裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
朝目覚めて外へ出ると、エギルたちがここへ到着した時の倍以上のテントが建てられていた。
エギルはこの冒険者の野営地を管理している者に声をかけた。
「すまない、ここのテントと馬を管理してほしいんだが」
「はい、かしこまりました。お代は1日1000ゴールドとなりますが、この場でお支払いしますか? それとも銀行で回収したほうがよろしいですか?」
「銀行で回収してくれ。場所はクリシュナの銀行で頼む」
「かしこまりました」
彼らは同じ冒険者だが、金を払えばテントと馬を見張ってくれる見張り屋という仕事をしている。
見張り屋は依頼すればテントと荷物を泥棒から守ってくれるのだが、ちゃんと守ってくれるのは人間の泥棒だけであって、魔物の襲撃が発生した場合、見張り屋である彼らは一目散に逃げてしまう。
そこまで安心感はないが、誰かに見てもらった方が他の冒険者に荷物などを盗まれる心配はないので、冒険者の野営地で泊まる場合は彼ら見張り屋に頼む者は多い。
「──おはようございます、エギル様。少し水浴びをしてました」
とそこへ、少し光沢のある水を含んだ金色の髪を、タオルでパタパタと乾かすエレノアが戻ってきた。
昨夜はあの後すぐ寝たが、朝になると再びお互いを求めた。そして心の変化というのか、エギルとエレノアの間には少し変化があった。
エレノアはクスッと笑うと、丁寧にお辞儀をする。
「失礼しました。奴隷なのでご主人様と呼ぶべきでしたね。〝ドS 〟なご主人様?」
「……昨日は少し変だったんだ。忘れてくれ」
「あらあら、あんなにわたくしを虐めたのに忘れてくれなんて、ご主人様は酷いお方ですね?」
エギルの目の前まで寄ると、エレノアは周りに冒険者がいるというのに顔を寄せてきた。
「水浴びが大変でしたよ? 足はガクガク震えて、お口の中はエギル様のアレの味がして。ふふっ、今日も期待してよろしいのでしょうか?」
「……おい、ふざけるのは止めろ。ほら早く行くぞ、エレノア」
「ふふっ、照れてるエギル様も素敵です。では準備をしてきますね」
エレノアは上機嫌でテントに戻って行った。
エギルは背中を見つめながら、少しだけ焦りや驚きがあった。それは、エレノアの性格がどんどん変わっていっていることだ。別に悪い方向じゃないからいいのだが、少しオープンすぎる。
「口調はお姫様っぽいんだが、一日の半分は変態なんだよな……」
男としてはエロい女性は嫌いじゃないのだからいいか。そう思いエギルとエレノアは、歩いて三〇分ほどで到着するフレイシュの森に向かった。
♢
フレイシュの森には色々な種類の魔物が生息している。
一番弱いのが、今回のターゲットである醜い悪魔と呼ばれるゴブリンで、一番強いのはグレイセントと呼ばれる、姿は人間だが体が大きい巨人の魔物だ。そして、エギルは苦手としてるクエストがあった。
「ゴブリンの討伐は余裕なんだが、モルフォルを生きて持って帰るってのはな……」
フレイシュの森に生息するモルフォルと呼ばれる小さな蝶、それを5匹生きた状態で捕獲するクエスト。討伐クエストは楽だが、捕獲クエストは殺したら駄目なのでエギルにとっては難しかった。
「俺は捕獲クエストが苦手なんだよ」
「では、捕獲に関してはわたくしがしますね」
「ああ……」
そこで、エギルは足を止めた。
「どうしたのですか、エギル様?」
「……静かに」
足を止めて前方をジッと見る。
カチャ、カチャ、という鎧を体に固定するバンドの音が前方から聞こえた。
安物の防具が発する音。それを身に着けるのは冒険者か、
「おそらく、ゴブリンだな。やるぞ?」
「わかりました」
二人は人が歩ける道から外れて上背のある木に隠れる。
そして現れたのは、薄い緑色の肌に皮鎧を付けたゴブリンだった。
子供くらいの身体で、手には棍棒だったり弓なんかの小さな武器を持っている。
ゴブリンは魔物の中でも弱く、エレノアの実力を測る相手には十分だった。
「三体か。エレノアの実力を見せてくれるか?」
「ゴブリンでしたら余裕だと思いますが、少々不安ですね。魔物と戦うのは久しぶりですから。それに少し緊張しています」
エレノアの手は微かに震えていた。
エギルは不安を振り払うように、震えている手を優しく握った。
「大丈夫だ、俺もいるんだから安心して感覚を取り戻せ。これからの為にもな」
「エギル様がそう仰るのなら。では」
エレノアは立ち上がって木々から姿を現す。
そして三体のゴブリンが彼女に気付くと、一斉に走ってくる。
皮鎧は小刻みに揺れ、武器を持っているゴブリンの動きは速い。だが聖獣師の職業であるエレノアは、怯むことなく詠唱を始めた。
「水の仔竜よ、姿違えどその暴虐竜の魂を、我が呼び声に応え現世に召喚する」
足下に水色に輝く光が発生すると、そのまま右手を前に出す。
「称呼──アクアドラゴン!」
詠唱が終わり生まれたのは、水で生成された仔竜が三体。
「ギジャ? ギジャジャギッ!」
ゴブリンは自分よりも小さな仔竜を見て鼻で笑った。
だが見た目は仔竜でも、その力は見た目よりも狂暴で、残酷的な方法で敵を殺す聖獣だ。
棍棒を持ったゴブリン二体がエレノアへと走り出し、小人が持つような小さな弓で狙いを定めるゴブリンは遠くで待機したまま。
「敵を排除して、アクアドラゴンちゃん」
エレノアの声に反応したアクアドラゴンは、棍棒を振り下ろすよりも矢を放つよりも、ずっと早く三体の体を飲み込んだ。
可愛い姿から一変、大きく開かれた口がパクリと開くと、ゴブリンたちは透明な水の姿のアクアドラゴンと同化している。中で暴れてはいるが体内から出ることはできず、数秒後には息ができずにピタリと動きを止めた。
「いつ見ても、アクアドラゴンの殺し方は残酷だな」
「あら、そうてすか? 水でできた体で捕縛して窒息死させる。賢い殺し方だと思いますよ?」
「まあ、賢いは賢いがな」
クスッと笑うエレノアは余裕そうに振舞ったが、こちらへと歩いてくると、突然おぼつかなく足をふらふらとさせた。
エギルがエレノアの体を支えると、彼女は申し訳なさそうに笑っていた。
「久しぶりだから、魔力の消費量の加減が難しかったか?」
「は、はい……一度の聖獣召喚で立ち眩みをするとは情けないですね」
「感覚を取り戻せばすぐ楽になる。だからゆっくり、なっ?」
「はい。ありがとうございます」
聖獣師だけではなく、魔術を使用する者は魔力を消費する。中でも聖獣師は、強弱の加減が難しいといわれている。
少なすぎれば聖獣が原型を保てずに消え、多すぎれば召喚者の保有魔力が足りなくなって立ち眩みに似た症状に起こす。
こればっかりはエギルが助けられることはない。元の経験を取り戻して、これから成長していくしかない。
──そんな時だった。