※この作品はR-18です。

魔境群馬・桐生ダンジョン特区〜底辺ランナーのハクスラ&ハーレム生活~   作:Potoooooooo

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ダンジョン特区生存wiki:桐生ダンジョン特区 攻略・エリア情報/特区の日常

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ダンジョン特区生存wiki:桐生ダンジョン特区 攻略・エリア情報

作成者:名無しの情報屋/最終更新:一ヶ月前

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所在群馬県 桐生市
難易度★★★☆☆
備考群馬初心者向け

 

■ 特区エリアガイド(ダンジョン外)

 

▶シティセンターエリア(中枢区画)

 特区の東部に位置する、富裕層とエリートのための再開発区画。ダンジョン管理局やアイギス・プライムなどのコーポビルがそびえ立つ。アイギスの重武装部隊が24時間巡回しており治安は完璧。出入りには通行証が必要。

ダンジョン管理局群馬支部

 窓口では業許可更新手続きや結晶買取依頼ができる。だが、わざわざここでやる必要はない。メインエリアの出張所で十分。

 

アイギス・プライム・ビル

 スウェーデンに本社を置く多国籍企業、アイギス・プライムの日本支部。詳細は個別記事参照。ランナーが用事があるとしたら、中古マーケットやクランHQの利用くらい。

 

上州重工本社

 群馬の御当地企業の本社ビル。車両、重機、パワードスーツの製造企業。北関東・甲信越の広域経済圏で圧倒的シェア。アイギスも使わざるを得ないらしい。ビルの一階でよくイベントを開いている。

 

 

▶ラスト・タウン(錆街)

 北部に広がる巨大なスプロール。底辺ランナーの大半はここで寝起きしている。トタン屋根や錆びたコンテナハウスが並んでいるから、誰かが勝手にそう呼び始めた。

ヴァルハラ

 娼館。借金まみれの新人ランナーを買いに行くならココ。

 

ロスト

 露店街。装備が安く揃う。

 

ジャンク・ドッグ

 老舗のメカニック・ショップ。旧世代のバイクを無理やりエーテルエンジンにコンバージョンしたカスタムバイクが人気。

 

 

▶メインエリア(境界拠点区画)

 ダンジョン化区画の直前に位置する前線基地。

ダンジョン管理局出張所

 各種手続き、買取、依頼斡旋など、いつも混んでる。

 

リスポーン・センター

 アンテナ圏内で死んだヤツが戻ってくる場所。だいたい死んだ目をしている。

 

KAI

 シンゲン・アームズの正規代理店。値段と信頼度が高い。

 

ヤマダヤ

 出張所の隣でやってる飯屋。うまくて量が多い。

 

義貞(よしさだ)

 居酒屋。飲むならココ。

 

■ 移動手段

 他の特区の例に漏れず、ここでもランナーは公共交通を無料で利用できる。ライセンスの携帯は忘れずに。

 

▶市バス

 主にメインエリア内を巡回しているバス。最もポピュラーな移動手段。

 岩宿や太田など近隣に向かう定期便も運行している。

 

▶シティセンター・モノレール

 シティセンター内の高架をぐるぐるしてるやつ。大半のランナーには縁がないが、一応無料で乗れるらしい。

 

▶ヴィークル

 旧式のエーテル動力車・バイクは割と手の届く値段で中古マーケットに流れている。

 ジャンク・ドッグ製のバイクは、一発当てた中堅ランナーがよく乗っている。

 

 

■ 桐生ダンジョン:階層別攻略情報

 だいたいの目安:

浅層 初心者向け

中層 中堅~ベテラン向け

深層 エリート向け

 

【第1〜第2階層】浅層 個別ページ

環境:ほぼ廃墟。電波は安定。

主な敵:ゴブリン、エーテル鴉、ゴースト

特記事項:迂闊に廃墟内に足を踏み入れるとゴーストに理解らん死させられる。がんばって隅々まで探索するとチェストが見つかることもある。

 

