裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
──次の日の朝。
エギルは、華耶とフィーと三人で食事をしていた。
「……華耶、なんだか嬉しそうだね」
「そ、そう? 普通よ?」
エギルは気付かなかったが、ずっと前から知り合いだったフィーにはそう見えるのだろう。
「うん。エギルと結ばれて、嬉しかった?」
「──なっ!」
華耶は赤面して、大きな耳はぺこぺこと何度もお辞儀をする。
耳や尻尾の動きは感情に左右される。それは、昨夜の情事で何となくだがエギルにも理解できた。
華耶は照れ臭そうにエギルへと背中を向けると、感情を露わにする耳を手で抑えながら小さく頷いた。
「ええ、嬉しかったわ。誰かに寄りかかれるのは、こんなに落ち着くのね」
「そっか。良かったね、華耶」
親友としての祝福だろう。華耶は素直に「ありがとうね」と答える。
「だけど、これで全て終わったわけじゃないよね? エギルの目的は」
「ああ、そうだ」
華耶と結ばれて全て解決。そうなれば良かったのだが、ここへ来た目的は、華耶と、華耶が長を務める湖の都の住人たちに、無名の王国へ移住してもらうことだ。
「華耶。今のところ、みんなが移住してくれる可能性はあるか?」
「そうね……」
華耶は食事の手を止め考える。
「たぶん、若い子たちは、この環境から抜け出したいと思ってる子が多いの。だから、賛成してくれると思うわ。私がエギルさんと契約して、エギルさんから離れられないと言えば、ここで生きていくのは難しいもの」
「悪神九尾の力が無ければ、終の国に滅ぼされるのは時間の問題だもんな」
「ええ。だけど、ここに何十年も暮らしていた年配の住人は、そう簡単に移住を許してくれないと思う。もしかしたら、私がいなくなっても、ここに残るって言うかもしれない」
「故郷への思い入れか」
若い者たちにとってこの地で生きてきた時間が短く、別の場所に移住することには、そこまで抵抗がないかもしれないが、人生の半数以上をここで暮らしてきた者ともなれば、この地で最期を迎えたいと思うかもしれない。
「できる限り説得するしかないわ。ここにいても、争いは終わらないんだから」
「そうだな。ところで、他の二つの地域はどうなんだ?」
エギルがここへ来てから話題に上がらなかった東の『平原地国』と、西の『玄政砦』についてだ。華耶は「そうね」と、間を置く。
「他の二つは、うちと終の国の争いには無関心なのよ。あの太陽と月の少女が言ってたでしょ。終の国の目的は、私の悪神九尾の力だって」
「被害が無いから手を出さないか。だが、もし仮に湖の都が終の国の手に落ちることがあれば、次の標的はそのどちらかになるんじゃないのか?」
「おそらくは、そうなるわね。でも、もしそうなっても、その二つの国はすぐに降伏するでしょうね。だから湖の都に手を貸して一緒に終の国に抗おうとはしないわ。むしろ、何とか堪えて、何年でも時間稼ぎをしてほしいと思ってるでしょうね」
華耶は「触らぬ神になんとやらよ」と苦笑する。
要するに、この争いに触れなければ危害はない。長引けば長引くほど、降伏せずに平和な暮らしができる、ということだろう。
これで湖の都を支援してくれる者がいないとはっきりわかった。
エギルは考え、食事を終え、立ち上がる。
「……とりあえず、みんなに話してみよう。これからどうするか、それは周りが決めることだ」
そう伝えると、二人は頷く。
ここで悩んでいても進まない。エギルは華耶と湖の都の住民たちが一緒にフェゼーリスト大陸に移住してくれることを望むが、それが叶わないかもしれない。そうなった場合、残る者に関しても、この地で平和に暮らせる生活を送ってもらうようにする。それが華耶の契約者となったエギルのすべきことだ。