「バニーガールって、何をする仕事なのかな」
日も落ちて夕飯も終えた時間帯、二人でのんびりしていた時に唐突に質問された。今晩はどんな服を着るか、そんなことを考えていたのかもしれない。
「言われてみると、コスプレじゃない本職のバニーガールって何をする職業なんだろうな」
「ゲームとかだとよく見るけど、実際に見たことないよね」
「そうだね。うーんっと……カジノ、か……?」
あのドラゴンなRPG。全国で有名なゲームでも、バニーガールが出てくるのはカジノだった気がする。
しかしなぜカジノでバニースーツを着せるのだろう。煽情的な衣類で興奮させて、客の冷静な判断力を奪う目的とかだろうか。
「カジノか……先生は行ったことある?」
「全くないなあ。賭け事なんて宝くじくらいだよ。パチンコや競馬もやったことないね」
何せ俺は小学校の教師だったのだ。それが法律に違反してなくてもクレームを付けられたら面倒なことになるのが目に見えている。
「それこそゲームでだったらやったことあるけどね。スロットとか、ポーカーとか。エマは?」
「ポーカーだったらやったことあるよ!テキサスホールデムっていうの!」
「知らない言葉だ……もしかして、結構手慣れてる?」
「手慣れてるって程じゃないよ。ちょっと遊んでみたことがあるだけで」
正直、エマから賭け事に関する用語が出てくるとは思わなかった。中学に行って悪い友達とかできてなかっただろうか……いや、俺の考えすぎで普通に遊んでいただけだろうが。
「あとはお酒かな。バニーガールっていうと男の人にお酒飲ませてる印象あるよ」
「キャバクラみたいにか?あれもコスプレじゃ……いや、しかし本職でもあるのか……?」
とはいえ、確かにバニーガールはお酒を持ち運んでるイメージがある。これもまた、カジノでそういう仕事をしているからだろうか。
まあ、実際に見たことがあるわけでもなく創作の中の知識だけだから、どこまで行ってもイメージでしかないのだが。
「そういえば、先生ってお酒飲まないの?飲んでるの見たことないよ」
「以前はそこそこ飲んでたよ。でもこの世界でやらなきゃいけないことは沢山あるし、油断もできないからね。利尿作用で貴重な水を無駄にするのも……あ、でも昔は薄い酒が水の代わりの飲用水として使われることもあったんだし……そういえばワインビネガーって……」
「先生。今はそう言う話をしてるんじゃないよ?」
エマに服の袖を引かれて、不満げな眼を向けられてしまう。家庭で仕事の話ばかりして疎まれる男って、こんな気分なんだろうか。
「じゃあさ、せっかくだから少しくらいお酒を飲んでみるのはどう?日々の生活も、そこまで切羽詰まってるわけじゃないし」
「まあ……そうだね。たまにならありかな」
彼女にバニースーツを着てもらったとして一緒にポーカーをしても……それはそれで楽しいだろうがプレイにはならないだろう。
かつてこの世に存在していたであろうバニースーツ愛好者たち。彼らはどんなプレイをしていたのだろうか。今度それがテーマのAVでも買って、参考に見てみた方がいいかもしれない。
それはまあ後にまわすとして、俺たちは調理場の奥にある倉庫へと向かうことにした。ここはもともと旅館であり、個人では消費しきれない酒類が大量に保管されている。
飲む予定は無くとも、かといって地面に流して捨てるのもはばかられたそれは、未開封でさえあればまだまだ飲める状態であった。
■
缶詰や野菜の漬物、それに燻製にしたウサギ肉や魚。それらを酒の肴として、机の上に並べていく。
燻製といっても保存用の本格的なものではなく、家庭で使えるキットを使った風味付けのための代物だ。仕組みや作り方を知りたくて回収したそれが、さっそく役に立ったことになる。
ガラスのコップにブランデーを注いで手のひらで温める。度数が高く保存性の高いそれは、作り手が死んだ後も高級感のある香りを変わらず内に秘めていた。
口に含んで、舌の上で転がし、飲み込む。蒸留酒らしくアルコールがかなり強い。喉が熱く焼けるように感じられて、この感覚が俺は好きだった。
燻製もなかなかうまくできている。この世界においては最上の贅沢だと、そんなことを感じながら
空になったコップに再びブランデーを注いだ。久しぶりの酒精はかつてよりもおいしく感じられて、飲み、食べる手が止まらない。
共用スペースのソファに座り久しぶりのお酒を楽しんでいると、着替え終わったエマが部屋へと戻ってきた。
「着てきたよ……って、もう飲んでるの?」
「せっかく燻製を作ったからね。出来立ての方がおいしいかなと思って」
バニースーツ姿のエマを眺める。奇をてらっていないごく普通のデザインのそれは、当たり前のように胸元が大きく空いている。胸の谷間どころか膨らみの上の部分と側面部は既に見えていて、乳首とそこから下のみが、三角形の黒い布で隠されていた。
彼女の足は黒いタイツでおおわれていて、薄い布越しに透けて見える肌が太ももを越えて股の付け根までうっすらと覗いている。透けずに彼女の体を隠されている部分ですら、ぴっちりと彼女の体を覆っていてどんな形をしているのかを俺に対して伝えていた。
改めて思うが、凄くエッチな服装である。
「すごくエッチな服装だよね、それ」
「え、えぇ!?」
思っていたことがつい口から出てしまう。普段しないような直接的な言い方をしたからだろうか、エマが驚きの声を上げていた。
本音が漏れたのはうっかりだが、まあ別にいいか。
