ちょっと9月第1週まで仕事が忙しいので、更新が不安定になりそうです。
その店はとあるビルの3階にあった。狭い階段を上った先には紫やピンクの飾りと壁面で装飾された空間が広がっていて、怪しい空気が演出されていた。
本来なら締め切った窓から日光は入ることなく、店内の照明も雰囲気づくりに一役買っていたのだろう。しかし俺たちが遠慮なく窓を開けた結果、淫靡な空気は真昼の日光により駆逐されていた。
もっとも、ほこりが積もり荒らされていて、半ば廃墟と化した店内は、それはそれで退廃的ではあったが。
「な、なんかボクの知らない道具がいっぱいあるね」
「君には関わりのない店だろうからね」
店内を進みまだ無事な商品棚を眺めていく。目的はコスプレ衣装だが、それ以外に使えるものがあるかもしれない。
そう思いまず目に留まったのはローションだった。未開封ならまだ使えるだろうそれを手に取って商品かごに入れる。
「えっと、それって何?」
「ローションだね。ぬるぬるしてる液体で、摩擦なくこすれるようにするための代物だ」
「……?どんな時に使うの?」
「女の子に手でしてもらうときとか……あとは、本番するときに、痛みを少なくするためとかだよ」
「そうなの……?それって、わざわざ必要なのかな?」
使用用途に疑問を感じて、いぶかしげな顔をしている。そんなエマに対して「君は濡れやすいから必要ないね」と言いたくなるも、寸前で言葉を飲み込んだ。
今は昼間である。セクハラにはまだ早い。
「これは?」
「オナホールって言って、この穴に男のものを入れて、気持ちよくなるための物だよ。これにもローションを使うね」
「へ、へぇ、そうなんだ。へぇ」
顔を赤くして、誤魔化すように何度もへぇと言いながら、そそくさとオナホをかごに入れてきた。これ使っても子供はできないと思うのだが、エマの中ではありなのだろうか。
「女の子用だとこれか。ピンクローター」
「これは少し可愛い見た目かも」
「電源を入れると細かく振動するから、それを女の子の敏感なところに当てたり、中に入れたりする」
「そ……そうなんだ。そう使うんだ……」
自分が使われるところを想像しているのか、恥ずかしそうに俯いて何かもごもごとつぶやいている。その姿がすでに可愛らしくて、今ここで使ってしまいたくなるものの、理性を効かせて何とか耐えた。
使うとしても帰ってからだ。それまで、我慢しなければ。
さらに奥へ進んでいくと、マニアックな道具が増えていく。その中の一つを見て、エマが自慢げに声を上げた。
「あ、ロウソク!これならボクでも知ってるよ。ロウソクのロウって、とっても熱いんだよね?」
「実用的なロウはそうだけど、プレイ用のロウは融点が低いから、我慢できるくらいだよ」
「そうなの!?」
いくつか並んでいる蝋燭の中、初心者向けと書かれているパッケージを手に取ってみる。
安全に配慮してさらに融点が低くなっているうえに、簡単なプレイの仕方まで書いてあった。なんでも高いところから垂らすと、肌に落ちるまでの間に冷えるから温度が調節できるらしい。
「も、もしかしてそれ持ってくの?」
「いや、パッケージ見てただけで――」
「ロウソクたらされちゃう……!?」
「…………」
彼女の表情にほのかな期待を感じ取って、ロウソクもかごの中に入れてみる。エマは「ひゃあ」とか声を上げているものの、俺の動きを止めることはなかった。
その後もいろいろな道具を見たり、AVのパッケージを見ては彼女の知らないプレイを教えたりした。エマはその間ずっと顔を赤くしつつ反応に困っているものの、それでもちゃんと俺の話を聞いている。
まるで、性的なことに興味を持ち始めたばかりの好奇心旺盛で無知な少女に、一つずつエッチなことを教えていくような愉悦があった。もう最後までした間柄だけど、昼のエマにはまだまだ初々しさが残っている。
そう、昼のエマにはだ。