【第3〜第5階層】中層 個別ページ

環境:森、山、川。この辺から電波は不安定になる。

主な敵:オーク、エーテル熊、エーテル蜘蛛、山賊

特記事項:業許可取ってない奴ら(通称山賊)のキャンプがあるので注意。瘴気の吹き出す罠チェストが配置されだす。

 

【第6階層〜】深層 個別ページ

環境:ザ・ダンジョン。圏外。瘴気が濃いので対策装備必須。

主な敵:ゴーレム、桐生ドラゴン

特記事項:固有種の桐生ドラゴンは倒すと高純度DM結晶を高確率で落とす。ただしめちゃくちゃ強い。

 


 

[匿名ランナー]

エリアガイド適当すぎんか

 

[匿名ランナー]

個別ページ作ってくれてもいいんだぞ

 

[匿名ランナー]

クリニックもジャンク屋も飯屋もここに行っとけば正解とかないからね

ヤマダヤと義貞はまあ……出張所の近くだから行きやすい

 

[匿名ランナー]

義貞のモツ煮は美味いぞ

 

[匿名ランナー]

ヴァルハラってどんな感じ?

 

[匿名ランナー]

Hだよ

 

[匿名ランナー]

HはHでも

 

[匿名ランナー]

借金で首が回らなくなった女ランナー抱くといっぱい出る

 

[匿名ランナー]

たまに凄い掘り出し物がいる

超美人の女魔法使いで童貞捨てれたから感謝してる

 

[匿名ランナー]

魔法使いなのに風俗落ちすんのかよコワ

 

[匿名ランナー]

群馬だとライセンスないやつのこと山賊っていうんだな

参考になったわ

 

[匿名ランナー]

あいつらなんなの

死に戻れないのにようやるわ

 

[匿名ランナー]

そりゃID登録できないやつらなんだからお察し

 

[匿名ランナー]

群馬初心者向けとかいう欺瞞

 

[匿名ランナー]

間違ったことは言ってないから…

 

[匿名ランナー]

群馬の登竜門だから

ここの中層もぐれるなら前橋・高崎あたりでも活動できる

 

[匿名ランナー]

でもぶっちゃけ桐生以外で活動する理由が薄い

特定MODファームしに行くくらいだよね

ハブだから物資調達もしやすいし

 

[匿名ランナー]

他でしか出ないダンジョン産資源の納品依頼で行かされることがある

桐生が一番住みやすいのはそう

 

[匿名ランナー]

バイク買って波志江あたりまで遠征してえなあおれも

 


 

▼桐生ダンジョン特区 シティセンター アヤカの家 PM01:00

 

 広々としたリビングには、静寂とコーヒーの香りが漂っている。二人は向かい合って、遅めの昼食を摂っていた。

 ベッドの上での濃厚な種付け交尾の狂宴が嘘のように、アヤカはいつものビジネススーツをばっちりと決め、冷徹な管理局員の顔に戻っている。

 

「アヤカさん、今日はどこ行くの?」

 

 クロウはトーストをサクリと齧り、コーヒーを優雅に味わっているアヤカに聞く。

 

「アイギスのビルですよ」

 

 アイギス・プライム。巨大な多国籍セキュリティ企業だ。特区の治安維持にも一役買っている彼らとの折衝は、アヤカにとっても気の抜けない場であろう。

 

「帰りは?」

「遅くなるかもしれません」

「そっか……」

 

 クロウは目を伏せ、マグカップのコーヒーに息を吹きかけて冷ます。ふと、何かを思い出したように目を上げた。

 

「あ、そういえば昨日の未鑑定の指輪……」

「そうでした。見せてもらえますか」

「ちょっと待って」

 

 クロウは記憶を頼りに、転がっていった指輪の行方を探す。するとそれは、ソファーの傍らに落ちていた。

 

「あったあった」

 

 おもちゃを拾った犬みたいにダイニングに戻ってくるクロウから指輪を受け取り、アヤカは自身の鑑定スキルを発動させた。金色の瞳の奥に、微かな魔力の光が走った。その特別な瞳は、事象の深層情報を読み取ることを可能とする真理の瞳だ。一度に膨大な情報を処理する必要があるため、脳への負荷が異常に高く、おいそれと使えないスキルだ。普通ならば。

