魔境群馬・桐生ダンジョン特区〜底辺ランナーのハクスラ&ハーレム生活~ 作:Potoooooooo
▼AM 11:00
目を覚ますと、すでに股間は痛いほどに怒張していた。日はすでに高いところまで昇り、胃が空腹を訴える。
朝まで散々アヤカを可愛がり、彼女の極上のおまんこを抱き潰して泥のように眠ったはずだが、元気なものだ。
「俺も、そう長くはないのかもなぁ……」
DMエネルギー摂取による副作用、通称『ダンジョン・シック』。常人離れしたステータスを振るう代償として、闘争本能と生殖本能がバグを起こし、極端なヒート状態に陥る現象だ。
DMエネルギーは、特にダンジョン内で高濃度に分布し、ダンジョンの周囲の特区内でも微量に蔓延している。個人差はあれど、ダンジョンに深く潜ったランナーはもれなくその症状を訴えることになる。
クロウは暗い感情を呟きながら、重い体をベッドから起こした。
リビングからは、かすかにキーボードを叩くタイピング音が聞こえてくる。
クロウは無意識のうちに【隠匿歩法】のスキルを発動させていた。足音、衣擦れ、体温、さらには呼吸の乱れに至るまで、自身の気配を完全に遮断する。ダンジョン内でゴブリンの背後を取るための生命線とも言えるこの泥臭いスキルは、今や日常生活においても異常なほどの習熟度を見せていた。
音もなくリビングに出ると、ガラス張りのデスクに向かって作業をしている女の背中があった。
特区のダンジョン管理局に籍を置くエリート、アヤカだ。
体にフィットしたタイトなビジネススーツを着こなし、黒いパンストに包まれた長い脚を組んでいる。出勤前、あるいは在宅での処理だろうか、画面には複雑なデータが羅列されていた。
散々犯し尽くして最後は気絶させたというのに、彼女は自分よりも早く起きている。その事実に、どうしようもなくオスとしての本能を刺激される。
クロウは彼女の背後に忍び寄ると、その細い首筋に顔を寄せ、深呼吸するように匂いを嗅いだ。
ビクンッ、と。アヤカの肩が大きく跳ねた。
「っ! ……クロウくん、あまり驚かせるのはやめてもらえませんか? 手元が狂います。それと、おはようございます」
「うん。おはよう。……アヤカさん、またこんなにエロい匂いさせて」
クロウの口から吐き出される熱い息と、彼の体臭が鼻腔をくすぐった瞬間、アヤカの理性のタガは呆気なく外れかかっていた。
優秀なコーポレートとしての冷静な仮面の下で、彼女の肉体はすでに絶対的なオスの接近を察知し、子宮をどうしようもなく疼かせている。
(……ああ、まただ。クロウくんの匂いを嗅ぐだけで、頭の芯がトロけそうになる……っ♡)
アヤカは仕事の画面から目を逸らした。ジトっ、とクロウを見つめる顔は、クールに見えて発情しているが、それでも目の前のオスを観察していた。
クロウ本人は、己の異常なまでの性欲と精力をダンジョンシックの末期症状だと思い込んでいる。底辺ランナーがよく陥る、短命のサインだと。
だが、アヤカだけは、真実を知っていた。彼は魔力酔いなどではない。致死量のDMエネルギーを自身の生命力と精力に完全に変換・吸収できる、未知の【特異適合体質】なのだ。
だからこそ、彼はマイナーな底辺装備でもしぶとく生き残り、スキルの習熟度が異常な速度で限界突破している。そして何より、彼の放つ精液は、高純度なエーテルをたっぷりと含んだ、この世で最も甘美で危険な媚薬だった。
