※この作品はR-18です。

滅亡世界の生存者   作:トイタトタタン

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実は17話と18話は難産でした。
危なかった、危うく正気に戻るところだった。既存キャラとオリ主のガチ恋愛など、恥ずかしいことを書いてるんじゃないかと思ってしまった!
正気に戻るな!二次創作なんて基本恥ずかしいもんだ!って言い聞かせながらなんとか書き上げました。

ちなみに、エッチなシーンはしばらくありません。トラップを仕掛けないといけないので、数話お待ちください。


18話 告白

 眠れなかった。当たり前のことである。外ではすでに鳥たちが鳴きはじめ、朝日が周囲を照らし始めている。

 朝からするべきことがあるのだからと眼を閉じても、思い出すのは昨日の桜羽さんのことだ。オレンジ色の光に照らされた中、俺の腕の中でこちらを見上げて、「好き」と小さの声で呟いた彼女。

 

 自分よりずっと下の子相手に年甲斐もなくとは思うが、それでも頭に浮かぶだけで心臓が早鐘を打つ。端的に言って、ものすごく可愛かった。

 

 好きにもいろいろ形があるし、親愛の好きだともいえるかもしれないが――流石にそのあとの彼女の反応を見ればわかる。あれは恋愛的な意味の好きだった。

 

 今まで、そんな気がしなかったわけではない。桜羽さんの振る舞いからもしかして俺のこと好きなんじゃと思ったことがあり、そのたびにいやいやまさか、調子に乗るな、勘違いするな童貞野郎と自分自身に言い聞かせてきた。

 

 しかし、実際のところ当たってたわけで。

 

「どうするかなーー……」

 

 考えてみるも頭が回らない。理由は単純。眠いからである。

 うとうとして何回か意識を失った気はするが、逆に言えばその程度しか眠れていない。

 朝になったから起きなければいけないが、今は極度の睡眠不足である。頭がぼーっとしてるし、顔も眠そうな表情になっているだろう。

 

 いや、いけない。こんなみっともない表情を桜羽さんに見せるわけにはいかない。好きと言ってくれただけでその相手にカッコつけたくなる、そんな男の単純な心理に従って飛び起きた。顔でも洗えば、少しはましになるだろう。

 

 目指すのは温泉の脱衣所だ。蛇口は使えなくとも鏡と流しは使えるため、そこの洗面台を使うつもりだった。早歩きでそこに向かい扉を開けると、俺以上に早起きの桜羽さんがそこにいた。

 顔を洗う直前だったのだろう。コップにくんだ水を手に持って、鏡と洗面台の方を向いていたが、扉の開く音にぱっとこちらを振り向く。

 

「……おはよう、桜羽さん」

「お、おはよう」

 

 彼女の顔を見る。髪はぼさぼさで、眼には力が入っておらず、今にも寝てしまいそうな表情だった。もっとも、それでも相変わらず可愛いままだったが。

 そして彼女の方も俺の様子に気付いたのだろう。俺の顔と髪の様子を眺めて、そして、

 

「へ、えへへ……」

「あははは……」

 

 お互いに力なく、はにかんだように笑った。つまり二人そろって寝不足なわけだ。おそらく二人とも同じ理由で。

 

「あのさ、桜羽さん。今日なんだけど、朝ごはん食べるのもやめてまず二度寝しないか?少なくとも俺は、この状態で川に行ったり車の運転はできないよ」

「そうだよね。……あの、二度寝ってもしかして」

 

 桜羽さんが言葉を切る。顔を赤らめて、上目遣いで言った。

 

「一緒に寝る、とか?」

「……あー、その、それじゃあ眠れないよ。ずっと寝不足のままだ」

「だよねえ」

 

 力なく笑うその様子を見るに、どうやら本格的に眠いらしい。そしてそれは俺も同じだった。

 

「とりあえず、今日はお互い自由に過ごそうか。相手が起きるのを待ったり昼ごはんのタイミング合わせたりしようとすると気を使うし、もう好きなだけ寝よう」

「分かったよ」

 

 そのまま桜羽さんはこちらへと向かってきた。二度寝するなら目を覚ますために顔を洗う必要もないのだろう。

 俺も洗面台を使う用は無くなったため、その場から踵を返す。数歩だけ歩いて、彼女がドア付近で立ち止まったままついてきてないことに気付いた。

 

