「ちょっと待って」
女性二人だけで、どんどん話が進んでいる状況に、ボクはストップをかけた。
「なに」
「なんですか」
どこも隠そうともしない裸の咲恵と萌が、こちらを振り返って同時に言った。
「いや、話の方向が違う方に進んでるように思えたので」
「どこが?」
「別に、正しい方向に行ってるじゃないですか?」
二人は、ボクの車椅子を明るいテーブル付近に移動させ、ボクの前に並んで立った。
「ボクの気持ちというか、考えが反映されてないというか・・・」
言葉が終わらないうちに、二人の顔がボクに近づいてくる。
「わたしは、瑞樹が好きなの」
「わたしだって、瑞樹さんが一番大切ですから」
「二人のお言葉は、大変うれしいのですが、どちらを選ぶために競争するのは、ちょっとやり過ぎだと思うのですが」
ボクの前にいる二人は、顔を見合わせて小首をかしげた。
「じゃあ、瑞樹が決めてくれるわけ?どちらを選ぶか」
「そうですよ。競争するなって言われても、じゃあ、どうすれば私たちどちらかを選んでくれるのですか」
「それは・・・」
もし、ここでどちらかを選んだら、確実にこの場は荒れることになるだろう。そもそも、この場で選ぶなんてことは出来ないし、何を基準に選んでいいのかさえわからない。
「ボクが、二人のどちらかを選ばないといけないんでしょうか」
ふっと、心の声が漏れてしまったと思った時には、もう遅かった。
「わたしは、わたしだけの瑞樹さんでいてほしいんです。そう思うのは、瑞樹さんを好きだから仕方ないでしょ」
「わたしだって、瑞樹を独り占めにしたいわよ」
かわいい女の子が、裸で愛の告白をしてくれているのは、男のボクとしてはもちろんうれしい。だけどそれが二人同時だと、正直困ってしまう。
「二人の気持ちは、とってもうれしいよ。分けられるモノなら二人に分けてあげたいと思ってるよ」
この言葉に、萌が瞬時に反応する。
「そっかぁ。ふたつに分けるっていう選択肢もあるのかぁ」
「えっ、」
「あんた、瑞樹の上半身と下半身、選べるならどっち取る?」
「上半身と下半身ねぇ」
「わたしは、下半身でいいや。あんたに上半身を上げるから」
「ちょ、ちょっと待ってください。なんで勝手に決めるんですか」
「わたしは、瑞樹のおちんちんが好きだから」
「えーー、そこなんですか」
「だって、大事じゃん」
萌は、自信を持って言い切った。しかし、咲恵は迷った顔をしている。
「ちょっと待ってください。確かに分けられたらとはいいましたが、そういう分けられ方をするとは思ってもみませんでした。分けられたボクは、死んでしまいますよ」
ボクの頭の中では、切り分けられた自分を二人が分け合っている怖い絵を想像していた。
「やってみようか」
萌が、真面目な顔をして咲恵に向かって言った。
「やってみるって?」
たぶん、咲恵もボクと同じように恐ろしいことを思い浮かべていたのだと思う。
「瑞樹を寝かせて、あんたは上半身、わたしは下半身で楽しんでみるんだよ」
「あーなるほど」
変なところで、咲恵は納得してみせる。
「あんた、いつまでここにいられるの?」
「明後日までですけど」
「じゃあ、明日の夜は、楽しむところを交代すればいいじゃん」
「それで、わたしたちは平等になるんですね」
「そうそう」
「いい考えだと思います」
本当に目の前で、どんどん話が決まっていくことにボクは焦っていた。
「ちょっと待ってください。なんでそういうことになるんですか」
そんなこともわからないのって言う顔をして萌が応える。
「どうせ、瑞樹は決められないんだし、いいじゃん。いちばん美味しいのは瑞樹なんだし」
「わたしも、二人で瑞樹さんを楽しむなんて発想はありませんでしたから、ナイスアイデアだと思いますよ」
萌のそういう大胆なところは好きだし、咲恵の少し天然なところも好きだ。しかし、これで問題が解決するとは思えなかった。
「あのぉ」
ボクが口を開こうとすると、萌はキッと睨んで言った。
「せっかく意見がまとまったんだし、瑞樹は文句言わないの。さぁ、みんなでお風呂入ろうか」
「萌さん、お風呂の時、洗う担当場所はどうやって決めます?」
「じゃんけんでしょ!」
そう言うと、ボクの目の前でじゃんけんという戦いが開始された。