いつもより何倍も賑やかなお風呂から上がったのは、ボクと咲恵が先だった。
「ノドが渇いたよね」
「そうですね」
「ビールでも飲む?」
「ええ、いただきますけど。萌さんが上がってきてからにしましょうよ」
「萌だけ残って、なにしてるんだろう」
「わたしに気を使ってくれてるんでしょ」
「へぇ、そうなんだ」
咲恵は、タオルで濡れた髪を拭きながらボクの方に顔を向けて言った。
「萌さんって、思っていたよりずっといい子ですよね」
「そう?」
「はい、真っ直ぐだし。自分の想いに対して素直だし、かわいいです」
「誤解されやすいタイプなのかもしれないよな」
二人で、クスクス笑っていると、萌がリビングのドアから顔を出した。
「いま悪口を言ってたよね?」
「そんなことないですよ」
「そうだよ。咲恵さんなんて、萌がかわいいって褒めてたんだから」
「それはそれは。かわいいところ探すのに、苦労したでしょ」
「素直じゃないんだから。って萌、せめて下着くらい着けろよな」
「いいじゃん、瑞樹は見慣れてるんだし」
と言って、ボクの前に立ち胸を張った。ボクは裸の萌を見てどこか違った感覚を覚えた。
「あっ、瑞樹気がついた?」
「萌さん、何がですか?」
「さすがに瑞樹は見るところが違って、いやらしいんだから」
「えっ、なになに?」
咲恵は、何が変わったのかわからず、萌を舐めるように見回している。萌は、うっすら茂みが出来ていた下腹部の陰毛を処理していた。
「咲恵ちゃん、そんなに見たら恥ずかしいから」
萌は、ツルツルのなった股間を手で隠して、足をクロスして見えにくくした。
「ああ、なるほど」
ようやく気がついた咲恵が、近づいてのぞき込む。
「やっぱり、パンツだけは履くわ」
ソファーの上に置いてあった袋から、今日買って来たであろうタグの付いたピンクのショーツを出した。
「咲恵さんと、おそろいみたいだな」
二人は、ピンクの下着姿で横並びに立って、笑いながらボクに見せびらかせた。
「萌と一緒に飲もうと思って、待ってたんだよ。ツルツルにしてた間」
「もう」
頬を膨らませている萌にコーラを渡して、咲恵とボクはビールを手に持った。
「わたしだけ違うじゃん」
「萌ちゃんは、まだ子供だからね。ツルツルだし」
咲恵は、おもしろがって言った。
「またぁ」
萌は、もう一度頬を膨らませた。
「じゃあ、乾杯」
三人は、風呂上がりの渇いたノドに冷たい潤いを流し込んだ。
「えっとぉ、今夜のこれからの予定を言います」
萌が改まった口調で声を上げた。
「ほんとは三人で、同じベッドで寝るのがフェアなんだけど、それは物理的に無理だから咲恵ちゃんと話して決めました」
萌は、咲恵の顔を見やって言葉を続けた。
「これから、1時間ずつ瑞樹と一緒のベッドで寝ます。何をするかは自分で決めます。エッチするかもしれないし、しないかもしれません。でも、瑞樹からは動いてはいけません。咲恵ちゃんとわたしで自分の気持ちに従って何をするか決めます」
「はぁ」
ボクは、不思議なこの提案に混乱していた。
「ただ、これはわたしの判断ですが、初めは咲恵ちゃんが一緒に寝てください」
「えっ、でも、じゃんけんで決めるって」
「あーそれは、咲恵ちゃんはわたしがエッチした後だと、絶対に嫌だと思って。わたしは無神経だから、そんなこと気にしないし」
「いいの?それで」
「わたしは、その方がいいと思ったの。だから」
「萌ちゃん、わかったわ。ありがとう」
いつの間にか、話は決まってしまい、ボクの出る幕のないまま萌が言った。
「瑞樹、先にベッドに行っておいて。もう遅いから、さっさと動いてね」
ボクは、促されるままベッドに移乗して、寝転がって待った。少しして、パジャマを着た咲恵がベッドに入ってきて、隣に横たわった。
「いらっしゃい」
ボクは、真っ直ぐに天井を見てそう言った。咲恵も横に並んで寝転び、天井を見たまま言った。
「萌ちゃん、ほんとにいい子ですね。かわいい妹が出来たみたいで、好きになっちゃいそうです」
「で、どうするの?ボクからアクションを起こしたらダメなんでしょ」
咲恵は、天井を見つめていた瞳を閉じて、困ったように言った。
「どうしましょう。わたし、何をしていいかわかりません」