「桜羽さん?部屋に戻らないのか?」

「えっと、戻るよ。戻るけど、先に行っててほしい、その……」

 

 彼女はそっぽを向いて、俺の方を見ないままに言った。

 

「なんだか、並んで歩いてるだけで恥ずかしくなっちゃうから」

「そ、そっか、分かった」

 

 つまり、それだけ意識してしまっているということで。その振る舞いに今日何度目かの桜羽さんは可愛いという感想を抱きつつ、顔を見られないように足早に部屋に戻った。

 

 俺の顔も、恐らく赤くなってしまっていただろうから。

 

 

「さて、どうするかな」

 

 ベッドに再び横になる。その状態で考えるのは、やはり桜羽さんのことだった。

 

 まず大前提、俺の方は桜羽さんのことが好きであるか。

 答えは当然好きである。と言うか、自分のことを慕ってくれる可愛い女の子と共同生活をして、相手のことを好きにならない男がいるだろうか。いや、いない。

 

 心配なのはこれが性欲ゆえの気持ちじゃないかと言うことである。だが、性欲のある愛は純粋な愛じゃない、などと子供じみたことをいうほどガキでもない。というかこの状況下で性欲のない愛はただの家族愛だ。多分彼女の求めてるものじゃない。

 

 それを踏まえて次は俺がどう行動すべきか。

 

「少なくとも、無かったことにして話題に出さないのは無しだ」

 

 今朝のやりとりから、お互い意識してるのは分かっている。それでもなお話題に出さなかったら、俺がどう思っているのか彼女を不安にさせるだろう。

 そのまま放置して、桜羽さんからの動きを待つ手も存在はするが……女の子の方から告白させておいて次の行動も受け身などと、男として無しだ。

 

「じゃあ次、付き合うのか、付き合わないのか」

 

 付き合った場合のメリット。これはまあ分かりやすい。お互い両思いなのだからハッピーエンドだ。

 では逆に付き合った場合のデメリット、付き合わなかった場合のメリットは何か。というかそもそも、両想いなのになぜ俺はこんなにうだうだ考えているのかと言うと、

 

「やっぱり、年の差がな……」

 

 俺と桜羽さんの年齢差は、現代社会からすれば後ろ指をさされるような代物だ。少なくとも、その手の問題を起こして炎上したり逮捕された同業者を、俺は何度も見てきたのだ。

 だから俺の中で未成年の恋人と言う存在が酷く罪深いものに思えている。もちろん今まではそれでよかったのだが、もはやその現代社会自体が存在しないのだ。

 

 なにより、これは桜羽さんの気持ちにも関わることだ。俺の中で禁止事項だからと真面目に向き合わず、彼女の心を踏みにじるようなことはしたくなかった。

 

「そもそも、なぜ歳の差のある恋愛関係がよくないのか」

 

 問題の発生するパターンを考えてみる。

 大人側が相手の体だけが目的で、本当は大切に思ってない場合か。この問題は発生しない。性欲はあるが、俺は彼女のことを大切に思ってるつもりだ。

 若いころに貞操が乱れれば、大人になってからまともな相手と結婚できないからか。この問題も発生しない。もはや男は俺しかおらず、他の相手が存在しない。

 若いころは恋で盛り上がれても、そこから数十年後、大人側が老人になって冷めるからか。この問題は――

 

「うわっ、怖っ、発生しうるな……」

 

 彼女より先に俺は老いる。おじいちゃんになる。その時に桜羽さんの心が冷めて、内心では嫌いになったりとか、加齢臭きついとか思われたら、

 

「辛ぇ、けど……」

 

 この問題は、付き合わなくても発生する。共同生活自体は続いていくのだから。というかそもそも、そんなに長生きできるかもわからない。事故や災害や、あるいは猛獣か、そんな存在に急に殺されてもおかしくない状況だ。

 

「結局のところ、俺の覚悟の問題だな」

 

 これから先、ちゃんと彼女を幸せにできるのか、してみせるというそういう覚悟だ。

 ちゃんと大切にできるか。調子に乗って乱暴なことしたりしないか。後、俺はしっかりと彼女の前でカッコよくいられるか。

 覚悟の桁が付き合うとかではなく結婚のレベルな気はするが、現状もある意味似たようなものである。そして、俺はどうかと言うと、

 

「覚悟なんて、とうにしてる。今までと何も変わらない」

 

 誰もがみんな死に絶えた世界で彼女と再会した時点で、そう誓って、そう行動してきた。恋人になったところで普段の生活の何が変わるというのか。

 変わるとしたら……それは……性関連か?