 しかし、クロウの純粋魔力を含んだ極上ザーメンをたっぷりと子宮に注がれ、魔力と活力を満たされている今のアヤカにとっては、息をするのと同じくらい容易いことだった

 

 

「《古びた》銀の指輪……固定は『敏捷増加・小』、『+11』。固定値増加ですか。残念です」

「そっかぁ……」

 

 ステータスが割合(パーセンテージ)ではなく固定値で上がる装備は、使用者の能力が上がるにつれて恩恵が薄くなるため、外れ枠とされている。需要が無いわけではないが、マーケットに流しても買い叩かれてしまうだろう。クロウは残念そうに声を上げたが、アヤカの鑑定は終わっていなかった。

 

「ランダムは『急所還元』……」

「なんだっけそれ」

 

 直感的にクリティカル系のMODなのは分かったが、咄嗟にその効果までは出てこないクロウだった。

 

「クリティカル発生時にスタミナ微量回復ですね。内部の効果量は……『6%』。割合です」

「よさそう」

「ええ、かなり」

「よっし」

 

 クロウは無邪気にガッツポーズをした。一撃離脱と急所攻撃を主体とする自分の戦闘スタイルと、完璧に相性のいいアクセサリーを引いたのだ。スタミナ回復アイテムの節約にもなる。

 

「おめでとうございます。はい、手を出して」

「? はい」

 

 ぱ、と素直に出された左手を引き寄せ、アヤカはその薬指に、銀の指輪をゆっくりとはめ込んだ。まるであつらえたかのように、指輪はクロウの指に収まる。所有の印を刻み込むようなその行為に、アヤカは内心で昏い優越感を覚えた。いつか、お揃いの指輪を買って、MODを付与してもらいたい。それには多額の資金が必要だが、アヤカの頭脳は不可能ではないと言っている。

 

「おお、ぴったりだ」

 

 クロウは左手をシーリングライトに向かって掲げ、嬉しそうに眺めている。その横顔を眺めながら未来に思いを馳せていたアヤカはふと、とんでもない事実に思い至り、冷や汗をかいた。

 

(それ……ベッドの上で使われたら……)

 

 ぶるっ……♡♡と、アヤカの背筋が震え、タイトスカートの下で無意識にきつく太ももをすり合わせた。想像が掻き立てられ、休まっていたはずの子宮が不意に熱を持つ。

 本人に自覚はないが、クロウはセックス中、あの極太の肉棒でアヤカの膣内の弱点を突くために急所看破のスキルを使い続けている。普通のランナーが日常生活で何度もスキルを使うことはほとんどない。魔力が枯渇し、特区内に薄く広がる瘴気に犯されて魔力酔いのリスクが跳ね上がるからだ。でも、彼には無尽蔵の魔力がある。そして今……この指輪のせいで、ただでさえバケモノじみている彼が、クリティカルのたびにスタミナを回復する無尽蔵のスタミナまで手に入れてしまったことになる。

 今夜、この指輪をはめた彼に組み敷かれたら、自分はどうなってしまうのか。それはアヤカに、恐ろしく背徳的で、甘美な想像をさせたのだった。

 

▼桐生ダンジョン特区 メインエリア PM02:30

 

 アヤカを仕事へと見送った後、クロウはシティセンターの清潔な整然とした空間から、特区の日常とも言えるメインエリアへと足を運んでいた。管理局前の通りは人でごった返し、今日も大衆食堂のヤマダヤは商売繁盛。居酒屋・義貞の前では酔っ払った若い男女が大声で笑い合っていた。

 バスを降り、赤い甲冑武者のロゴが特徴的なシンゲン・アームズ販売店に向かう。そこでいつものように音速弾の在庫を補充し、ディスプレイされた武器を見て回る。新作の超振動カタナ《ユキムラ》の目玉が飛び出るくらいの値段に驚愕して店を出た後、今度は一時緩和剤(クリアブルー)を売っている店に立ち寄った。

 

(やっぱ高いな)