それを毎日のように過剰摂取しているアヤカは、クロウ専用の極上オナホに自身の膣肉を作り変えられている。彼のザーメンを摂取すればするほどに肌艶がよくなり、日々その美貌に磨きがかかっていた。
彼から与えられる、尋常でないバフ。アヤカは完全にそれに溺れていた。このオスを他に絶対に渡したくない。
歪んだ独占欲と発情に濡れ、葛藤するアヤカの思考をよそに、クロウの手は容赦なく彼女のタイトスカートの裾を捲り上げていた。黒いパンストに覆われた股間に、直接指を這わせる。
「んっ……♡ いけませんよ、今は本部にデータを送る決済のとちゅ、うぅっ♡♡」
「ほんとにいけない? アヤカさん、仕事中だってのにノーブラだし、乳首勃起してるし。本当は弄ってほしいんじゃないの?」
「あっ……♡!?」
クロウの指が勃起乳首を衣服越しに正確に捉え、その敏感な弱点をコリッ♡コリッ♡と弄り回す。
急所看破は本来、モンスターの弱点をハイライト表示するスキルだが、クロウの無意識下では、アヤカの身体のどこをどう刺激すれば最大の快楽を与えられるか、つまり、最適なクリティカルポイントが手に取るように分かっていた。つまり、クロウはスキルをダンジョン探索だけでなく、女体に使うことでも磨いていたのだ。当然、本人は気づいていないが、他人のスキルを可視化できる瞳の持ち主であるアヤカは、とんでもない勢いでスキルがレベルアップしていくのを目撃していた。
こりこりっ♡♡かりかりっ♡♡♡こりゅっ♡♡♡
「お♡お♡ぉ♡♡ ほぉっ♡♡♡♡」
パンストの股間部分が、彼女自身から溢れ出す愛液でみるみるうちに色を濃くしていく。
クロウはこれ見よがしに指を動かし、テントを高く張った布地の下で敏感に硬くなった乳首を、獲物を弄ぶようにゆっくりと撫で上げる。親指と人差し指で優しく挟み込み、円を描くように撫で回し、時折指先で軽く弾くように刺激した。
「ク、ロウくん……っ、入れて……♡♡♡早く♡♡♡キミのおちんぽ……奥まで、ちょーだいっ……♡♡♡」
たまらずアヤカはデスクに突っ伏し、自らお尻を突き出した。
パンストごとパンティを膝までずり下げ、露わになった濡れそぼる秘裂に、クロウは怒張しきった自身の肉棒をあてがった。
「んおぉぉぉぉぉぉっ♡♡♡」
ぬっ♡♡♡ちゅぅぅぅっ♡♡♡♡
一気に最奥まで貫くと、アヤカは獣のような嬌声を上げて身をよじった。
パンパンッ!♡パンッ!♡と、高級なビジネススーツに包まれた尻に、クロウの腰が激しく打ち付けられる。
アヤカとのセックスで培われた、無駄のない暴力的なまでの腰のグラインド。アヤカのことを知り尽くした彼だからこそできる腰使い。メスを自分のチンポで屈服させるための交尾が、アヤカを完膚なきまでに制圧していた。
どちゅっ♡♡♡どちゅっ♡♡♡ぐちゅぐちゅぐちゅっ♡♡♡♡
「おっ♡♡ おッ♡♡ おぉっ♡♡♡♡クロウくんの♡おちんぽ♡すごっ、おほっ♡♡ぉ゛~~~~~♡♡♡イグイグイグ♡♡♡♡♡♡♡」
「俺も限界……っ」
クロウが最奥を激しく突き上げながら、限界まで溜め込んだ白濁を解放した。
昨晩から今朝までにあれだけの量を出したというのに、その濃さは尋常ではない。濃厚すぎる精液が、アヤカの子宮へと大量に注ぎ込まれていく。
びゅるるるるるっ♡♡♡♡ぼびゅっ♡♡♡どぼどぼっ♡♡♡♡
ぶびゅっ♡♡ぶびゅるっ♡♡♡
「~~~~~~~~~~っ♡♡♡♡♡♡♡♡」
アヤカは白目を剥いて絶頂に達した。
【魔力譲渡】。
特異適合体質によってバグを起こした特殊派生スキルが発動する。高純度の魔力を帯びたクロウのザーメンが粘膜から直接吸収され、アヤカの脳内に強烈な快楽物質と全ステータスアップのバフを強制的に書き込んでいく。