 

「いやいや、ないない、猿か俺は」

 

 付き合って即エッチ、なんてのは男の考えだ。いや、男でもかなりあれな部類じゃなかろうか。

 桜羽さんくらいの年齢の子からしたら、恋愛ってもっと華やかな、漫画的なものじゃないだろうか。性的な汚いものをそこまで意識もしていないだろう。

 

 それを踏まえて、次は……

 

(眠い……)

 

 意識がもうろうとしていく。思考に霞がかかっていく。睡眠の不足する体が、早く休めと訴えかけてきていた。

 特に抵抗することもなく睡魔に身を任せる。続きは、起きてから考えることにした。

 

 

 適当な時間に目を覚まして、適当な保存食で昼食を済ませる。桜羽さんがいないのなら、食事の内容などどうでもよかった。

 彼女は俺より先に起きたのか、あるいはまだ起きていないのか、いずれにせよ顔を合わせることもなかった。

 

 その後も共有スペースには居座らず自室にこもる。桜羽さんと再び顔を合わせたのは夕食のころであった。

 お互いまだ照れが残りながらも2,3言葉を交わしつつ夕飯を終える。食器を洗い、歯を磨いて、いつもなら昨日のように少しだけ遊ぼうかというような時間になった。

 

 そんな時間に、俺はソファに座って言った。

 

「桜羽さん。こっちに来てくれるかい?」

「え、えと、うん」

 

 俺の雰囲気に話の内容を察したのだろう。彼女はしずしずと歩いてきて、俺の隣に座った。

 ここ最近よくあるように、肩が触れ合いそうなほど距離の近い位置に、桜羽さんがいる。

 

「昨日のことについて、なんだけど。念のため確認なんだが、混乱した結果だったりとか、気の迷いとかじゃないよな?」 

「それは、そういうのじゃないよ。いや、自分でも気づいてなかったんだけど、昨日急に分かったんだけど、いつのまにか、その――」

 

 わたわたと慌てた後、うつむきがちになりながら言葉を続ける。

 

「あなたのことが、好き、でした」

「あー、そ、そうか……」

 

 彼女のその愛らしさに、つい言葉を詰まらせてしまう。だがここまで来て、俺がおじけづくわけにもいかない。

 

「俺も、君のことが好きだよ」

「あ……」

 

 桜羽さんの手を軽く握る。その瞳を見つめて、言った。

 

「だから、付き合ってください」

 

 何を言うかだけは決めていたから、どれだけ照れても噛まずに言うことができた。

 その言葉を聞いて彼女は、なぜか涙を流していた。

 

「ごめん……。ごめんなさい、先生」

「桜羽さん?」

「違くて、こんなに幸せでいいのかなって、ボクが幸せになっても……」

 

 俺には理解できないまま、謝罪の言葉を繰り返す。思えば彼女は最初からサバイバーズギルトを患っていて、何かに罪の意識を感じていた。

 

「いいんだよ。確かにみんな死んでしまったけど、それで生き残った俺たちが幸せになっちゃダメなんてことはない」

「けれど……」

「それに、その、なんというか、あれだよ」

 

 予想していなかった状況で気恥ずかしいセリフを言うことについためらってしまう。でもきっとこれは、今の彼女には必要な言葉だろう。

 

「好きな子が幸せになってくれないと、俺が幸せになれないよ。だから、幸せになってほしい」

「先生のために?」

「そう、俺のために」

「そっか……うん、それが先生のためになるなら、仕方ないよね……」

 

 俺の言葉が届いたのか、彼女は涙をぬぐって笑ってくれた。

 

「先生のために、ボク、幸せになるね!」

 

 その笑顔があまりにも綺麗だったものだから、我慢できなくなる。

 気付けば彼女の頬に手を添えていて、

 

 その唇に、口づけを落としていた。

 

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