登場人物が主人公とエマちゃんだけで二十万字いったことを誇っていこうと思います。
目が覚める。カーテンから全く陽が差していないことを考えると、今はまだ夜遅い時間なのだろう。そんな時間に目が覚めた原因は、きっと体の違和感が原因だ。蕩けるような違和感が今もまだ下半身に残ってる気がして、寝なおさないといけないのに鼓動が少し高まってしまう。
今日先生が入れてくれた時。思ったよりは痛くなくて、それでも確かに痛みはあって。その後、何度も先生のモノがボクの中を蹂躙したあの感覚。
隣を見ると暗闇に慣れた視界の中、モノクロの先生の顔が浮かんでいた。興奮しながらボクに腰を振っていた時とは全然違う、とても穏やかな寝顔でボクの隣にいてくれる。
(あぁ……されちゃったなあ……)
先生に襲われて、先生に入れられて、ボクは処女じゃなくなった。そして先生は、ボクの体内に欲望を吐き出した。
自分が穢された感覚が、とても狂おしいほどに嬉しかった。自分は、先生の物になったのだ。
先生を起こさないように声をこらえて、表情だけで笑みを漏らす。未成年に手を出さないと言っていたのに、先生は我慢できなかった――――それだけ、ボクが魅力的だと思ってくれているということだ。
ボクの体を掴む先生の腕。ボクの上に流れる男の人の汗。ボクにのしかかって、動けなくさせる大きな体。
そしてその後。中に出された。先生の精液が、ボクの子宮に注がれてしまった。
(赤ちゃん、できるかな)
できてるといいなと思った。もしそうなったらすごく嬉しい。
もちろん今の状況が大変だっていうのは分かってる。人が増えれば食べ物も必要になる。いや、妊娠の間ボクが動けなくなったらそれだけで先生の負担になる。
けれど先生は責任を取ると言ってくれた。きっとそうなっても、ボクのために頑張ってくれるんだろう。そしてボクはそれを支えて、二人で子供を育てていく。
それはとても幸福な未来だ。先生がボクのために決意してくれたこと。それがすごく嬉しかった。
嬉しくて嬉しくて、本当に嬉しくて…………
(だけどね、それじゃあダメなんだよ、先生)
本当は、責任なんて取って欲しくなかった。欲望に負けてボクを犯した後にごめんって謝って、反省と後悔をしてもうしないと誓った後に、それでもまた関係を持ってしまうような、そんな悪いことをしてくれれば良かった。
そのための計画を立てて、先生の心理を予想して、先生を堕とすために動きだした。
欲望を刺激して、プライドを傷つけて、誘って、隙を見せて、先生の方から手を出させる。
ボクが一人でシテいるのがバレたのは予定外だったけど、それすらも計画を早める結果になった。
全て想定通りに、先生は性欲に負けて罪を犯してくれたけれど――――
彼は、覚悟を決めてしまった。それ一つだけで全部覆された。
(ボクの計画は、先生の愛に負けたんだ……)
ボクのことを盗み見てしまったときのように、ボクの体に性器を押し付けてしまったときのように、ズルズルと性欲に流され続けて情けない姿をさらしてくれると思っていた。けれど先生は、今回ははっきりと自分の中で決意を固めてしまったのだ。
罪深くてもボクを守ると決意を固めた瞬間に、先生がボクに手を出すことは罪ではなくなった。
これからはもう、エッチなことをしてもボクにとって罰にも奉仕にもなりはしない。ただのご褒美でしかなかった。
(もっと罪に汚れてよ。もっとボクに罰を与えてよ。先生が……遠すぎるよ……)
すぐそこまで来ていたのに、欲望に溺れてくれていたのに。自分の罪と向き合って、受け入れて、それでもと前を向いていた。
それは罪を受け入れられないボクとは全くの正反対だ。すぐそこまで来ていた先生が、逆に遠くに離れてしまった。
釣り合わあない。このままじゃ先生に釣り合わない。先生が未成年に手を出したなんてこと、天秤を揺らすことすらできない。
でもきっと、考えてみれば当たり前のことなのだ。先生はボクを傷つけないのだから、先生がボクに罰を与えることもない。先生は、ずっとボクを守ってくれているのだから。
(じゃあもしも、先生がボクを守れなくなったら……?)
大人として、男として、ボクのために努力することが先生の誇りであり、その強い精神を支えている。だからもしもそこを崩したら、先生の心にひびが入る。
難しいことじゃない。例えば視線誘導で先生を止めて、怪力で拘束して、千里眼で監視して、部屋に閉じ込めてしまったらどうだろう。
ボクのために何も頑張ることのできない先生は、きっと折れてくれる。そして酷いことをしたボクに対して、遠慮なく、乱暴なことをしてくれる。
(ああ、でも、これだと先生に嫌われるかな……)
なら洗脳はどうだろうか。頑張らないでと言ってみる。今日は休もう、一日中エッチをしていよう、やるべきことは明日やればいい。そうおねだりすれば、多分洗脳の魔法は通る。
先生は魔法に気付かないまま自己嫌悪に陥って、罪悪感に溺れてくれる。
「【先生は……」
ダメだ。それはダメだ。歯を食いしばって、無理やりに自分の言葉を止めた。それは、やっちゃいけないラインを越えている。
自分の罪を誤魔化すために、さらに罪を犯すだなんて、そんなことをしてはいけない。
でも、他にできることが何もない。
先生に手を出させるという目標は達した。達したからこそ、そこで終わりだ。この先にできることはない。
(先生。ねえ、先生。間違ってよ。穢れてよ。覚悟なんて、決めなくていいよ。安易な道に進んでよ)
分かっている。先生はこれからも頑張り続けるのだろう。
ボクために。人類を滅ぼしたボクのために。未だに魔法を申告できなくて、先生に無駄な負担をかけさせているボクのために。
自分の罪と向き合う先生に比べて、ボクの罪だけがひたすらに重くなっていく。
(乱暴なことをしていいよ。傷つけてよ。ボクを好きに使ってよ。罰を与えてよ)
噛まれた首筋と、犯された性器が鈍い痛みを放っている。それはとても甘美な罰で、甘美だからこそ意味がない。
分かっている。こんなものはボクが先生に望んだからしてくれたことで、本当の意味の罰なんかじゃない。
(ボクが先生に酷いことをしないなら、先生がボクに酷いことをしてよ。じゃないとボク、罪深いままに幸せになっちゃうよ……)
先生がボクに告白してくれた時、ボクが幸せじゃないと先生自身が幸せになれないと言ってくれた。きっとそれは正しくて、ボクはボクを許した方がいいのだろう。
けれど、自分のしたことを受け入れたうえで未来を見続ける先生と違って、ボクは自分自身の罪を受け入れらない。
先生のために幸せになると言いつつ、先生のために魔法を使うことすらしない自己保身。身勝手さ。それなのに自分の幸福を望むことを止められない。
先生の子供を産んで、一緒に育てていく未来が、あまりに魅力的で。
(ごめんなさい……ごめんなさい、先生……)
いつかきっと、先生に対して罪を償わないといけない日は来るのかもしれない。
でも今は、その素敵な将来に思いを馳せて、夢に浸っていたかった。