 

 ドラッグストアの店内はランナーらしき男女が大勢いて、クリアブルーの棚の前でどこの会社のブランドがいいか、慎重に吟味している。クロウも備蓄を補充しておこうかと考えるが、今は魔力酔いの症状が出ていない。商品棚に伸びそうになった手を戻して、踵を返した。

 店を出て、ふらふらと人の間を縫って歩く。路上で安物のポーションを売っている違法露天商を横目に通り過ぎ、やがてクロウの足はメインストリートを外れて、人通りの少ない裏通りへと向かう。喧騒が遠ざかり、寂れた通りの奥に佇む『一滴堂』の扉を開いた。

 

「お邪魔します」

「……よぉやく来たか。待ちくたびれたのじゃ」

 

 カウンターの向こうで、その店主は不遜に踏んぞり返っていた。幼い身体のラインを無遠慮に強調するタイトな中華風ドレスを身にまとい、ちんちくりんな見た目にそぐわない老獪な職人の眼差しで、入ってきたクロウをえらそうに睨めつける。

 

「……すんません」

 

 クロウは謝罪もそこそこに、背負っていたパックパックを下ろし、カウンターの上に頼まれていた物を取り出していく。ハンマーだのスパナだの、昨日のダンジョンで回収した戦利品を整理した残りカスだ。

 

「いい感じのゴミじゃのう」

 

 シズクはそれらを手に取り、ニヤニヤと眺めた。彼女の手のひらの上で、ガラクタが青白い光を帯びる。分解され、魔素と呼ばれているクラフト素材に変換されていく。色とりどりの琥珀や翡翠みたいなものから、何かの干物にしか見えないものまで、多種多様な魔素が抽出される。シズクはそれらを大雑把に一つのマヨネーズ瓶へとじゃらじゃらと流し込んだ。

 

「ゴミにいい感じとかあるんですか」

「うむ。大ありじゃ」

「……なんか説明とか」

「いやじゃ。素人に語っても理解できんし、何よりめんどくさい」

 

 シズクは素っ気なく切り捨てると、瓶を密閉した。その手をカウンターの下にしまおうと身を屈めた際に、クロウの左手の指輪を目ざとく見つけてグイっと顔を近づけた。

 

「ほほう、なかなかの一品を手に入れたようじゃな。ダンジョン産か?」

「あ、はい、ボス格のゴブリンが落としたみたいで」

「見せてみい」

 

 シズクはクロウの左手を強引に引っ張り、指輪に顔を近づける。彼女の瞳が、職人特有の鋭い光を帯びた。

 

「ふむふむ、ベースは貧相じゃが、そこそこ良い『もっど』が付いとるようじゃの。しかし、こいつにわしの強化付与を施してやればさらに大化け間違いなし。どうじゃ、今なら特別価格で500万」

「たっけ。……そんな金あったら他のことに使いますって。それにシズクさんのエンチャントってギャンブルでしょ」

 

 過去に一度唆されて強化を試したら、固有MODが強化される代わりにランダムMODがマイナスの方に大幅に振れたことがあって以来、クロウは彼女の気まぐれすぎる実験に付き合うことを恐れていた。

 

「わっはっは。クロウは賢いのう」

「バカにしてません?」

「しとらん、しとらん」

 

 シズクは手元の魔素が入った小瓶をからからと揺らしながら、ニヤニヤといけすかない笑みを浮かべている。ひとしきりクロウをからかって満足したのか、彼女はほうと小さく息を吐いた。

 

「もう少しで実験がうまくいきそうなんじゃがのう……何かが足りんのじゃ」

 

 シズクは目を細め、悩ましげに頬杖をついた。その憂いを帯びた横顔に一瞬ドキリと……

 

「おっと、報酬はいつも通りでよいな?」

 

 ……したかと思ったのも束の間、彼女はいつもの飄々とした調子に戻り、カウンター越しにクロウへ声をかけた。

 

「あ、はい」

「ほれ、パシリ代じゃ」

 

 無造作に投げ渡された札束を、クロウは慌てて受け止める。相変わらず調子を狂わされる相手だ。

 