エリート管理局員の知性的な脳が、白濁の快楽で塗り潰されていく。彼女の身体はビクビクと痙攣し、口からはだらしない涎が垂れ流されていた。
「はぁ……はぁ……。ふぅ」
クロウがゆっくりと肉棒を引き抜くと、卑猥な音と共に、アヤカの股間からは入りきらなかった魔力まみれの精液がとろりと垂れ落ち、オフィスの床を汚した。
彼女はうつろな瞳でクロウを見上げ、幸福そうにだらしなく微笑んだ。完全に堕ちたメスの顔だった。
「ありがとう……♡♡ ございました……♡♡クロウくん……♡ぉ゛……♡♡♡ 今日もお仕事、がんばれます……♡♡」
中出しアクメの余韻で、ふるふると震える。
「ふーん……在宅なんだ?」
「はい……そうですね……んおっ♡♡」
それを聞いた途端、クロウの眼に再びギラついた捕食者の光が宿った。彼は背後からアヤカのタイトなビジネススーツの胸元に強引に両手を差し込み、ノーブラの豊満な双丘を下からガシッと揉み上げた。
先ほどの絶頂の余韻で敏感になりきっているその先端。未だに勃起して硬くなっている乳首を、二本の指で容赦なくコリコリ♡♡と弾き、ねちっこく転がす。
「今日は一日、アヤカさんと一緒にいたい」
「ちょっと、まちなさい……♡ 本当にお仕事が……ぁぁ゛っ♡♡♡♡」
「一回だけ……一回だけだからさ」
言うが早いか、クロウはアヤカをデスクに押し付けたまま、先ほど超特濃のザーメンを注ぎ込んだばかりのぐちょぐちょの秘裂へ、再び怒張しきったデカチンを叩き込んだ。
ずちゅっ……♡♡♡♡
「おほぉッ♡♡♡」
どうせ俺の寿命もそう長くはないんだ。
特区のどん底で這いつくばる底辺ランナーの自嘲と諦念。その仄暗い破滅願望が、目の前で痴態を晒す極上のエリートを徹底的に汚してやりたいという、退廃的な快楽へとクロウを駆り立てていた。
ズチュッ♡♡♡パンッ♡♡♡ドヂュッ♡♡♡♡♡
「あっ♡♡あっ♡♡♡お゛っ♡♡♡♡」
激しいピストンが再開され、アヤカは思考の海に沈みかける。
クロウの異常な精力は、魔力酔いの末期症状などではない。
(違うっ♡♡ キミは特異体質だから……♡♡♡ お゛ッ♡♡♡♡♡)
本当は真実を伝えるべき。だが、脳を狂わせる高純度の精液と暴力的なまでの快楽のうねりが、アヤカの脳髄から言葉を奪い去っていく。
ごりゅっ♡♡♡♡どちゅっ♡♡♡♡♡♡どちゅっ♡♡♡♡♡♡
「ア゛♡♡♡♡♡イグッ♡♡♡♡♡」
(もうだめ……からだ、ほんとうにもたない……♡♡♡でも、クロウくんは私だけの……っ♡♡♡ お゛ッ♡♡♡♡♡ やっぱム゛リ゛ィ゛♡♡♡♡♡)
完全に仕事など放棄させられ、アヤカはデスクに突っ伏したまま、ただひたすらにクロウの種を受け入れるだけの雌豚へと堕ちていく。
▼桐生ダンジョン特区 メイン・エリア AM 05:30
心ゆくまでアヤカの子宮に特濃の白濁を注ぎ込み、すっきりした頭で、クロウは特区のストリートを歩いていた。彼女に在宅仕事をさせながら、その背後からスーツ姿のまま犯すというのは初めての体験だったが、なんとも背徳的で甘美なものだった。クロウの底なしの性欲とアヤカの淫乱さが噛み合い、盛り上がって結局一日中セックスしてしまった。
夜は食事もそこそこに立ちバックでセックス。風呂場でも濡れた肌を密着させてセックス。最後はベッドの上で、完全に理性を飛ばした彼女の奥深くに種付けプレスを十発近くキメて、とうとうあの気位の高いエリートキャリアウーマンを完膚なきまでに屈服させることに成功していた。
