俺たちが今住んでいる旅館。そこの壁には日めくりカレンダーをかけている場所がある。これを毎朝1枚ずつ、必ず破っていくことは、俺の仕事のうちの一つだった。
社会人をやっていたころのように予定やスケジュールに縛られているわけではないが、それでも重要なことだと言える。農業をするうえではいったい今は何月なのかを把握していることは非常に大切なことだったからだ。
今日もまた一枚、日付を破り捨てて過去にする。そして新たに出てきた1の数字が、月が替わったことを示していた。
「もう9月か。あまり涼しくなった気もしないんだけどな」
「これからちゃんと涼しくなってほしいよね。やっぱり暑いと大変だよ」
エマがそう言って俺の後ろからカレンダーをのぞき込んできた。彼女は今日も薄着で、白いシャツ1枚で過ごしている。光の加減によっては肌や下着が透けていてこちらは気が気でないのだが、気温が下がればもう少し着込んでくれるだろう。そのほうが、俺の精神衛生的にも安心だと思った。
「秋って言ったら食欲の秋だよね?何か食べ物取れるようになるかな」
「栗とか……胡桃とか、あとアケビとかかな。山菜も時期のものがあるかもしれない」
「わあ、楽しみ!一緒に取りに行こうね!」
そう言ってエマは部屋の片隅にある観光雑誌へと向かって行った。いったいどこに生えているのか探してみるつもりなのかもしれない。
しかし、栗や胡桃の群生地など、観光雑誌に載るものだろうか。逆に、どんな資料だったら載っているだろうかと考えていると、エマが「あっ」と声を上げた。
「せっかく水着用意したのに、使う前に夏が終わっちゃった!」
「ああ、そういえば……」
エマが選んで、俺が感想を言わされたあの白いビキニ。結局あの後から一度もプールを作っていなかった。思えばあれも八月の頭のことだったか。
「せっかくだし、今晩用意して明日一緒にプールで遊ばない?先生もボクがあの水着着たら嬉しいんだよね?」
「う……まあそう言ったし、間違いではないが……」
あの時の水着に対していった感想。まだ付き合っていない”桜羽さん”の水着姿を眺めて、見れたら嬉しいと言ってしまったことを思い出す。
しかし今考えると、あの言葉はエマの意図する通りに誘導されてなかっただろうか。
それはつまり
「エマって、いつごろから俺のことが好きだったんだ?」
「ひゃい!?」
俺の質問に彼女の顔が一気に赤くなる。毎晩俺のことを弄んでくる少女の弱々しい姿に、ついやり返してしまいたくなった。
「あの水着選んだときは、どうだったのかなって思って」
「えっと、どうなんだろう。ボク、自覚がなかったから……」
「じゃあ今思い返すとどう思う?」
「それは……その……そのころから、先生のこと好きだったと思う……」
うつむきながら言ってくれる可愛い恋人の好きという言葉。その空気にこちらまで照れてしまいそうになるが、俺はあえて堂々と振る舞う。
こういうのは、恥ずかしがった方が負けである。
「じゃあその少し前……そうだね、一緒に水の整理をしたころは?」
「そのころからも……す、好きだったよ」
「さらに前の一緒に釣りをしたときは?」
「も、もういいでしょ!」
跳ねるように顔を上げて、俺からさっと距離をとる。からかいすぎてしまったかもしれない。
「ともかく明日はプールだから!えっと、ボク部屋で準備してくるね!」
エマはそう言い捨てると自室へと逃げ去っていった。今からする準備なんて何もないと思うのだが、まあ口実だろう。
前回と違い、ちゃんと恋人になってからのプールである。可愛らしい少女のビキニ姿を見れることが、今は罪悪感なく、素直に楽しみだと思えた。
■
温泉に対してお湯を張り、一晩冷ます。そんな作業の結果今回もまた、なんとなくプールっぽい温度まで湯温は低下していた。
そんな他称プールのプールサイドで、俺は先に水着を着てエマの事を待っていた。まあ俺はもう水着を着ても、その下も見られてしまっているのだが。
しばらくするとカラカラと扉の開く音が聞こえてくる。「おまたせ」という声に振り返ると、そこには白いビキニを着たエマが、こちらにペタペタと歩いてきていた。
「えっと、どうかな?」
「そうだね……」
感想を求めてくる彼女の姿を眺めてみる。マイクロビキニというほどではないが、それでもビキニはやはり大胆な服装だろう。
