないな」
「……そうね、できることなら、私も相手は人じゃない方がいいかしらね。人を殺めたら、嫌ってほど『死』を感じるもの」
「……そうだな。自分も相手も、死にたくないと必死だからな」
華耶は黙って頷く。人間同士の争いは、魔物を相手にするよりも厄介だ。死に直面すると魔物も苦しむが、理解できる言葉で訴えかけてくることはない。それが人間だと全身に伝わってくる。しかし、相手が襲ってくるなら、やるしかない。同情から手を抜けば、自分の命や、大切な者の命が奪われるのだから。
「ん、あれは……?」
重くなった空気を払うように、エギルは住民の姿を指差す。
「あれは私たちの大陸に伝わる格闘術の一つよ。フィーちゃんから聞いてない?」
エギルが指差したのは、住民たちが格闘術を学んでる姿だった。
「……わたしは言った」
「……そうだったな」
フィーが「忘れてたの?」と言わんばかりの眼差しで見つめてきたため、エギルは頭をかきながら、遠くの空を見上げる。
「格闘術を心得てるってのは聞いたが、そこまで深くは聞いてなかっただろ?」
「そうだったかも」
どうやら、フィーは納得してくれたようだ。エギルは話を戻す。
「その格闘術は誰もが学ぶ必要があるんだな」
そこには小さな子供、腰の曲がった老人と様々な年代の者がいた。そして、華耶はエギルが抱いた疑問の意味を理解したのか、前へ歩いてく。
「若い者も老いた者も関係なく戦う……それが、ここでの普通なのよ。近くで見る?」
そう聞かれ、少し考え首を左右に振った。
「いや、邪魔になりたくないからここで構わない」
本当の理由は、訓練中の彼らのエギルを見る視線に敵意を感じたからだった。
勘違いかもしれない。けれど、人同士の争いが絶えないここでは、余所者であるエギルに敵意を向けるのは当然かもしれないとも思う。
そんな時だった。
「──華耶様!」
華耶の元に男性が慌てた様子で走ってくる。
「どうしたの、そんなに急いで」
「そ、それが……」
男性は華耶に耳打ちをする。
すると、華耶の表情は険しくなった。
「また……。あの二人も来てるの?」
「いえ、姿はないとの報告です」
「わかったわ。わたしもすぐ行くから、手の空いてる者も急がして」
「わかりました!」
男性が足早に立ち去る。
「どうかしたのか?」
「……終の国が攻めてきたのよ」
そして華耶は、何かを考えてるのか、少し返事を遅らせてから、
「ここの現状を知るいい機会かもしれないわね。見に来る?」
──なぜ自分を連れて行くのか?
エギルは戦場に部外者を連れて行く理由を考えた。しかし、考えても仕方のないことだ。それよりも、ついて行けばこの大陸の現状が見れて、尚且つ、エギルがここへ来た目的に近づくことができるだろう。
「ああ」
短く返事すると、華耶は頷き、戦場へと、エギルとフィーと共に向かった。