夜のエマは、なんかもう見た目も反応もエッチだし、自分から男の乳首を責めてくるし、その後に2回戦まで誘ってくる。雰囲気とか気分で切り替えているのだろうし、人は多面的であるものだけど、それにしても変わりすぎだと思う。
昼は淑女、夜は娼婦といえば、男の理想なのかもしれないが
(むしろ昼は天使、夜はサキュバスでないだろうか。夜のエマはもはや桜羽エマではなくサキュラバ・エロなんじゃないだろうか。俺は本当のエロを見つけたのかもしれない)
本人には絶対言えないことを考えながら店内を巡り、ようやくコスプレコーナーを見つけることができた。ハンガーにかけられたものを展示品として、様々な商品がビニールに袋詰めにされて置かれている。
「種類は多いけど、種類ごとの数が少ないね。ボクに合うサイズってあるのかな」
「本物の衣料品と違って需要が少ないから、数用意しても仕方ないからじゃないか?あとサイズは大きすぎても小さすぎても、それはそれで
「趣……?」
大きすぎたら隙間からいろいろ見えるし、小さすぎたら肉感が強調されてそれはそれでいいものだ。
とはいえ意図的にサイズが違うものを選ぶほどでもないだろう。できるだけ合うようなものを探しながら、買い物かごに詰めていく。
「バニースーツは、ウサギを食べてる身からすると純粋な眼で見れなくなりそうだ」
「そうかな?それでもウサギは可愛いままだと思うよ」
「まあうん、それは否定しないけど。……そう言えばエマって、ウサギに似てるところあるよね」
「え!?えぇ!?そんなことないと思うな!!うん!全然!!」
エマが慌てて全否定してくるも、考えれば考えるほど類似点がある気がする。
「寂しいと死んじゃうところとか、白くて目が赤いところとかそっくりじゃないか」
「あ、そういうとこ……うん、そうだね。似てるかもしれないね」
「………他にどこが似てると思ったの?」
「それは……え、えっと……」
俺の問いにエマは目をあちこちに彷徨わせて、悩んだあとに呟いてきた。
「先生に……食べられちゃうところ、とか?」
もしかして俺は今誘われているのだろうか。
ありえる。ありえるがしかしまだ昼間だ。俺はバニースーツをかごに入れて、次の衣類を手に取った。
「ナース服か……うん。これも持っていこう」
「どうしてナース服が置いてあるんだろう。露出が多い服装じゃないよね?」
「白衣の天使とかのイメージが強いからかな。優しく看護してくれそうな印象がある」
「えと、つまりボクがこれを着た時は、優しくしてあげた方がいいってこと?」
想像してみる。いつもエマからしてもらうときは彼女はこちらを嘲るような言動が多い。もしそれがとても優しいものになって、奉仕してくれるようになったとしたら――
「まあ、優しくしてほしい、です」
「ふふっ。そっか。覚えておくね」
そう言って笑うエマの姿を見て、どんなことをしてもらおうかと考え始めてしまう。
しかし急いでその考えを打ち切った。今は服を選ばなければいけない場面だ。
「学生服もあるけど、ボクがこれ着てもコスプレにはならないよね」
「まあ君は現役……現役?高校生だしな」
高校に通っていない今を現役と言っていいのかは分からないが、ともかく必要だろう。俺はさっと制服を回収した。
「…………先生ってもしかして、学生服も好きなの?」
「まあ、そうだな」
「世界がこうなる前から、高校生とか好きだった?」
「待て、エマ、待ってくれ、違うんだ」
可愛い恋人から向けられるいぶかしげな視線。その誤解を解こうと、俺は必死に言葉をつのらせた。
「学生服のコスプレが好きだからってそれはAVとかの作品の中だけで合って、現実の未成年に手を出す気なんかないんだ。いや、手を出しちゃっている現状で何言ってるんだと思うだろうけど本当にそうなんだ。俺が君を好きなのも年齢とか特に関係なく純粋に君に好意を抱いているからであってそこに俺の趣味とかは――」
「じゃあ制服いらないね」
「それとこれとは話が別じゃん?」
俺の返答を聞いて、エマがジト目で見つめてくる。背中に冷や汗が流れるものの、ここでその言葉を撤回するわけにはいかなかった。