お腹と太ももは完全に見えてしまっているし、胸も上の方と内側は、膨らんでいる部分が外気にさらされている。隠れている部分すら、それを綺麗に覆う形の布に包まれているせいで、どんな形状をしているのかが見るだけで分かるようになっていた。
可愛いよ。と、そんな感想を口にしようとして思い出す。そう言えばあの時、可愛いと言ったら「またそれ」と少し不満げにされたのだった。そしてその後言わされた感想。エマが求めてきた言葉は――
「……見れて嬉しいよ」
「そ、そっか。えへへ……!」
君のことを性的に見ている。そんな意味を含んだ言葉に、彼女は顔を赤らめながらも嬉しそうに笑った。
恋人の性欲を満たすことに喜びを覚えているのだろう。そのことがまた、俺の心からストッパーを消し去っていった。
■
プール代わりの温泉は水深が浅く、やれることが少ない。そんなわけで、遊びの内容は前回と同じものをすることにした。前に遊んでから1か月以上たってるし、それでも飽きないだろうと思ったからだ。
前と同じくビーチボールを用意し、前と同じく俺とエマ、二人で順番にパスを回している。ここまでなら全く変わらないが、一つ、前回と違うものがあった。
エマの水着である。
つまり……ボールをはじくたびに、エマの胸が揺れているのである。
前回のセパレートタイプの水着は彼女の胸の前面を覆って、上から軽く圧迫するように固定していた。だが今回のビキニは違う。首から垂らされた紐により、吊り下げるように固定されているだけである。
パスしたボールがエマへと向かい、俺の視線がボールを追って彼女をとらえた瞬間に、エマの胸がふるりと揺れる。むき出しになている上部のふくらみが、腕の動作に合わせて少しだけ形を変えた。
(世の恋人たちが、ビーチバレーをする理由がこれか……!!)
幸い、その魅惑の光景が現れるのはエマの手番だけだ。だからそれに夢中になってボールを落とすようなことはしていない。
むしろ失敗するのはエマの方で、今も受け止め損ねたボールが彼女の後ろへと落ちてしまった。
「あ、また落としちゃった。やっぱり運動だと先生強いね」
「強いとか弱いとかの話かな。そもそも勝敗のある遊びでもないんじゃないか」
「確かに勝ち負けのある遊びじゃないね」
そう言いながら後ろを向いて、水面のボールを拾い上げる。そのためにエマが前かがみになると、後ろから見える彼女のお尻が強調されてしまっていた。
そんな艶姿を背中に隠して、エマがこちらを振り返る。こちらにボールをパスしようと両腕を上にあげて……なぜかその手を再び下におろして、言った。
「先生のえっち」
「きゅ、急に何を……」
「……大きくなってるよね」
慌てて下向くと確かに俺の水着はテントを張ってしまっていた。それは軽い勃起と言える程度ではあるが、それでも見るだけで分かってしまう。
「さっきからボクの胸見てたもんね。それで興奮しちゃったの?」
「す、すまん、気づいてたのか……」
「ボクはずっと先生のことを見てるんだから気付くよ……嫌じゃないから、別にいいけど」
エマから正式に視姦の許可をもらってしまった。いや、だからと言ってガン見するのは節操がないとは思うが。しかし、許されたわけだし……。
いろいろと考えながらも、指摘された気恥ずかしさでエマから視線をそらしていると、エマがこちらに近づいてきた。
「先生。その……性欲処理、したい?」
「い、いや、こんな昼間からするのはだらしない気が……それに疲れてプールで遊ぶ余力がなくなるとおもうし……」
「そっか。遊べなくなるのは問題だね」
エマが再び俺から距離をとり、ボールを掲げる。その動きだけで、彼女の胸がまた少し形を変えた。
「じゃあ先生。再開しよっか!ボールパスするよ!」
健全な笑顔でそう言って、こちらの方へボールをはじく。その時揺れるだろう胸から、俺は必至で視線をそらした。
きっとこれ以上生殺しにされてしまってはかえって辛くなる。そう思って見ないようにした結果、今度は俺がたくさんボールを落とすことになった。
■
プールの中にたくさんスポンジを沈めていく。前回と同じく、たくさん拾った方が勝ちで負けた方は勝った方に命令できる、という罰ゲームまで決めたところで、エマが声を上げた。
「ボク、前に勝ったのにせっかくの命令権使ってないね」
「そういえばそうだね。何か命令したいことってあるかい?いや、今でなくてもいいんだけど」
