写真を撮り終え旅館へと戻った後、俺はエマと一緒にパソコンの画面を見つめていた。PCに吸われたデジカメの写真がいくつも表示されていて、そこから印刷するものを選んでいく。
畑を撮ったものは印刷まではしないから早々に外し、選ぶのはお互いが映っている写真だ。エマの持っていたカメラ、主に俺の写っている画面を見て、エマが言った。
「ねえ先生、盗撮って、してもいいかな?」
「うん……うん!?盗撮!?」
突然のエマの発言にエマの方を向くと、彼女は慌てた様子で弁解を始めた。
「あ、あの、盗撮って言っても変な意味じゃなくって、ほらSNSでもよく他人を許可なく撮ったら盗撮だって言われるでしょ?」
「まあそうだな、それは確かに……」
「こうしてみると全部正面からの、身構えた写真だからさ、普段の自然な姿の先生も取りたいなって……先生も、やりたかったらボクのこと盗撮していいから!」
「お、おう……」
言わんとすることは分かる。確かに許可なく不意打ちで撮ったら盗撮と言えるだろう。それにしても、俺がエマを盗撮してもいいというのはどうなんだろう。
答えに窮していると、俺が許可を出さないと思ったのかエマはさらに言葉を続けてきた。
「それにほら、こうして許可も取ってるし、恋人同士だし。盗撮はセーフなんじゃないかな?」
「そ、そうだな……」
『セーフ』と言う言葉を聞いただけで、一瞬ドキリと胸が跳ねた。だが今の言葉には何ら特別な意味はないだろう。ただ日常の風景を、不意に切り取りたいと言っているだけだ。
「分かったよ。エマが撮りたいときに、いつ撮ってもいいから」
「ありがとう!先生も、いつボクのこと盗撮していいからね」
「ああ、うむ」
しばらくしてエマの選んだ写真を印刷し、それにラミネート加工を行っていく。自分の写真に対してそれを行うというの変な気分だが、彼女がそれを求めるならば仕方ない。
次に俺のカメラで撮った写真から印刷するものを選ぶ。写真を飾る趣味はないが、エマが俺単独でいる写真を飾ると言っていて俺がそうしないわけにもいかない。どれを選ぶかと画面を見つめていると、突然俺の横からシャッター音が聞こえた。
「エマ?」
「えへへ、盗撮しちゃった」
「そうか……えっと、変な表情してないか?」
「大丈夫だよ。うん、やっぱり横顔は盗撮じゃないと撮れないよね」
そういってカメラをニコニコと眺めている。大丈夫と言いつつ否定自体はしていない返答に不安になるが、エマはとても嬉しそうだ。そんな姿を見せられると、少し盗撮で変な写真を撮られてもまあいいかと、そんな風に思えてしまった。
■
写真を印刷してお互いの部屋に飾るころには、夕方頃になっていた。夕飯には少し早いもののそれほど時間があるわけでもない隙間時間に、俺たちは休憩室でのんびりとしていた。
とはいえ四六時中同じことをしているわけでもない。俺は一人でカメラと、その取扱説明書を読み込んでいた。
小さなカメラでもその機能は多彩で、撮った写真にいろいろな補正を加える機能や、動画を撮る方法まであった。それらの機能を使うかは分からないが、こういうものは説明書を読んでいるだけでも面白い。
エマは体が沈み込むソファに座って漫画を読んでいた。そのわきにはこれから読む続きも積まれており、完全にリラックスしている様子である。
その姿を見て思い出してしまうのは、以前同じ姿勢でスパッツが見えていたことだ。彼女の体をぴっちり覆う黒い布を盗み見て、それでもバレなかった、そんな記憶。
だからこそ今回も見てしまう。もしかしたらと思い目をやるとスパッツは見えなかった。なぜなら彼女の太ももはそのままさらけ出されていたからだ。無防備な白い生の素肌が、スカートの影に見え隠れしている。
まさかという期待とともに観察してみるも、流石にパンツまでは見えなかった。そこまで無頓着ではないのだろうし、スカートと言うものそれ自体がそんな長さで設計されていないだろう。それはそうだと思って元の作業に戻る。
そんな俺の目の前には、カメラがあった。
俺の視点からは彼女のスカートの中は見えない。当然だ、高さがあるのだから。だがもしも視点がもっと低ければ、エマのスカートと同じ高さならば、見えるものもあるだろう。
(いや、流石にそれはダメだろう……)
分かっている。バレるバレないの問題では無い。それは明確な犯罪行為だ。我慢するべきで、いやそもそも我慢しようと思っていること自体がおかしいとか、そんなことをごちゃごちゃと考えてしまう。
どうするべきか迷って、彼女やその周囲へと視線をやったり、外したりとしてしまう。そんな中、エマの唇が視線に入ったとき――
『盗撮はセーフだよ』
そんな言葉を、言われた気がして
パシャリと、シャッター音が鳴り響いた。当然のごとくなる音にバカのように驚いて、慌ててカメラを手元へと引き上げた。
音は当然彼女にも聞こえたのだろう。こちらを向いて、そして言う。
「あ、先生。盗撮しちゃったの?」
ニヤリ、とでもいうような笑み。からかいが混じったような表情は、それでも俺を非難する色はなかった。
それもそうなのだろう。今日俺たちの間で交わされた『盗撮』という単語に、変な意味などないのだから。
