裏切られたSランク冒険者の俺は、愛する奴隷の彼女らと共に奴隷だけのハーレムギルドを作る 作:柊咲
「──ッ!?」
思わぬレヴィアの言葉に慌てて攻撃を避けて距離を取る。レヴィアの表情にはなにか含みがありそうだった。
「どういうことだ、レヴィア!?」
「我の口からは言わぬ。ここでは敵だ。だが、その二人を殺せばお主はずっと後悔する。そして、お主の大切な者は苦しみ続けるのじゃ」
「どういう──」
二人の狙いはエギルにはわからない。しかし、
「……こいつらは俺がやる。フィーと華耶は死人を頼む」
レヴィアは無駄なことを言わない。時間稼ぎでこんなことは言わないはず。二人の少女の攻撃を交わしながら、エギルは華耶とフィーから距離を取り、必死に頭の中で考えを巡らせた。
死人を相手にしているフィーは拳を握り、華耶は自らの血で戦う。死人の数は衰えることなく次々と王座の間に入り込んでくる。死ぬことのない体で死ぬまで戦う。操り人形のように、魂はそこにないのに、何かに取り憑かれたかのように動いている。
「あいつを止めないと駄目か」
傀儡師ガイはまるで闘技場の死闘を見物してるかのように楽し気にしている。こいつを倒さなくては戦いは終わらない。しかし、二人の少女がエギルの行く手を阻み、これ以上近づけない。二人の少女と死人の戦いを交互に見ながら、エギルは必死に思考を駆け巡らせる。
エギルは二人の刀と小刀の動きを見極めながら、自ら剣を振るい、なおかつ背後から剣を召喚し、襲わせる。だが、二人の少女は難なくそれを避ける。
実力も経験もエギルのほうが遙かに上なのに突破できない。レヴィアの言った「後悔する」という言葉が頭から離れず、少しばかりの躊躇いが生まれ、全ての力を開放することができない。
操られてる死人からは何も感じない。だが生きた者を相手にすると、呼吸、筋肉の動き、匂い、それに時間が経てば経つほど二人の体温をはっきりと感じる。
生きた人間を殺す。
そんなのは戦場なのだから当然。殺さなければ殺される。だから殺る。敵なのに、エギルは殺さずに二人を止めようとしてる。それがどうしてなのかわからない。
「叶えるんだ──」
「──叶えるのです」
この二人の声が、エギルに誰かを思い出させる。ずっと身近にいた誰かを。優しくて、力強くて、たまに泣き虫な誰かを連想させる。
靄がかかったようにそれが誰なのか分からない。けれど、エギルは二人を殺せば後悔すると直感で思った。だから心臓を狙い続ける攻撃を止め、その素顔を隠した異様な月と太陽のお面に狙いを定めた。
二人の猛攻を防ぎ、隙を見つけ手を前へ伸ばして、太陽の仮面を剥ぎとった。その次は月の仮面を。
──素顔が、見えた。
整った綺麗な顔つきが、はっきりと。そして、二人少女は泣いていた。
──あの日の彼女のように。
「セリナ……?」
少女の顔はセリナととても似ている。
レヴィアがどうして殺すなと助言したのか、その理由が分かった。この二人を殺せば、エギルはもう、みんなの元へ、彼女の元へ帰れない。
「名前は……お前らの名前を、教えてくれないか?」
手を止め聞く。すると、二人は素直に名乗った。
「──シロエ・マーベリック」
「──クロエ・マーベリック」
その名前を聞いて、嬉しさと、悲しさが同時にエギルを襲う。
「そう、か……そう、だったのか……」
「……だ……からどうした」
「あなたにはここで死ん……で……もらいます」
二人は解けきっていない洗脳のせいで戦意を取り戻し、再び武器を握ってこちらへ走ってくる。
だからエギルは武器を捨て、笑顔を二人に向ける。
「──セリナ・マーベリックが二人を心配してる。一緒に帰ろう」
「「──ッ!」」
その瞬間、二人は武器をその場に落とした。