ベッドに沈んで、完全にイキ癖のついたおまんこからザーメンを垂れ流しながらビクビク痙攣する彼女を置いて部屋を出てくるのは、クロウにとって初めてのことだった。
「なんか、すげぇ気分がいいな」
過剰に溜め込んだ
クロウ本人はそれを、セックスによる単なるストレス発散と一時的な毒抜きだと思い込んでいるが、実際はそうではない。 彼の持つ特異適合体質は、ダンジョン内に充満する瘴気が持つ毒素を自浄作用で完全に無力化し、あろうことか超純度の魔力として体内に溜め込んでしまうという、常軌を逸したメカニズムを持っていた。
そしてその超純度の魔力はクロウの体液に帯びる形で体外に排出されるのだが、彼の濃厚な精液には高濃度の魔力が含まれている。そんなものを摂取した女がどうなるのかは、アヤカが身を持って体現している通りだ。
しかしそんな自身の体質の正体など露知らず、クロウは鼻歌交じりに目的地へと向かう。
早朝のメイン・エリアのストリートには夜露が残り、通り抜ける乾いた風が冷気を運んでいた。特区全体を薄く覆う魔力の匂いが、肺の奥を満たしていく。
クロウが訪れたのは、開発から取り残されたような古びた佇まいを残す、一軒の商店だった。色褪せた木製の看板には『よろずや 一滴堂』と彫られているが、外観からはここが何の店なのか推測することは不可能に近いだろう。この時間帯にもかかわらず、達筆で営業中と書かれた木板が掛かった扉を開き、クロウは店内に入った。
「お?」
カウンターの向こうで寛いでいた小柄な女性が、鈴を転がすような声と共にクロウの方を見た。赤い瞳に、透き通るような白い髪。背はクロウよりも小さく、一見すると十代前半のちんちくりんな幼女だ。しかし、そのロリロリしい未成熟な見た目とは裏腹に、彼女が身に纏うタイトな中華風ドレスの着こなしは、妙に艷やかで抗いがたい、成熟した大人の色気を放っている。
「なんじゃ、クロウか」
「おはようございます、シズクさん」
「んむ、おはよう」
シズクは退屈そうにあくびをした。
彼女は、付与職人。ダンジョンのドロップ物を分解してクラフト素材を抽出したり、逆にクラフト素材から作成したMODを武具に付与する技能職だ。
クロウは物心ついた頃から彼女の顔を知っており、自身の祖父母の代からの付き合いらしいが、昔からシズクの見た目はまったく変わっていない。特区には時折、ダンジョンの影響で人の枠から外れた長命な亜人が紛れ込んでいるが、彼女もその類いなのだろう。
そんな関係性もあって、クロウは昔からこの小さな店主の都合のいいパシリとして扱われている。だが、彼女の持つ技術や裏流通のネットワークは本物であり、底辺ランナーのクロウにとって頼れる裏社会の住人の一人だった。
「朝からやけにすっきりした顔をしておるな。またあのお堅い管理局のエリート女に盛って、魔力でも発散してきたか?」
「……まあ、そんなとこです。それより、最近ポーションの相場が荒れてるって聞いたんですけど」
クロウは話をそらした。
「ああ、その話か」
シズクは赤い瞳を細め、呆れたように息をついた。
「ピュアがこの辺りでも増えておるようじゃな」
最近、特区のアンダーグラウンドで通称”ピュア”と呼ばれる、たちの悪いデトックス薬の偽物が出回っているらしい。ギャングや悪徳コーポレートが元締めとなり、魔力酔いに苦しむ底辺ランナーに売り捌いているのだ。一時的に痛みを散らすだけの麻薬成分が混ぜられており、最悪の場合はかえって魔力酔いを悪化させて廃人にしてしまう厄介な代物だ。