彼女は数秒俺のことを見つめた後、狼狽える姿を見て満足したのかクスリと笑って表情をもどす。
「もう、先生はしょうがないな。ちゃんと着てあげるね」
そう言って楽しげに次の棚へと向かって行った。彼女に自信を持たせるという目的は達せているものの、何か俺の尊厳が傷ついた気がする。
いや、しかしそれでも、引けない場面だったのだ。
次の棚はメイド服が置いてあった。クラシカルなメイド服からスカート丈の短いもの、黒いのやピンクの等、様々なものが並んでいたのだろう――本来は。
「棚がひっくり返っちゃってるね」
「あの日に、ここで化物になった人が暴れたんだろうな」
いくつかあったはずのメイド服は棚の下に潰れていて、さらには赤黒い血痕が付いてしまっている。ビニールに守られているから問題ないとは思うが、これをエマに着せる気にはならない。
諦めるしかないか、とそう思ったとき、遠くの床に一着状態のいいものが置いてあるのを見つけた。棚から弾かれて、血痕が付かなかったのだろう。
それに気づいたエマが手に取って、袋の裏表を眺めまわす。
「これは綺麗だね。綺麗だけど……ボクよりも少しサイズが小さいかな」
「着れさえすればいいけれど、ダメだったら別の店回るしかないね」
「……別のお店を探してでも、ボクにメイド服を着て欲しいの?」
「うん」
その問いに即答すると、再びエマに、しょうがないなという嬉し気な笑みを向けられる。コスプレをするというならメイド服は必須である。決して外せない。
彼女はメイド服を持ったままあたりをきょろきょろと見回していた。店の端に置いてある試着室に目を付けると、そちらに向かって歩き出す。
「試しにあそこで着替えてみるよ。もしダメだったら次のお店行こう?」
「そうだね。そうしようか」
そんな会話を交わした後、カーテンで隠された空間の中で、エマが着替え終わるのを待つ。
試着室には張り紙がしてあり、『プレイ禁止!盛るな!』との注意書きがされていた。おそらく恋人同士でここにきて、おっぱじめる人たちがいたのだろう。
カーテン越しに聞こえる衣擦れの音。それに彼女の裸身を思い出しそうになりながらも、その妄想を必死で追い出す。期待で大きくなり始めたモノに、まだ早いと言い聞かせて何とか静めようとしていた。
「先生、着れたよ!」
その言葉と共に試着室のカーテンが開く。そこにはメイド服を着たエマが立っていた。
黒を基調として入るものの、デザインはリアル寄りの物ではなくプレイのものだった。メイドとしてはありえないくらいに首から胸元まで肌が覗いていて、ほんの少し谷の始まりが見えている。腕を覆う袖は二の腕までしかなく、彼女の細い腕が惜しげもなくさらされていた。
そして問題なのはスカートだ。おそらくもともとミニスカートだったのだろうが、サイズが合わないためにさらに際どいところまでしか丈がない。何か大きい動きをしてスカートが揺れたら、それだけで見えてしまうんじゃないかと思った。
「どうかな。似合う?」
「あ、ああ。似合うよ。可愛い可愛い」
危うい部分に視線をやりながら、生返事を返してしまう。俺のその反応に満足したのか、嬉しそうに笑いながら俺の方へと歩み寄ってくる。
そしてあの魅力的な、輝くような笑みを浮かべて、言った。
「ご主人様。ご奉仕いたしますか?なんてね!」
(あ、まずい………)
そう思った瞬間、下半身が急速に大きくなっていく。俺の表情を見て察したのだろう。エマが視線を下へとむけて、それに気づいた。
「先生……その……大きくなっちゃった?」
「すまん……だ、大丈夫だ。こんな昼間からするわけに――」
「え、えと、だったらさ、その……」
俺の言葉に覆いかぶせるように言葉を放ち、エマが自分のスカートを摘む。距離が近くなったせいで俺からは下着は見えないが、その太ももだけは目に入る。
そんな程度に少しだけスカートを持ち上げて、言った。
「赤ちゃん……作る……?」
「…………」
(サキュラバ………エロ……ッ!!)