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その朝の目覚めは、あまり爽快なものとは言えなかった。
明るくなってきた陽の光が目元を照らしたことに反応して覚醒するも、体中、特に下半身にはかなり疲れが残っていて、まだまだだるさが抜けきれない。
(昨日、何回したんだっけ……)
動きすぎたせいで過度に疲れた、というのもあるがそれ以上にそもそも睡眠不足だ。最後の方はもはや記憶があいまいで、朦朧とした意識のまま射精をしてそのまま気絶をするように眠りに落ちた気がする。
俺もエマも裸のままでベッドに入っており、俺の衣服は床に脱ぎ捨てられたままだ。それでもお互いの体温のおかげで温かく眠れたようで、風邪を引いたような感じはしない。
ともかく、疲れが残っているからと言ってこのまま寝続けるわけにはいかない。気合を入れて体を起こし、ベッドから出て窓を開ける。早朝の冷たい空気が、俺の眠気を少しだけ払った。
「先生?」
呼びかけに振り返ると独特のにおいが鼻につく。麻痺していた嗅覚が外の空気により戻ったからだろう、部屋中に満ちた互いの体液による性臭が昨日の激しさを思い起こさせる。
エマはベッドから起き上がり、寝起き特有の焦点が合わない目でこちらを見つめていた。淫靡な匂いに満ちた部屋の中、彼女に駆けられた掛布団がずれて、白い裸身が晒される。
「おはようエマ。その……昨日はやりすぎた気がするんだけど、体は大丈夫か?」
「ボクは平気だよ。先生こそ疲れてない?」
「あのくらいなら全然平気だよ」
嘘である。だがカッコ悪いところを見せるわけにはいかないと、全力で男の見栄を張った。
さて、まずは何しよう。お互い体が汚れているし、最初に温泉に入るべきか。そしたらまた川に魚を捕りに行って、いつも通りの日々を始めようと、今日の予定を頭の中で組み立てる。
そんな時だった。
「だったら……先生。【こっち来て】」
「うん?……あ、あぁ……」
エマの呼びかけに導かれるままに、足をベッドの方へと向ける。そして彼女へと近づくと、その意外と強い力のままにお互いの体液で湿った寝所へと引きづりこまれた。
気付けば、俺はベッドの上で仰向けに寝かされていて、その上にエマが馬乗りになっていった。俺の胸板にキスを落として、そのまま連続して他の場所にも口づけをして来る。
まるで自分が口を付けていない場所を残さないとでも言うようなその動きに、彼女の意図を理解する。こんな早朝から、もう一度するつもりだ。
「あ、あの、エマ。俺も仕事があるし……ほら、ちゃんと魚を取ったりしないと」
「そんなの、カップラーメンでいいんじゃないかな。保存食はまだまだ残ってるんだし」
「いや、俺としてはもっと君にちゃんとした食事を、んっ……」
エマの舌先が乳首を舐める。それに言葉を途切れさせながら、何とかエマを押しのけて体を起こそうと試みた。
「動かないで。【ボクに身を任せて】」
その言葉と同時に、体中から力が抜ける。好きな子にそう言われて、逆らうことはできなかった。
俺の体の上をはい回る少女の舌。あちこちを愛撫する手のひらに、ゆっくりと性感が高められていく。
そして彼女の手が俺の下半身にのびてきて、半勃ちの俺のペニスを握った。まだ柔らかそれをマッサージするかのように、優しく揉んで刺激してくる。
「ふふっ。柔らかいね。いつもはこんな感じなんだ」
「あ、ああ。大きくなるのは、準備できた時だけだから」
「なら、ボクが頑張って大きくしてあげるね」
エマはそう言ってゆっくりと俺の性器を揉み始める。俺の上半身に対するキスも止まず、あえて乳首を避けた位置に対して幾度も唇を落としていった。
それはいつもの強い快楽とは違う。優しく、穏やかで、力が抜けていくような心地よさだった。俺の上に乗る少女の奉仕によってそれがもたらされ、怠惰な幸せが俺の体を満たしていく。
幸福に身を任せて、体中から力が抜けてゆく。それはとても心地よいものではあったけれど、心地よ過ぎて問題があった。
今の俺は前日に激しい運動をしたうえで、さらには寝不足の状態である。そして寝起きの状態で、ベッドの上で横になっているのだ。