「桐生でも?」
「うむ。密輸されたんじゃろうなぁ……」
クロウ自身、ダンジョンに潜りすぎた代償である深刻な魔力酔いに蝕まれていると思い込んでいるため、定期的な毒抜きは死活問題だった。
一番良いのは、ダンジョン深層でドロップする純正浄化液を手に入れることだ。だが、この本物のポーションは絶対数が少なすぎる上に、特区の富裕層やトップランナーたちが参加する裏オークション形式で取引されるため、クロウの稼ぎでは到底手が届かない。
「
「こないだの魔力嵐のせいじゃろ」
一時緩和剤、通称クリアブルーは、底辺ランナーが日常的に頼らざるを得ない、安価なデトックス薬だ。青みがかった液体であることから、こう呼ばれている。効果は気休め程度で、常用・過剰摂取すると内臓に深刻なダメージを与えるため、たくさん使えばどうにかなるというものでもない。
「貧乏人は辛いのお。本物の浄化液なら一発で魔力を中和できるというのに、お主には一生買えぬじゃろうて。せいぜい偽物の”ピュア”でも掴まされんよう、気を付けることじゃな」
「そうですね……」
クロウは肩をすくめた。
高額な治療を受けられるエリートは長生きし、自分たちのような底辺は安い緩和剤で誤魔化しながら魔力に身体を蝕まれて短命に終わる。特区の世知辛い構造だ。だが、不思議と悲壮感はない。どうせ短い命なら、アヤカのような極上の女を徹底的に犯し尽くしてやるという暗い悦びが、クロウの腹の底には常に渦巻いていた。
「で、今日は何か用があるんですか。わざわざこんな朝早くから」
「おお、そうじゃった。クロウ、ちと頼みがある」
シズクはカウンターから身を乗り出し、幼い顔に似合わない不敵な笑みを浮かべた。胸元の開いたドレスから、小ぶりだが形の良い双丘の谷間が覗く。
「最近、物質分解の実験で魔素(クラフト素材)が足りんでな。ダンジョンに潜るついでに、ディスエンチャント用の素材になりそうなゴミドロップをいくつか拾ってきてほしいのじゃ。もちろん、小遣い程度には買い取ってやるぞ」
「ゴミ拾いですか。まあ、今日はDM結晶の納品依頼で少し深くまで行くつもりだったんで、ついでにバックパックに突っ込んできますよ」
「頼んだぞぉ」
シズクは満足げに頷き、ひらひらと白い手を振った。
彼女のパシリ扱いには慣れっこだ。クロウは愛用の装備を軽く確かめると、特区の淀んだ空気の中へ、ダンジョンの入り口を目指して歩き出した。
▼桐生ダンジョン特区 メイン・エリア/ダンジョン化エリア境界
メインエリアの喧騒を抜け、かつての旧市街地へと続く寂れた舗装路を歩いていくと、やがて周囲から生活の匂いが消え失せる。
桐生ダンジョンは、地下に広がる洞窟などではない。かつての旧市街地が、物理的な構造を保ったまままるごとダンジョン化している領域だ。
ダンジョンの入口に、巨大な防壁やゲートは存在しない。代わりに、メイン・エリアをさらに進んだ先に、濃密な魔力が淀んでできた半透明の障壁が立ち込めている。それはまるで夏の陽炎のように揺らめき、一攫千金を夢見るランナーたちを死の迷宮へと誘っているようだった。
クロウは境界線の手前にある、放棄されて久しい錆びたバス停のベンチに腰を下ろした。
「さて、と……」
クロウは小さく息を吐き、足元に置いたバックパックを引き寄せた。
ダンジョン探索において、物資の運搬を担うバックパックはランナーの命綱だ。彼が愛用しているのは、かつて彼にランナーとしてのいろはを叩き込んだ師匠から譲り受けたお下がりだった。