「して、クロウ。今日はこのあとダンジョンかの?」

「オフです。何するかは決めてないですけどね。もう用事は済んじゃったし」

「ほう。それはちょうどよかった。ちと付き合うのじゃ」

「え? 実験は嫌ですよ」

「違うわい」

 

 てしっ、と軽くクロウの肩をひっぱたく。

 

「ジャンク・ドッグのジジイに頼んでいたものを取りに行くだけじゃ」

「ええ? 錆街まで行くんですか」

「うむ。こんなロリロリな美女が一人で歩いていたら、ちんぽイキり立たせた底辺ランナーどもに群がられてしまうからのう!」

「…………まあ、いいですけど」

「なんじゃその間は」

 

 うがーっ、と威嚇しながらシズクがカウンターの向こうからクロウのそばにやってくる。並んで立つと、中背のクロウよりもさらに小さい。それでいて危険な色香を漂わせるこのシズクというのじゃロリババアが、よからぬ輩を引き寄せてしまうのは事実。頼られるのは嫌いじゃない。クロウは手を差し出した。

 

「じゃあ手、繋ぎます?」

「おぬしこそバカにしとるじゃろ」

「いてっ」

 

 ぺしっ、と手を払われる。シズクは営業中の掛札をひっくり返し、入口の扉を開けた。

 

「なにボサッとしとるんじゃ。はよ行くぞ」

 

 クロウは手の甲をさすりながら、彼女のお尻を追う。

 

▼桐生ダンジョン特区 ラストタウン PM04:00

 

「まーったく、近頃の若いもんはなっとらんな! わしのようなプリティーな老人に席を譲らんとは」

「都合の良いときだけ年取りますよね」

「うっさいのじゃ」

 

 満員のバスに揺られてようやく辿り着いた、北部に広がる巨大な拡大都市(スプロール)。通称錆街(ラストタウン)は、メインエリアの喧騒とはまた違う、淀んだ熱気と瘴気の匂いに包まれていた。

 無許可増築されたトタン屋根やコンテナハウスが迷路のように入り組む路地では、薄汚れた子供たちがサッカーボールを蹴り飛ばして遊んでいる。今も凄い勢いでこちらへ突っ込んできそうになった子供から庇うように、クロウはスッとシズクの小さな肩を抱き寄せて道を譲った。

 

「……おっと。気が利くのう」

 

 シズクは憎まれ口を叩きながらも、少しだけ顔を背けた。その頬はわずかに紅潮していたが、クロウの目には入らない。

 満員のバス車内で否応なしに密着させられていた時から感じていたことだが、こうして不意に庇われると、彼から漂う雄の匂いが嫌でも鼻を突いてくる。しかもそれは単なる汗の匂いではなく、彼の中に溜め込まれた膨大な超純度魔力がフェロモンのように溢れ出したものだ。ちんちくりんな外見の下で超絶ご無沙汰だったシズクのメスの本能が、無自覚のうちに小さく粟立っていた。

 

 錆街の入口でバスを降りた二人が目指したのは、街の一角にある一際巨大なガレージだった。

 シャッターには、歯車や鉄パイプなどのスクラップを寄せ集めて作られた凶悪な犬のグラフィティと共に、『ジャンク・ドッグ』という文字がスプレーで乱暴に描かれている。中に入ると、油と鉄錆の匂いが鼻を突いた。

 

「おーっす。生きとるか、ジジイ」

 

 シズクが遠慮なく声をかけると、奥でバチバチと散っていた青白い火花が止んだ。顔に溶接用のマスクを被った筋骨隆々の老人が、重い足音を立てて姿を現す。この廃工場を改装したガレージでカスタムバイクの製造やエーテル動力の修理を請け負う凄腕のメカニック、ゲンだ。

 

「おう、来たな一滴堂のクソババア。なんだ? また一段と背ぇ縮んだんじゃねえか?」

「やかましい。さっさと頼んでおいたブツを出すのじゃ」

 