単純に言って、二度寝してしまいそうだった。
「エマ……その、姿勢を変えさせてほしい。ちょっと起きるから」
「起きるの?どうして?」
「正直だな、寝てしまいそうなんだ。君に奉仕させて寝るとか明らかにダメだろう?」
「そっか、ダメになりそうなんだ」
俺の主張にに対して、エマはクスリと三日月形の笑みを浮かべて、言った。
「なら、寝てもいいよ。ダメになってくれると嬉しい」
「い、いや、ここで寝るのはクズの所業では――」
「ねえ、先生」
エマが俺の胸板に顎を乗せて、俺のことを見上げてくる。右手は性器を掴んだまま、左手で俺の手を掴み、指を絡めるように握ってきた。
「先生はいつもボクのために頑張ってくれてるよね。いつもいつも、ずっと。だから、少しくらいなら【休んでてもいいよ】」
確かに、そうかもしれない。思えばここまでいろいろなことをしてきたのだ。今日一日、一日くらいなら、休んでもいいのかもしれない。
気付けばペニスは完全に大きくなっており、それをエマの手がゆっくりと上下にしごき始めていた。その大きさは興奮を示すものではあるものの、それと同時に俺の全身は休息を求めていて、全身が穏やかな眠気に支配されていく。
興奮と沈静、そんな相反する情動に支配されながら、それが俺にもたらすのは両方『快』の感覚だ。眠気で意識が朦朧としていき、背景である部屋の認識すらあやふやになる中、エマの手から与えられる快楽と彼女の声と顔だけが、俺にとっての全てになる。
「エマ……」
「うん」
ろくに文章を紡ぐこともできないまま、ただ頭に浮かぶその名を呼ぶ。特に意味のない言葉を彼女は受け止めてくれて、優しくキスを落としてくれる。
気付けば、俺が明けた窓からは早朝の爽やかな風が吹いてきた。外からは小鳥たちの鳴き声が聞こえてきて、一日の活動の始まりを急かしてくる。
そんな中俺は、前日の性交の名残が残るベッドの上で、半分眠りながら年下の少女に奉仕をさせていた。
これは堕落の快楽だ。自分のするべきことを投げ捨てて、自分が何をするまでもなく一方的に与えられる幸福に受け身のまま溺れさせられていく。
何かしようと思っても眠気に支配された体は動かず、かろうじて意識をとどめることしかできない。思考がはドロドロに溶けていって、ただ気持ちいいだけで満たされていく。
そうしてエマの手に導かれるままに、射精欲が高めさせられていった。
「あ、出そうなんだね」
もはや彼女からしたら慣れた感覚なのだろうか。俺のペニスの反応だけで状態が分かるようだった。それでエマは手の動きを速めることも、止めることもなくただ穏やかな快楽を送り込み続けてくれる。
「好きな時に出していいよ。我慢して引き延ばしたいなら、そうしてもいいし」
この気持ちいい時間を続けたいかどうか、その選択肢すら俺自身に委ねてくれる。そして俺は耐えることもせず、ただ無気力なままに股間から精液を放出した。
絶頂だというのに激しさの無い、穏やかでダラダラとした悦楽だった。トクリ、トクリとエマの手の中で精液が漏れて彼女の手の平を汚していく。
射精の終わりと共に体中から力が抜ける。絶頂直後特有のだるさが全身を訪れ、抗いがたい眠気が俺のことを襲っていた。
このままでは本当に寝てしまう。ここまでしてもらって勝手に眠るなんて、やはりクズの所業ではないかと思ってどうにか意識を保とうとした。
そんな俺に対して、エマが優しく声をかけてくれる。
「眠かったら、寝ててもいいよ。精液の片づけは全部ボクがやっておくから、心配しないで。だから、【眠って】」
彼女の言葉を聞いた途端に、意識が闇に飲まれていく。完全に眠りに落ちる直前に、かろうじてエマの言葉が聞こえた。
「休んでいいよ。頑張らなくていいよ。それでも、ボクが幸せにしてあげるから。だから眠って、また起きたら、もう一回気持ちよくしてあげるね」
結局この日、ベッドから出ることができたのは午後の3時頃だった。時間のおかしい食事をカップ麺でとったあと、しばらくの間エマと遊び、夜にはまたセックスをする。
それだけで、何か得るものもないままに、今日という一日は終わりを迎えた。