「うーん、でも先生ってお願いすれば何でもしてくれるから、わざわざ命令権使わなくても……あっ!」
内容を思いついたのだろう。彼女はポンと手を打って、言いずらそうにしながらも言った。
「あのね、ボク、先生に聞きたいことがあって。でもたぶん恥ずかしがって教えてくれないから、命令権で答えて欲しいんだ」
「恥ずかしい質問か……えっと、なんだい?」
俺のことを恥ずかしがらせるのが大好きなエマからの質問。もうその時点で嫌な予感しかしないが、確かに彼女には命令権があるのだ。聞かざるを得ない。
「教えてほしいんだけど……先生の、その、性癖って何かな」
「せ、性癖か……」
「先生の好みを知りたいんだ。ボク頑張るから!」
相手が大人の女性だったらまだましだったが、目の前の恋人は15歳の少女である。そんな相手に自分の性癖を赤裸々に告白する。それはかなり、恥ずかしいことだと感じていた。
だがしかし、そもそもである。俺にそこまでこだわりのある癖はない。性癖がない、という話ではなく割と何でもいけるタイプだった。
「ほら、命令だから、恥ずかしがらないで教えて?相手に意地悪するのが好きとか、ちょっと変態的なものでも引いたりしないから」
「…………それは君の性癖じゃないか?」
「変態扱いされちゃった!」
とはいえエマが頑張ってくれるというなら何かしら言うべきだろう。つまり俺自身の性癖というより、俺がエマにして欲しいことを言えばいい。
「コスプレ……かな……」
「コスプレって……アニメのキャラクターの服を着るってこと?」
「そっちじゃなくて、こう、メイドとか、ナース服とかかな」
「そっか、先生はボクにそういう服着てほしいんだ。その状態でエッチなことして欲しいんだ。ふーん」
幸い引かれることはなかったようで、むしろ嬉しそうにエマは笑っていた。そんな彼女がメイド服を着て、ご主人様とか呼んでくれる姿を想像してみる。
とても素晴らしい光景だと思った。
「それじゃあ今度着てあげるね。ナース服は病院に行けば手に入るかな。メイド服は……どこだろう?」
「ああ、今なら本物が手に入るのか。メイド服はその手の店に行けば置いてるんじゃないかな」
「その手の店って?」
「それは……あれだ。アダルトショップ」
「アダ……!?」
考えたこともないだろう店の名前に、エマの顔が一気に赤くなる。そんな少女をアダルトショップに連れ込む成人男性。普通にやばい光景である。
でも、それと引き換えにメイド服を着てくれるなら、やるしかなかった。
そんな話をした後にスポンジを撒いて勝負した結果、再びエマが勝利して命令権を手に入れた。
彼女の周りでは水が変な動きをしてスポンジが勝手に集まっていたように見える。前回もそうだった気がするが、あれはいったい何なんだろう。動き方にコツでもあるんだろうか。
■
その後も再びバタ足をして泳ぐ気分に浸ってみたり、水鉄砲で撃ち合ったりと、エマといろいろな遊びをした。
徐々に日は落ちていって、温泉の高いところにある換気窓から入る光が弱々しいものになっていく。
「このあたりで切り上げようか。楽しかったかい?」
「うん、楽しかったよ!来年もプールで遊びたいね」
来年。俺たちはこうして生きているのだろうか。生活はどう変わっているのだろうか。不安はあったが、未来に希望を持てるのは良いことだ。
「それじゃあ最後に、先生ここに座って?またボクが背中流してあげるよ」
エマが鏡の前に椅子を置いて、俺のことを誘ってきた。前も俺は彼女に体を洗ってもらったことを思い出す。
あの時は彼女に体をなでられたことに性感を感じてしまい、さらにその後はエマの頭を洗う名目で彼女の体を眺めまわしてしまった。そのことを反省して、後悔して、次はしないようにしようと決めたのだった。
(もう、いまさらだな)
俺たちの関係は変わってしまった。エマには何度も性欲処理をしてもらって、彼女の体を視姦する許可ももらっている。
ここで断る理由はなかった。
「なら、お願いしようかな」
「任せてよ。ほら、こっち来て?」
促されるまま椅子に座る。エマは俺の後ろに回り込むと近くにあったボディーソープへと手を伸ばす。
そして当たり前のように、自分の手に直接液をつけていた。
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