萌は満足して、咲恵は観察をして、ボク達は再び眠りについた。あっという間に外は朝の光に溢れて、ボク達はスマホのアラームに起こされて寝不足の目を擦りながらホテルを出た。駅前のファーストフード店で朝食をテイクアウトして、我が家へと帰った。
「咲恵ちゃんは、いつ頃家を出るの」
みんなで、ポテトをつまみながら話していると萌が聞いた。
「お昼前には、出なくちゃいけないかな」
「じゃあ、今言っておくね。わたし、仕事を見つけてなるべく早く、ここを出ていこうと思ってるんだ」
「住むところは、どうするつもりなんだよ」
「そうよ、そんなに焦って出て行かなくてもいいんじゃないの」
萌は、首を横に振って咲恵に言った。
「住み込みの仕事を、探すつもりでいるの。咲恵ちゃんがいないのに、瑞樹と二人でこの家にいるのは不公平な気がするんだよね」
「そこは、気にしなくてもいいのに」
「瑞樹と二人きりでいると、たぶんエッチしたくてガマン出来なくなると思うの。それは、咲恵ちゃんに悪い気がして。瑞樹と全然、会わないって事じゃなくて、咲恵ちゃんが帰ってこれる時にわたしも一緒に帰ってこようかなと思ってるの」
咲恵は、アイスティを一口飲んで言う。
「わかったわ。それが、萌ちゃんのけじめだったら、わたしはそれを尊重したいと思います。瑞樹もそれでいいよね」
一応でも、ボクに意見を聞いてくれたことに感謝して頷いた。
「うん、まあ、それでいいけど」
今度は、姿勢を正して咲恵が言う。
「では、瑞樹さん。わたしと交わした約束は、これからも継続ってことでいいですか?」
ボクの答えの前に、萌が口を挟む。
「約束って、例のアレ?」
「そう、どうせ瑞樹さんは、エッチをガマン出来なくなるだろうから。サイトで女の子を探してもいい。でも同じ人と会うのは1回だけ。そしてわたしに報告をする、って約束。そうだ、萌ちゃんにも報告義務を加えて、三人でグループLINEしましょうよ」
「いいねぇ。どんな女の子と、どんなエッチしたか報告してくれるんでしょ。おもしろそう」
咲恵と萌は、手を取り合ってキャッキャ言っている。
「ボクは信用されてないというか、ガマン出来ない子供の扱いだよな」
「なに言ってるんですか。エッチはしてもいいと言ってるんだし、いいじゃないですか。社会勉強を積んでもらおうと言ってるだけですよ」
「そうだ、そうだ。贅沢言ってるんじゃないよ」
「はいはい。わかりましたよ。約束には従います」
ボクは、ポテトを咥えてままうなだれて言った。
「なるべく帰ってこられるようにしますから」
「どうしても、ガマン出来なくなったら、わたしの魅力的なおっぱいの写メでも送ってあげるからね」
「あーそれ、わたしも参加します。おかず写メ」
二人は楽しそうに、笑い転げていた。しんみりした別れになるよりは、ボク達にとってはいい事なのだろうと思った。
思っていないほどの盛り上がりを見せた別れの時は過ぎて、咲恵は仕事の赴任先に戻っていった。萌は、数日のうちに宿泊施設の従業員の仕事を見つけて、さっさと出て行ってしまった。
前とは違った寂しさが、ボクに襲いかかっていた。再び訪れた一人暮らしにも慣れた頃、放ったらかしにしていた出会い系サイトから、久しぶりにDMが届いた。
『わたし、車椅子なんですけど、エッチがしてみたいんです。お母さんと一緒でもいいですか』