裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「……なんで、彼は手を貸してくれるのかしらね。部外者なのに」
体調が回復したのか、華耶は戦況を見つめながらフィーに問いかける。
「エギルは、そういう人だから」
「そういう……お人好し、ってこと?」
「それもある。……けど、それだけじゃない。エギルは王国に残ってる大切な人たちのために頑張りたいんだと思う」
「それは昨日、フィーちゃんが言ってた、彼の王国にここの住人に移住してほしいって話と関係があるの?」
「そう」
華耶はエギルの思考を理解することはできなかったが、一つだけ理解はできた。
「悪い人では、ないようね」
「うん」
「それに、ユリシスに似た誰にでも優しくできる人。だから、フィーちゃんは彼の側にいて、手を貸してあげようと思ったの?」
その問いに、フィーは寂しそうな表情を浮かべる。
「わからない。……たぶん、わからないから、エギルと一緒にここへ来たのかも。エギルが頑張ってるのを見て、その姿がユリシスに重なった」
「そうなのね。だけど、彼が優しい人だとわかっても、簡単に移住は決められないわ。私はここの長。みんなを守るよう先代に託されたのだから」
住民が移住することを望んでいるのなら、彼の手を掴んで、少しでも安全な地で生活した方がいいだろう。けれど、ここは華耶を含め全員の故郷だ。
戦場と化した大平原で幼い頃にかけっこした思い出も、畑仕事や狩猟、長い年月を暮らしてきたこの場所を、そんな簡単に手放せない。先祖もそう願っているはずだ。
「……だけど、もう限界なんでしょ?」
フィーにジッと見つめられる。はっきりと核心を衝いた目だった。
「どうかしらね。だけど、やるしかないのよ」
そう、やるしかない。
誰も湖の都の住民を助けてはくれない。
誰も、華耶を救ってはくれない。
だから誰にも頼らず自分たちで窮地を切り抜けなくてはいけない。彼女がこの世に生を受けた瞬間から、誰も──。
「──エギルは手を差し伸べてくれるよ」
「──ッ!?」
真剣な眼差しを向けられて、華耶は一瞬だが目を丸くさせたが、すぐに笑って流す。
「ははっ、そんなわけないでしょ? 出会って間もない相手なのよ」
「エギルは、そういう人だから」
「も、もう、フィーちゃん、おかしいわよ? そんなわけないでしょ」
笑って誤魔化そうとしても、フィーは嘘偽りのない表情を浮かべる。
「……ありえないわよ」
華耶の声に少し苛立ちが混ざる。
「誰も私たちに手を差し伸べてなんてくれないわよ。フィーちゃんだって、私のこと知ってるでしょ? 私は……誰にも救いを求めてはいけないのよ」
「今までは、だよ。エギルは違う」
「なんでそんなこと──」
何に自分は苛立ってるのだろうか。冷静になれば、そんなことないとわかるのに。
そして、フィーは華耶が苛立っている理由を理解してるかのように伝える。
「……考えて。自分の身体の限界と、湖の都全体の限界がどこなのか。──自分が大切なのが、この地なのか、住民の命なのか。わたしは、全て背負って苦しんできた華耶をずっと見てきたから言ってるの」
フィーはそう言って、終わった戦況を見つめる。
エギルの加勢によって圧勝した現状に、湖の都の住民たちは驚き、喜び、彼の元に駆け寄る。
今までは戦場を勝利に導いていた華耶一人に向けられていた想いが、今はエギルに向けられていた。住民はまるで、新たな可能性に歓喜しているようだった。
「エギルのとこに行ってくる」
フィーも、彼の元へ向かった。一人になった華耶は、小さく言葉を漏らした。
「……私も、いつの間にかエギルさんに淡い期待をしていたのかもしれないわね」
一人で背負って生きていこうと決めたあの日の決意がエギルによって揺らいでしまった。そんな自分が情けなくて、だから苛立ってしまったのだろう。