あちこち擦り切れて年季が入っているが、空間拡張機能が組み込まれた軍事規格の年代物である。見た目は小ぶりなタクティカルリュックだが、内部のインベントリ空間は四次元的に拡張されており、大量のポーションや弾薬、そして採掘したDM結晶を重量のペナルティなしで詰め込むことができる。
クロウはバックパックの留め具を確認し、次いで身につけている武具の点検に移った。
ホルスターに収められた使い込まれた9mmハンドガンと、腰に帯びた黒光りする軍用サバイバルナイフ。そして、全身を覆う軽量で強靭なステルス性のタクティカルギア。
年代物のバックパックとは対照的に、これらは金が溜まるたびに少しずつ更新していっている。
装備の更新には金がかかる。そして失敗したくない。オークションは日本全国から出品者があるため目当ての物を取引できる可能性があるが、競合が多くて人気の武器種やMOD(追加効果)は値段が跳ね上がりがちだ。そこで、現地のマーケットで直接取引しているのだが、そこでアヤカの目利きが役に立つ。それに、どこからかマーケットの情報を仕入れてきて教えてくれたりもする。彼女には頭が上がらない。
ハンドガンはアイギス・プライムというコープが主催したマーケットの放出品だ。組み込み式サイレンサーを備え、音速弾しか撃てないという制約がある。
■《暗殺者の》9mmハンドガン
固有MOD『ステルスアタックボーナス・中』
ランダムMOD『クリティカルダメージボーナス・大』
一見価値が高そうに見えるが、9mmは基礎ダメージが低いため、価値が大幅に下がる。それでもかなり痛い出費だったが、アヤカが選んだので信じて使っている。
サバイバルナイフは、引退したランナーが売った物をシズク経由で手に入れた。
■《頑強な》サバイバルナイフ
固有MOD『耐久値減少速度低下・特大』
ランダムMOD『ステルスアタックボーナス・小』
これはかなり良い買い物だった。手に馴染むし、クロウのスタイルとかみ合わせもいい。
あとは防具だが……とりあえずステルスボーナスの付いた装備で揃えただけだ。世の中にはセットボーナスなるものもあるらしいが、手の届くものでもない。アクセサリー類も貧弱。クリティカル率に極小ボーナスが付くお守りを持っているくらいだ。文字通りのお守り程度である。
「……よし」
すべての点検を終え、クロウはベンチから立ち上がった。
陽炎のように揺らめく魔力の霧が、すぐ目の前で手招きしている。この境界を一歩跨げば、そこは見慣れた現実の廃墟でありながら、死と隣り合わせの異界だ。
アヤカからの依頼の品を揃え、ついでにシズクに頼まれたゴミ拾いもこなさなければならない。
クロウがその障壁に一歩踏み込むと、水の中に飛び込んだときのような粘り気のある抵抗感が全身を撫でた。
内部は、どこまでも続く果てしない廃墟だった。ひしゃげたアスファルトにはどす黒い染みがこびりつき、鉄骨の剥き出しになったビルが墓標のようにそびえ立っている。
クロウはいつものようにステルス状態に入って、周囲の状況を観察した。良質なDM結晶を得るためには、脅威度の高い獲物を探す必要がある。
『カ~w カ~w』
たった今、上空を、翼の一部が結晶化したエーテル鴉が数羽、不気味な鳴き声を上げながら横切っていった。レベルD。そこそこいい獲物だが、飛んでるし、群れるしで少し厄介だ。クロウはカラスの群れをやり過ごした。