 見た目は十歳そこそこのちんちくりんな少女と、白髪交じりで無精髭のいかつい老人。はたから見れば祖父と孫にしか見えない二人が、互いを「ジジイ」「ババア」と憎まれ口を叩き合う奇妙な光景が目の前で展開されていた。

 

「んで、そっちのツレは?」

 

 ゲンは作業用マスクを額に押し上げ、シズクの後ろに控えているクロウへと視線を向けた。マスクの下から、白いヒゲと日に焼けた精悍な顔立ちが覗く。

 

「こやつはクロウじゃ」

 

 クロウは軽く頭を下げた。それから興味深そうにガレージを見回す。エーテルエンジンが青白く発光するバイクがあちこちで唸りを上げていた。

 

「おぬしも男じゃのう。二輪に跨りたがる年頃か」

 

 シズクが揶揄う。

 

「いや、ただ足として便利そうだなと思って。……バスはいつも混んでるし、デカい荷物とか持ったままだと乗りづらいから」

「色気のないやつじゃの。ま、それも道理じゃな」

「好きに見ていけ。カタログもある」

 

 ゲンはシズクに預かったブツを取りに、奥へと引っ込んでいった。少しして、クロウがボーっと並んだバイクを眺めていると、戻ってきたゲンが作業台の上にエーテルバッテリーを置いた。小型だが、かなり重そうな音がした。

 

「ほらよ。そろそろ新しいのに買い換えたらどうだ?」

「どうせ新しくしてもぶっ壊れるのじゃ。ぶっ壊してなんぼなのじゃ」

「そんなに壊してるんですか、シズクさん」

 

 クロウは使い古されたバッテリーを観察する。

 

「俺がガキの頃からな。そのせいでこういう仕事が得意になっちまった」

「この店が繁盛しているのもわしのおかげなのじゃ」

 

 シズクは得意げに胸を張った。

 

「ま、否定はしづらいな」

「……ところでこれ、俺が運ぶの?」

「当り前じゃろ」

「そっかぁ……」

 

 クロウはため息をつきつつ、よいしょとエンジンを持ち上げる。やはり見た目以上にずっしりと重いが、きつくはない。

 

「そんで今度はこれ抱えてあの満員バスに……?」

 

 うんざりするクロウに、シズクはニヤリと笑った。

 

「安心せい。足も預けてあったのじゃ」

 

 ゲンがガレージの隅から引っ張り出してきたのは、くすんだ青色のスクーターだった。とってつけたようなエーテルエンジンがむき出しになっている。

 

「あんまスピード出すんじゃねえぞ」

 

 ゲンが放り投げた鍵を、シズクは器用にキャッチする。

 

「サンキューなのじゃ。ほれクロウ。おぬしは後ろに乗るのじゃ。荷物をしっかり抱えておくんじゃぞ」

 

 シズクはハーフヘルメットを被ると、スクーターにちんまりと跨った。

 

「あ、はい……」

 

 (シズクさんが運転するんだ……)と内心思いながら、クロウは片腕でバッテリーを抱え込んで、背後に乗り込んだ。そしてもう片方の手は、前でハンドルを握るシズクの華奢な腰にがっしりと添えられた。

 

「ひゃいっ!?」

「わっ、大丈夫ですか」

「な、なんでもないのじゃ! ……ゆくぞ!」

 

 シズクは慌ててスロットルを捻ると、エーテルエンジンが独特の音を立てて駆動した。二人はゲンに手を振って別れを告げ、スクーターは錆街の路地へと走り出した。

 裏道をすいすいと駆け抜ける道中は、案外心地よかった。狭い道を豪快に通り抜けていくシズクの運転のお陰で、何度彼女を強く抱きしめてしまったかは分からないが、ともあれ無事にスクーターはメインエリアへと戻ってくる。帰りは、行きに掛かった時間よりもだいぶ早かった。

 

「着いたのじゃ!」

 

 一滴堂の裏で、クロウはシズクに急かされるようにスクーターから降りた。

 

「道詳しいですねシズクさん」

「ふはは、年季が違うわい。それよりさっさとそいつを中に運ぶのじゃ」

 