「あ、ああ、撮りたくなってな」
「そうなんだ。どう?可愛く撮れてるかな?」
言われるままにデジカメの写真を確認する。エマの顔は見切れてしまっていて、可愛いかどうかは分からない。
だが、エマの下着は、写真の中にしっかりと写りこんでいた。
「えっと、その、可愛いというか……いい感じ……?」
「そっか、いい感じなんだ」
頭の悪い感想を、それでも笑って受け入れてくれた。自分でも何言ってるんだろうという内容だったが、問題なさそうだ。
「いい感じなら嬉しいな。もっと好きに撮っていいからね。ボクも先生のこと撮影するから」
「もっと……?」
「うん。可愛くないとかなら心配だったけど、先生がいい感じだって思うならもっと撮っていいよ」
許可を下すエマの言葉。そんな意図はない。そんなはずはないと何度も言い聞かせようとする。
それでも、しばらくはデジカメを手放せなくなりそうだと、そう思った。
■
深夜。自分の部屋で一人で過ごす。手元にはデジカメがあって、そこには一枚の写真が写っていた。
一人の、未成年の少女の写真。下着を撮ってしまったその写真は、被写体が何かを強調するがごとく顔すら画角に入っていなかった。
(最近の俺は……どうかしてる……)
我慢ができなかった。気づけばシャッターを押していた。性欲に負けて、理性が消えて、欲望のままに行動してしまった。
今回のことだけではない。エマに服越しにペニスを押し付けたり、胸に顔を埋めたり、お尻を揉んでしまったり、なにかしら回避できた気がするのに、どうしても場に流されてしまう。
人間は危機的状況で性欲が高まるという話を聞いたことがある。そのたぐいの事柄だろうか。俺はこんなに我慢弱い人間ではなかったはずなのに、何か精神に異常があるように思えてしまう。
(とりあえず、この写真は消さないと)
デジカメを操作する。写真を消すのは簡単だ。その写真を表示して、削除ボタンを押せばいい。説明書で読んだとおりの操作をしてボタンを押すと、ダイアログが表示された。
[本当に削除してしまってよろしいですか?]
後は決定ボタンを押す、それだけなのに、指がどうしても動かない。
あれからエマの下着を撮る機会はなかった。手に入ったのは、この写真ただ一つだ。だからこそ、そう、本音を言えば、あまりにももったいない。
(こんなのダメだ、本当に、ダメなのに……)
分かっているのに、どうしても消せない。自分の理性が、また欲望に負けているのが分かる。それでも消したくなかった。動悸が激しくなって、体温が熱くなる。興奮が、高まっていく。
(くそっ……!)
ダイアログを消して、エマの下着を再び画面に映す。ズボンとパンツを下ろして、すでに大きくなっていた自分のものを握りしめた。
(一回抜いたら、落ち着くから。一回抜いた後削除すればいいから……)
小さなデジカメの、小さな画面。その中の小さな布を見ながら、必死になって股間をしごく。はたから見たら滑稽な有様だと、そう思ってもやめられなかった。
自分の手でもたらす快感はいつも通り心地よく、あふれ出す脳内麻薬が安易な幸せで脳を満たしていく。
エマの下着は水色で、飾り気のないシンプルなものだった。それは彼女の女性器を覆い隠して、その形に緩く湾曲している。
そう、女性器。この布の奥にそれがある。誰にも見られたことが無くて、隠されていて、穢されていない無垢な秘部。
男とセックスするための、小さな穴。
頭の中では、もうエマを犯すことを考えていた。自分の棒を突き立てて、何度も容赦なく往復させる。脳内のエマは、とても都合よく俺のことを受け入れてくれていた。
でも、それは許されることではない。彼女はまだ15歳なのだから。
(想像するだけだから……っ!ちゃんと、我慢するから……っ!)
射精が近づいてきて、あえて手の動きを緩める。もっと長く、もっと深く、この快楽を、この写真を、楽しんでいたかった。
ただ自分が気持ちよくなるための、身勝手な動き。そんなもので想像のエマも一緒に気持ちよくなってくれている。
思い浮かぶのはそれだけではなかった。エマの胸の柔らかさ。お尻の丸み。知ってしまったらそれらが、何度もリプレイを繰り返す。
知らなければ我慢できただろう。知らなければ想像しなかっただろう。でももう経験してしまったから、あれから何度も自慰のたびに、その感触を思い返してしまっていた。
「エマ……っ」
隣の部屋に聞こえないように、小さな声で名前を呼んだ。ただそれだけで、興奮が一段階引き上げられる。手は先走りで汚れていて、くちゅくちゅと醜い音を奏でていた。
手の動きの強弱を操り、何度もイキそうになっては静めて、自分をあえて焦らすような時間をしばらく過ごし、心の中に欲求をためていく。
射精したい。出したい。きっと今ならすごく気持ちよくなれる。そんな我慢の限界に達して、傍らに置いてあったティッシュ箱に手を伸ばして――
その瞬間、コンコンとノックの音が部屋に響く。
「ねえ先生。入ってもいいかな?」
ドアの向こうから、エマの声が聞こえて
「お願いしたいことがあるんだけど」
俺の手は、完全に止められてしまっていた。
「ちょっと待った!」