(同じ『クロウ』のよしみだしな……)
適当な独り言を脳内で呟きながら、さらに奥へと進む。視界の端々には常に環境情報が流れ、解析し続ける。建物の影、風の向き、魔力の淀み。
「あっちか」
廃墟のコンビニ跡を通り過ぎ、崩落した歩道橋の陰に身を潜める。音がする方向を覗き込むと、数百メートル先、かつての公園だったと思われる場所が、亜人たちのキャンプへと変貌していた。
(バール、スパナ、ハンマー。……ボスが持ってるのは電動ドリルかよ)
黄色の安全ヘルメットを被り、工具で武装したゴブリン労働者の群れ。あれは一体何なのか。その答えは誰も持っていない。
数はおよそ十数体。キャンプの中央には、周辺から集めてきたと思われる瓦礫を積み上げた奇妙な祭壇が築かれていた。その頂点には、力強い光を放つ高純度DM結晶のオブジェが据え付けられている。
ゴブリンはレベルD。とはいえ、あれだけの数は脅威だ。防御力は紙同然。まともにやりあえば治療費だけで足が出る。あの中央の結晶だけを掠め取るには、どうすればいいか。クロウは目を細め、最適な殺しのルートを思考の海で描き始めた。
「……」
物音で釣り出して、一匹。
物音で釣り出して、一匹。
物音で釣り出して……。
(地味すぎる)
地味すぎる作業。殺しというか、もはや掃除に近い。
十匹目のゴブリンの死体を転がして公園のほうを見ると、オブジェに向かって踊り狂っていたボスの電動ドリル・ゴブリンが動きを止めて辺りを警戒しだした。
(あ、気づいたな)
ようやく仲間たちが消えていることに気づいたらしかった。ゴブリンの死体からドロップを手早く回収してバックパックに放り込む。温存していたハンドガンを取り出し、身を屈めて物陰へと移動した。
弾もタダじゃない。特に音速弾は普通より弾代が嵩むから、節約するに越したことはないのだ。
(ボスからやるか? いや……)
仕留めそこねる可能性がある。それにこのゴブリンたちは弱点である頭をヘルメットで守っていた。クロウは思考を切り替え、5匹の取り巻きを片付けることにした。
地面に半分埋まったタイヤの上で飛び跳ねているゴブリン。そいつが飛び上がった瞬間に脚を撃ち抜く。体勢を空中で崩したゴブリンは、頭から落ちて、嫌な音と共に沈黙した。
(あと4……)
死んだゴブリンに集まってきた他のゴブリンたちの顔が、狙いやすい位置に来た。引き金を引く指に迷いはない。湿った音と共に吐き出された音速弾が、確認にきたゴブリン二匹をまたたく間に始末した。
(2……)
カバー移動。ゴブリンの視線を避けながら距離を詰め、生け垣の後ろに滑り込む。奇声を上げて周囲を見回すゴブリンの背後を取った。
首の急所にナイフを突き刺し生け垣の中に引き込む。クリティカルで即死。後一匹。姿を探すと、逃げようとしている。その背中に一発。クリティカルしない。もう一発。倒した。
(もったいない)
弾を無駄にして気分が下がりながらもボスの方を確認すると、怒り狂ったように踊っていた。電動ドリルの音が耳障りだ。クロウは銃を向けた。
一発、二発、三発……と撃ち込んで、ようやくボスは倒れた。これで公園のキャンプに、動く者の姿はなくなった。
クロウは静かに立ち上がり、キャンプの中央へと歩み寄る。祭壇の頂点に据えられた紫色の結晶が、鈍い輝きを放っていた。
「よし、あとはコイツを回収して……」
回収したDM結晶をバックパックに入れ、クロウは時間を確認する。
「もう少し潜るか」
探索と戦闘で時間を使ったが、クロウにはまだ余裕があった。