 シズクは裏口の扉を開けて、クロウを中に入れた。扉の向こうは彼女の工房に直接つながっており、そこには未知の光景が広がっていた。どうやって使うのか想像もつかないような器具がところ狭しと並び、棚の中にはクラフト素材が整然と収納されている。

 

「ここじゃ」

 

 指示された場所に、エーテルバッテリーを慎重に下ろす。クロウはほっと一息ついた。

 

「ご苦労なのじゃ。これで美味いもんでも食うてこい」

 

 シズクはわざわざ引き出しからポチ袋を取り出してきて、千円札を数枚包んで渡してきた。

 

「ありがとうございます」

「うむ。また来るんじゃぞ!」

 

 クロウは追い出されるように工房から出て、裏路地に立った。「またのぉ~」と見送りに出てきたシズクに振り返って手を振り、どこに行こうか考えを巡らせた。日はすでに沈みかけている。

 一方、クロウを見送ったシズクはというと。

 

「ふぅ……」

 

 裏口を締め、我慢の限界とばかりに扉に背中をもたれかけると、そのままズルズルと座り込んだ。

 

「バカものめ……あほみたいに引っ付いてきよってからに……」

 

 顔を紅潮させ、浅く呼吸をする。クロウから溢れ出る高純度の魔力に晒され続け、シズクの身体は魔力酔いのような変調をきたしていた。それを悟られないよう、到着して早々に用事を終わらせて彼を送り出したのである。

 

「……晩飯でも振る舞ってやればよかったかのう」

 

 シズクは熱に浮かされたような表情でそう呟き、しばらく虚空を眺めていた。

 

▼桐生ダンジョン特区 メインエリア『飯処 錆び刃』 PM06:00

 

 シズクと別れた後、クロウが足を向けたのはメインエリアのさらに外れにある小さな店だった。『飯処 錆び刃』と書かれた暖簾を潜ると、焦げた油とニンニクの強烈な匂いが鼻を襲う。

 

「……おう、クロウか」

 

 無愛想な店主が出迎える。他に客はいない。クロウは手近なカウンター席に座った。

 

「ラーメンと炒飯で」

「おう」

 

 店主は短く返事をすると調理に入った。

 クロウがここに通うようになってから長い。店主は廃業した元ランナー。ここに来るのはランナーか下っ端管理局員が多い。その次に近所の暇してるおっちゃんか。店内の隅っこに設置されたテレビを見上げ、クロウはカウンターに置かれたコップを手にとって水を注いだ。テレビではアイギス・プライムの社長が何やら会見をしている映像が流れているが、スピーカーが壊れているのかボソボソとした音声しか聞こえてこない。

 カウンターの向こうでは、中華鍋で大量のキャベツが炒められる音が響いている。

 数分後、目の前にドンと置かれたのは、この店でクロウが一番好きなメニュー。丼に山のように盛られたキャベツと、その下に隠れたガツンと脳を殴るような濃いめの豚骨しょうゆのスープが特徴のラーメン。そして横には食欲を唆る香ばしい匂いを放つニンニク炒飯。

 

「いただきます」

 

 ここには、シティセンターでは味わえないものがある。ついつい、メインエリアに来ると足を運んでしまう中毒性のある味だ。

 一口スープをすすると、強烈な塩気とニンニクの暴力、そして溶け出した野菜の旨味が体に染み渡った。きっとアヤカさんにはすぐバレる。彼女はどんな顔をするだろうか。

 クロウはそんな想像をしながら麺をすすり、炒飯を掻き込んだ。あっという間にペロリと平らげ、水を飲んで一息つく。

 

「ふぅ……」

 

 テレビのニュース番組はスポーツに移っていた。高崎競馬のナイターがどうとか、そんな内容は伝わってくるが、相変わらず音は聞こえない。

 なんとなくしばらくそれを眺めたクロウは、時間を確認して腰を上げた。

 

「ごちそうさまでした。美味しかったです」

「おう、また来いよ」

 

 カウンターにお代を置いて、店を出る。夜の生暖かい空気が頬を撫でた。

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