「エッチだよ、うん。自分で着てみてそう思わなかった?」
「それは……その……そう思ったけど……」
「だよね。ほら、こっち来て座って?」
誘いをかけるとエマが俺の座るソファに座って、その体を寄せてくれる。上から彼女のことを見下ろすと、胸のふくらみの内、布で隠されていない部分ばかりが視界の中に入ってきた。
男の視線が、完全に計算しつくされた服装である。
「えっと、何すればいいんだろう。お酌すればいいのかな。お注ぎしますか……?その、お客さん?」
「……その格好でお客さんて言われると、完全にいかがわしいお店だな」
「い、いかがわしいって、そんなセリフじゃないと思うけど……!」
「今からいかがわしいことしようとしてるのに?」
「うぅ……先生、もしかしてもう酔ってる?」
「そうだね。酔ってると思うよ」
エマが注いでくれたブランデーを持ち上げて、飲む。女子高生にバニースーツを着せてお酌をさせるという、悪いことをしているというのになんだかそのことがとても楽しい。
いや、でもこれは仕方ないことじゃないだろうか。普段は理性で我慢してるだけで男ならだれでも……いや、そもそも人間は悪いことを楽しいと感じる部分があるし。
アルコールのせいでまとまらない思考を遊ばせていると、エマが興味深げにグラスをのぞき込んできた。
「お酒ってそんなにおいしいのかな……ボクも飲んでみていい?」
「それはダメかな。20歳になってないからね」
「でももう、法律も意味なんてないんだし……」
「法律の問題じゃなくて、健康の問題でやめといた方がいいよ。それにほら……いつ妊娠するのかも分からないし」
「そ、そっか。大きくなってないだけで、もう出来てるかもしれないんだもんね」
そう言って自身の下腹部に手を置く。その下にある子宮の存在を意識したのだろう。俺が何度も精液を注いだそこにいつの日か子供ができて、この小柄な少女のお腹が大きくなる。
きっと今、エマ自身もそんなことを想像しているのだ。その事実を思うだけで、なんだか、こう―――
「エッチだよね、本当」
「ま、また!?先……お客さん、凄く酔ってるよね!?」
「お酒飲んでるからね。でもバニースーツからお酒を提案したのはエマの方だし、うん。俺は悪くない」
エマの太ももに手を伸ばす。黒いタイツで覆われたそこを撫でまわすと、タイツ特有の滑らかな感触が返ってきた。摩擦で引っかかることの無くするすると手のひらを動かせて、好きに彼女の太ももを堪能することができた。
左手で彼女の肉感を堪能しながら、右手で魚の燻製を食べて、お酒を飲む。脳がアルコールに侵されて、さらに理性がほどけていった。
「いや、その、やっぱり先生が悪いんじゃないかな。こうやって、自分からバニーさんの体にお触りしちゃうんだし……先生が悪い大人なんだよ」
「そんなことないね。もう全部全部君が悪い」
「ボ、ボク……ボクは悪いことなんて……」
「全部エマが可愛すぎるのが悪い」
「そ、そうなの!?」
事実である。俺はエマに手を出してしまったわけだが、誰も咎める人がいない中こんなに可愛い女の子と二人きりで生活して、耐えられる男なんているのだろうか。
しかもその子は俺のことを好きだと言っいて、何をしても怒らないで許してくれるのである。それならもう、エッチするしかないだろう。
誰だってそうする。俺だってそうする。
「いつも笑顔が綺麗だし、近づくといい匂いするし、可愛いし小さいし八重歯だし」
「う……あう……」
エマに対して褒め言葉を並べ立てると、彼女は顔を赤くして視線をそらしてしまった。だが、まだまだこんなものではない。
「髪が短くて一人称がボクだから男の子っぽい印象がつきそうなのだけれど、あまりに可憐過ぎて全然男の子っぽくないよね。むしろ対比による強調で余計に女の子っぽくなってるよね」
「うー……」
恥ずかしさのあまりに黙り込んでしまったエマへ、それでも追撃の言葉を続ける。彼女に、自分の罪深さを分からせてやりたくなった。
「俺のこと頼ってくれるし、ご飯もおいしそうに食べてくれるし、そんなことをされたら好きになるよ。俺が守護らねばらならぬってなるよ」
太ももをなでる手を少しずつその内側へとずらしていく。足の間に侵入しようとすると、エマは何も言わずに少しだけ脚を開いてくれる。
「無防備に俺に近寄ってくるし。なんかスキンシップが多いし。後エッチだし」
「エッチじゃないよ!?」
エマが急にこちらを向いて、抗議の声を上げてきた。でもその主張には無理があると思うんだ。
「自分からバニーガールの仕事って何だろうって聞いてきたのに?いつそんなこと思いついたの?次のコスプレ衣装をウキウキで選んでるとき?」
「う、ウキウキしてなんか……」
「今日着替えてるときも、何されるか期待してたんじゃないか?」
「それは……」
俺の質問に彼女が言葉を募らせる。どうやら本当に期待しながら着替えてきたようだ。
……やはりエマはエッチな女の子である。そう確信する。
「それは……その、逆にそれこそ、先生が悪いよ」
「俺が?」
予想外の反論に疑問を投げかけると、エマは悩みながら言葉をつづけた。
「先生が……ボクが可愛いのが悪いっていうなら、先生が素敵なのも悪いよ。立派で、優しくて、いつもボクのこと守ってくれて……エッチの時にボクを幸せにしちゃうから、だから……そんな先生が、全部悪い……よ……」
その言葉を聞いて、俺は酒のグラスをテーブルへと置いた。